
(35)間違凧文武二道(まちがいだこぶんぶのふたみち)
初回放送日:2025年9月14日
定信(井上祐貴)の政を茶化した『文武二道万石通』。この内容を目にした定信は勘違いをし、逆に改革が勢いづく。蔦重(横浜流星)は予想外な事態に複雑な気持ちになる…。
越中の守、暴走モード
老中越中守となった松平定信は思い込みで暴走を続けます。
黄表紙で自分自身が風刺されているのも、いい方向に思い込みます。
自分の政治が評価されていると暴走しだすのです。
これは思い込みとは怖いものですね。
世直しと言いながら、庶民をギュウギュウに追い込んでいくわけですから、何とも皮肉な結果になりました。
黄表紙とは、この段階ではゴシップ誌のようなものですね。
(諸説あります)
おせいさんの判断が素晴らしい
文武二道とは文武両道と言った所でしょうか?
ですが、この文武とも表面的なことばかりです。
蔦重の妻のおせいさんは江戸市中で見かけた素人を的確に見抜きます。
新しい弓矢を買って喜んでいる青年たちを見て⇒真新しい弓矢
(弓矢だけを買って特に精進しているとも思えない)
論語の冒頭だけを諳んじる⇒まだ一巻の学而
(最初だけを読んで全部知った気持ちでいる)
多くを語らないおせいさんですが、その上っ面だけの中身のない様子を的確にとらえています。
頭のいい人はモノの見方が違いますね。

もちろん、蔦重の慢心も何度も諫めます。
でも、蔦重はこれを聞き入れません。
蔦重の本がバカ売れ
越中の守を揶揄するつもりが、その意図が汲まれない事になりますが、本来の趣旨とは違っても本はバカ売れします。
蔦重はこの時点で調子に乗っちゃったかなあと思います。
高名な戯作者たちが藩の処罰を恐れて筆を置くことを本気で考える中、蔦重は突っ走ります。
歌麿結婚
歌麿は耳の不自由な女性と出会い結婚します。
ここが、今回のほっこりポイントでしたね。
歌麿のエピソードはまるごと創作部分なのですが、この時代背景を如実に描いていることでドラマに落とし込んでいますよね。
・幼少期、親に性的な仕事をさせられる
・大火で親を失う
・大人になっても男女問わず、身売りをする
・出自の分からないものでも、養子縁組をする
等々、色々ありましたが、この時代に少なからずあった事です。
この時に師匠である石燕先生が死去、その跡地に歌麿夫婦が住むということになって、めでたしめでたし…かな?
(このパターンで新之助&おふく夫婦は亡くなっているので、今後は分かりません)
オットセイ将軍
田沼意次が死去で本格的に退場となりました。
この後に、実権を握ったのが老中越中守・松平定信な訳ですが、この時の将軍が11代将軍・徳川家斉です。
この将軍、治世は何と50年。
子だくさんでも有名な人で、生まれた子女は50人以上だそうです。

子だくさんの将軍家斉ですが、それでも成人したのは半数だったそうです。
この人の子供たちの受け入れ先が大変だったのも後の話になりますが、安定政権でもあったということです。
オットセイ将軍と言うのは精力剤として飲んでいた原料がオットセイだったからだと言われています。
そんな将軍にふさわしく、正室の間に子供が生まれる前に、側室に子供を作ったというエピソードが大河でも織り込まれます。
また、その父である一橋治済はこの将軍が生まれた時には「ほら、子は成したぞ!」(子供は作ったぞと言う意味)と、得意げに言っていたのがこの大河の序盤でもありました。
つまり、徳川家にとって大事なのは「血を絶やさないこと」でもあったのです。
とことん、黒幕として笑顔のイケメンを続ける生田斗真君ですが、これがまた本質をついていたわけですね。
凧の糸が切れる
風刺の利いた黄表紙本の発行が続きます。
行き過ぎた風刺に慎重な蔦重の妻であるおせいさんはストップをかけようとしますが、蔦重は突っ切ります。
おせいさんは「からかい、不遜である」と注意します。
とにかく、自分は嫌だということをはっきり言うのです。
黄表紙は大評判になることを見込んで刊行に踏み切る蔦重でしたが、黄表紙の評判で上がった凧の糸が切れるということでこの回は終わります。

凧の糸が切れる。
暗雲立ち込める。
次回の予告では蔦重がお役人に囲まれる???
いよいよ蔦重のピンチが来たのかもしれません。
各話リスト

今までのお話の感想を書いています。
たまに蘊蓄も追加しています。
よろしかったらどうぞ。
第1話「ありがた山の寒がらす」
第2話「吉原細見『嗚呼(ああ)御江戸」
第3話「千客万来『一目千本』」
第4話「『雛形若菜』の甘い罠」
第5話「蔦(つた)に唐丸因果の蔓(つる)」
第6話「鱗(うろこ)剥がれた『節用集』」
第7話「好機到来『籬(まがき)の花』」
第8話「逆襲の『金々先生』」
第9話「玉菊燈籠恋の地獄」
第10話「『青楼美人』の見る夢は」
第11話「富本、仁義の馬面」
第12話「俄(にわか)なる『明月余情』」
第13話「お江戸揺るがす座頭金」
第14話「蔦重瀬川夫婦道中」
第15話「死を呼ぶ手袋」
第16話「さらば源内、見立は蓬莱(ほうらい)」
第17話~乱れ咲き往来の桜
第18話「歌麿よ、見徳(みるがとく)は一炊夢(いっすいのゆめ)」
第19話「鱗(うろこ)の置き土産」
第20話「寝惚(ぼ)けて候」
第21話「蝦夷桜上野屁音(えぞのさくらうえののへおと)」
第22話「小生、酒上不埒(さけのうえのふらち)にて」
第23話「我こそは江戸一利者(えどいちのききもの)なり」
第24話・げにつれなきは日本橋
第25話・灰の雨降る日本橋
第26話・三人の女
第27話・願わくば花の下にて春死なん
第28話・佐野世直大明神
第29話・江戸生蔦屋仇討(えどうまれつたやのあだうち)
第30話・人まね歌麿
第31話・我が名は天
第32話・新之助の義
第33話・打壊演太女功徳(うちこわしえんためのくどく)
第34話・ありがた山とかたじけ茄子(なすび)
関連書籍一覧

ドンドン追記していきます。
私も精読中。
また、感想の方も上げて行きますのでお楽しみに!