
残りは最終回だけだというこの土壇場で、まさかの一橋治済のそっくりさんが現れ、その人を替え玉にするという作戦が冒頭で明らかにされます。
その、そっくりさんは斎藤十郎兵衛と言うのです。
この人、実在の人物です。
(47)饅頭(まんじゅう)こわい
治済(生田斗真)の毒まんじゅうで定信(井上祐貴)たちは窮地に陥る。だが蔦重(横浜流星)の驚きの策により、将軍家斉(城桧吏)を巻き込んだ仇討ち計画が再び動き出す…
斎藤十郎兵衛という実在人物
阿波徳島藩主蜂須賀家お抱えの能役者です。
この時期に活躍した人なのになかなか出てこなかったのは、この為だったのですね。
阿波徳島藩というのは今の四国の徳島あたりですね。
能学者であった事は確かなのですが、彼にはもう一つ「写楽本人だったのでは?」という説があるのです。
ですが、今回の大河ドラマでは「写楽は一人ではなく、複数人による写楽プロジェクト」であるという説が採用されたので、斎藤十郎兵衛の出番はないような感じだったのです。
ですが、ここに来て、まさかの一橋治済に瓜二つの他人で、それを承知で入れ替えるという大作戦が決行されるわけです。
松平定信と栗山先生、伏線の回収
越中守・松平定信、長谷川平蔵や栗山先生も巻き込んでの話です。
栗山先生は斎藤十郎兵衛と同郷なので面識があったのですね。
そこで、上様の父である一橋治済に会った時にビックリ仰天していたわけですね。
冷静沈着な栗山先生が一橋治済に会って驚いていたのはその伏線だったのです。
史実ではないが面白い大河オリジナル

もちろん、この辺は大河オリジナルのお話です。
一橋治済と斎藤十郎兵衛が瓜二つだった事実はありませんし、取り替えたなんて話も史実には出てきません。
(あったら大問題です)
ですが、この辺はスルーしましょう。
面白いので(笑)
上様が替え玉作戦に参加する理由
一橋治済は自分の息子である上様にも何となく煙たがられ始めています。
上様としても、実の父を手にかけるわけにいかず、「取り替え」ならということでこの大作戦に参加します。
乳母・大崎の命を懸けた手紙
そして、上様をそう決心させたのが自分の乳母の大崎の手紙だったのです。
大崎は自分の手紙を蔦重に託していました。
前回に一橋治済の付き添いとして買い求めた本の代金を払う時に「釣り銭はいらぬので」と紙に包んだお金を蔦重に差し出しました。
渡すときになかなか手を離さなかった大崎。
この紙に上様宛のお手紙が入っていたのですね。
気づかれないように託された真実
私は大崎が蔦重に顔を覚えてもらいたいと思ってなかなか手を離さないのだと思っていましたが、違いましたね。
上様のお手紙をどうにか届けてほしいという一心だったのでしょう。
この時点で大崎は松平定信側に抱き込まれていますが、彼女の覚悟も相当なものだったのでしょう。
自分は一橋治済に殺される。
今まで自分がしてきたことを考えれば当然のこと。
でも、この事実を上様に知らせたい。
その一心で、小さな手紙にぎっしりと今までのことを書き記していたのです。
上様が信じた理由
この手紙は奇跡的に上様の手に渡ります。
かと言って、これが大崎が本当に書いたものかどうかは証明できません。
信じたのは上様自身でした。
自分の乳母でもあった大崎の字は上様自身がよく知っていたからです。
清水家でのお茶と不穏な空気
上様と一橋治済は御三卿の一つである清水家に行きます。
「清水家の跡継ぎの相談」だったので上様が赴いたという形です。
ここでお茶室でのおもてなしです。
お茶の作法として「貴人点て」(きじんだて)で振る舞われます。
これはお茶の中でもとても偉い人に点てるお茶のことです。
ドラマ内でも台座のようなものにお茶碗を置くという珍しいタイプです。

ほとんどの人が貴人の方にお茶を点てるということはないかと思うのですが、私も茶道のお稽古をしていたくらいです。
実は頂くときは台座ごとではなくてお茶碗だけを手に取って頂くのですが、大河では台座ごとで頂いていましたね。
流派によって違うのでしょうか?
ちょっと注目ポイントでした。
毒味役にされる上様
ここで一橋治済は毒でも盛られることを懸念してか、上様に毒味役をさせます。
お菓子も上様に先に食べさせて、お茶も上様が先です。
上様が何ともないので自分もお茶を飲むのですが、ここで上様が倒れます。
一橋治済、ついに確保される
まさか、上様ともろとも自分もやられると思っていなかった一橋治済は狼狽しながら倒れます。
ここで、「確保!」されましたね。
そのまま、閉じ込められて遠島になってしまいます。
殺さずに果たされた復讐
箱に入れ込んで鍵をかけたのは松平定信。
ここで、憎き一橋治済を手にかけることなく、瓜二つの斎藤十郎兵衛とすり替えるということで復讐を果たしたわけです。
松平定信の退場
一通りのことが終わって松平定信は江戸から白河藩に帰ります。
自分自身も幕府の中枢からは身を引いたわけです。
黄表紙オタクとしての最後の姿
最後に蔦重のお店を訪れます。
黄表紙ファンだった松平定信は蔦重の本を子供のようなキラキラした目で手に取り始めます。
一通り手にした後で、「1000両も払わされた」ことや「一度来てみたかった」ことを告げます。
江戸時代のオタクだったわけですね。
何度となく衝突してきた蔦重と松平定信でしたが、最後はオタク心で終わりました。
一橋治済という人物への皮肉

あと、もう一つ、散々悪役として描かれた一橋治済でしたが、本当の彼は政治にここまで執着したというわけではなく、迷惑なくらい贅沢三昧した人というだけでした。
解説にも自宅に能楽堂があったことも紹介されました。
ここで、能役者とすり替えられるというのは最高にシニカルな脚本だったと思います。
おまけ~アンケート結果
放送後のアンケートにお答えいただきありがとうございました。
1位:一橋治済、替え玉作戦に、はまった!
2位:一橋治済、島流しになっていた!
3位一橋治済、本当は贅沢三昧しただけだった!
各話リスト

今までのお話の感想を書いています。
たまに蘊蓄も追加しています。
よろしかったらどうぞ。
第1話「ありがた山の寒がらす」
第2話「吉原細見『嗚呼(ああ)御江戸」
第3話「千客万来『一目千本』」
第4話「『雛形若菜』の甘い罠」
第5話「蔦(つた)に唐丸因果の蔓(つる)」
第6話「鱗(うろこ)剥がれた『節用集』」
第7話「好機到来『籬(まがき)の花』」
第8話「逆襲の『金々先生』」
第9話「玉菊燈籠恋の地獄」
第10話「『青楼美人』の見る夢は」
第11話「富本、仁義の馬面」
第12話「俄(にわか)なる『明月余情』」
第13話「お江戸揺るがす座頭金」
第14話「蔦重瀬川夫婦道中」
第15話「死を呼ぶ手袋」
第16話「さらば源内、見立は蓬莱(ほうらい)」
第17話~乱れ咲き往来の桜
第18話「歌麿よ、見徳(みるがとく)は一炊夢(いっすいのゆめ)」
第19話「鱗(うろこ)の置き土産」
第20話「寝惚(ぼ)けて候」
第21話「蝦夷桜上野屁音(えぞのさくらうえののへおと)」
第22話「小生、酒上不埒(さけのうえのふらち)にて」
第23話「我こそは江戸一利者(えどいちのききもの)なり」
第24話・げにつれなきは日本橋
第25話・灰の雨降る日本橋
第26話・三人の女
第27話・願わくば花の下にて春死なん
第28話・佐野世直大明神
第29話・江戸生蔦屋仇討(えどうまれつたやのあだうち)
第30話・人まね歌麿
第31話・我が名は天
第32話・新之助の義
第33話・打壊演太女功徳(うちこわしえんためのくどく)
第34話・ありがた山とかたじけ茄子(なすび)
第35話・間違凧文武二道(まちがいだこぶんぶのふたみち)
第36話・鸚鵡(おうむ)のけりは鴨(かも)
第37話・地獄に京伝
第38話・地本問屋仲間事之始
第39話・白河の清きに住みかね身上半減(しんしょうはんげん)
第40話・尽きせぬは欲の泉
第41話・歌麿筆美人大首絵
第42話・招かれざる客
第43話・裏切りの恋歌
第44話・空飛ぶ源内
第45話・その名は写楽
第46話・曽我祭の変
第47話・饅頭こわい
関連書籍一覧

ドンドン追記していきます。
私も精読中。
また、感想の方も上げて行きますのでお楽しみに!

