
(34)ありがた山とかたじけ茄子(なすび)
初回放送日:2025年9月7日
老中首座に就いた定信(井上祐貴)は厳しい統制を始める。処罰の危機にあった南畝(桐谷健太)は、絶筆を宣言。蔦重(横浜流星)はある決意で意次(渡辺謙)の屋敷を訪れる
『べらぼう ~蔦重栄華乃夢噺~』感想
今回の放送では、蔦重が受け取った金子がたくさんの小判だったシーンから物語が動き出しました。
そして、このタイミングで老中に就任したのが、田安家から養子に出された松平定信。
子供時代は寺田心くんが演じていましたが、成長してからは別の役者さんにバトンタッチされていましたね。

小判は20枚ほどあったかな?
キチンと封がされて風呂敷に包まれていたのが蔦重の格が上がったなと思いました。
以前は小判一枚を放り投げられていたみたいなイメージでしたが(笑)
老中二人の対比
田沼意次も松平定信も、政治家としての能力は高かったと思います。
けれども、この時代は「家柄」がすべて。
結局は出自の違いによって、勧善懲悪の構図が決まってしまったように感じました。
倹約を推し進めるのは一見正しいようでいて、庶民にとっては「善意の搾取」にも見えます。
しかも最初に削られるのは教育などの未来に必要な部分。
贅沢や浪費を正すのは大切ですが、エンタメや文化までもが切り捨てられると、社会全体が一気に沈んでしまう…。
今の時代にもどこか重なる部分がありますね。

結局は、家柄か…。
声優陣の豪華さと演出
今回も声優さんたちが勢ぞろい。
田沼さまが「選挙制度」のアイディアを披露する場面には驚きました。
まるで現代を風刺しているような演出で、思わずクスッとさせられました。
一方で、松平定信がゴシップを巧みに操り、自らの地位を高めていく姿も描かれました。
ネガティブニュースを利用して炎上させる――これは現代のSNS社会にも通じる怖さがありますね。

世間のゴシップを集める松平定信。
何処までもマジメなのでこういうリサーチも徹底的ですね。
少年時代はマジメな少年という感じでしたが、青年になって嫌味な感じになっちゃったかなあ。
贅沢の罪とその代償
土山さまのエピソードでは、誰袖花魁の身請け先の人物がまさかの斬首。
贅沢を罪として裁く、その厳しさには背筋が寒くなりました。単なる「質素倹約」ではなく、見せしめのように人の命まで奪う…これは正義というよりも、支配のための統制に近いものを感じます。
切腹でなくて、斬首という所に罪の重さを感じます。見せしめとは言っても酷すぎるのでは?
田沼意次の光と影
今回改めて印象的だったのは、田沼意次の描かれ方。
光と影の両面を持ち合わせた人物でありながら、大河ではその全貌をとても丁寧に描いていました。
創作の部分もありましたが、革新的で数々の改革を進めた人物としての姿がしっかり伝わり、ただの悪役にされなかったことが嬉しかったです。
…とは言え、田沼さま退場って事になったかな?

現代と重なるテーマも多く、歴史ドラマとしてだけでなく、今を考えるきっかけにもなる回でした。
各話リスト

今までのお話の感想を書いています。
たまに蘊蓄も追加しています。
よろしかったらどうぞ。
第1話「ありがた山の寒がらす」
第2話「吉原細見『嗚呼(ああ)御江戸」
第3話「千客万来『一目千本』」
第4話「『雛形若菜』の甘い罠」
第5話「蔦(つた)に唐丸因果の蔓(つる)」
第6話「鱗(うろこ)剥がれた『節用集』」
第7話「好機到来『籬(まがき)の花』」
第8話「逆襲の『金々先生』」
第9話「玉菊燈籠恋の地獄」
第10話「『青楼美人』の見る夢は」
第11話「富本、仁義の馬面」
第12話「俄(にわか)なる『明月余情』」
第13話「お江戸揺るがす座頭金」
第14話「蔦重瀬川夫婦道中」
第15話「死を呼ぶ手袋」
第16話「さらば源内、見立は蓬莱(ほうらい)」
第17話~乱れ咲き往来の桜
第18話「歌麿よ、見徳(みるがとく)は一炊夢(いっすいのゆめ)」
第19話「鱗(うろこ)の置き土産」
第20話「寝惚(ぼ)けて候」
第21話「蝦夷桜上野屁音(えぞのさくらうえののへおと)」
第22話「小生、酒上不埒(さけのうえのふらち)にて」
第23話「我こそは江戸一利者(えどいちのききもの)なり」
第24話・げにつれなきは日本橋
第25話・灰の雨降る日本橋
第26話・三人の女
第27話・願わくば花の下にて春死なん
第28話・佐野世直大明神
第29話・江戸生蔦屋仇討(えどうまれつたやのあだうち)
第30話・人まね歌麿
第31話・我が名は天
第32話・新之助の義
第33話・打壊演太女功徳(うちこわしえんためのくどく)
第34話・ありがた山とかたじけ茄子(なすび)
関連書籍一覧

ドンドン追記していきます。
私も精読中。
また、感想の方も上げて行きますのでお楽しみに!