
歌麿の妻、おきよさんが病気に?
今回も貧困のすさまじさを見せられることになりました(涙)
べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~(38)地本問屋仲間事之始
初回放送日10月5日
蔦重(横浜流星)は、歌麿(染谷将太)のもとを訪ねると、体調を崩し、寝込むきよ(藤間爽子)の姿があった…。そんな中、蔦重は鶴屋(風間俊介)のはからいで、口論の末、けんか別れした政演(京伝)(古川雄大)と再び会うが…。一方、定信(井上祐貴)は平蔵(中村隼人)を呼び、昇進をちらつかせ、人足寄場を作るよう命じる。さらに定信は、改革の手を緩めず、学問や思想に厳しい目を向け、出版統制を行う。
悲劇のきよと歌麿の愛
歌麿と結ばれた耳の聞こえない「きよ」さん。
いきなり、病に倒れ、余命幾ばくもない様子。
「そう毒」とは今の梅毒のことです。
きよさんも食べられないときは体を売って凌いでいた時期もあったようなので、この病気にかかってしまったのです。
今となっては梅毒は治療可能な病気となりましたが、それでも検査を受けて投薬をしないと同じことになってしまいます。
解説にもありましたが、梅毒は症状が緩やかになり、治ったように見える時期もあるので希望を持ってしまう人もいたのですが、やはり当時は打つ手がなく、死病と言ってよかったのだと思います。
死にゆくきよさんの絵を描いていく歌麿。
それはどれも美しいきよさんで、病床に伏しているような絵は一枚もありません。
歌麿の必死のエールだと思うと泣けてきます。
病床に伏せるきよさんの傍らで、元気なきよさんの幻影に声を掛けられる歌麿。
もう、この時点で「良くなってほしい」という願望が妄想まで引き起こしてしまう状態でした。
とうとう、きよさんの息が絶えてもその現実を受け入れられない歌麿は、弔いもせずに彼女の絵を描き続けます。
ここにやってきた蔦重とその従者たちは、思わず鼻をつまみます。
恐らく死臭が漂ってきたということなのでしょう。
歌麿は髷の月代も剃らずにいた為、彼女が死んでから数日そのままだったことが垣間見られます。
きよさんから離れたくない歌麿は蔦重に押さえつけられてしまいます。
その間に従者たちがきよさんの遺体を片付けてしまいます。
絶望的に涙する歌麿。
これも、貧困からくる売春が絶望的な結果になったということです。
繰り返しますが、梅毒は現代において根治可能な病気です。
日本では保険適用されていますので、高額な治療になることもありません。
感染経路を考えると褒められたことではないのは重々承知していますが、その可能性がある方は医療機関にご相談ください。
出版規制と蔦重の知恵
倹約令で執筆者はいないまま、出版業界にはさらなる規制が掛かります。
「出版規制」というものだそうですが、新刊を出すときは「許可」を要するようになるのです。
それならば、大量に書いて大量に申請しようというのが蔦重たちの案です。
これは面白いですね。
許可を出す側は奉行所です。
そんなに大量に持ち込まれたら、根をあげるのは奉行所であり、幕府側だったのです。
これはナイスアイディアでしたね。
ダメならば、権利が発生するところでとことんやろうというのです。
長谷川平蔵、騙されていた?
ここで長谷川平蔵が吉原で接待されてしまいます。
この接待が「賄賂」となっては困るし、受け取る気持ちもない長谷川平蔵。
彼はものすごく真っ直ぐで正直な人間です。
かつて「花の井」という花魁に入銀でお金がいるからと「50両」渡したのですが、それは入銀に使われず、吉原の中でも貧困で食べていけない女郎たちのために「花の井」という花魁が寄付したのでした。
これを、蔦重たちは「騙したお金をお返しします」という形で50両+利子を長谷川平蔵に渡します。
賄賂は受け取らないという姿勢をかたくなに貫きたかった平蔵ですが、かつての50両で救われた女郎がいたことや、吉原の接待に気を良くし、蔦重たちの味方になります。
「花の井」という花魁は、のちに瀬川となった花魁です。
大河ドラマの中では蔦重の幼なじみでしたが、結ばれました。
ですが、瀬川は吉原を去ってしまいます。
さて、この50両と利子で人足寄場の資金の足しにしようというのです。
実は長谷川平蔵は、この誰も引き受けたがらない人足寄場を作る事業を越中守の松平定信に押し付けられているわけです。
こんな嫌な役割を引き受けざるを得なかったのです。
人足寄場は今の刑務所のさきがけです
これで蔦重に借りができてしまった長谷川平蔵は、蔦重のために越中守の前で一芝居打ちます。
黄表紙なんかは上方に任せておけばいいと越中守に言うのです。
この話を聞いて江戸の沽券に関わると思ったのは越中守の方です。

上方よりも江戸が下に見られるというのは許せないということなのです。
これで、江戸市中の本屋さんの出版規制は解かれるのでしょうか。
次回に続きます。
おまけ、アンケート結果
放送後のアンケートにご協力いただきありがとうございました。
1位:長谷川平蔵、騙されていた!
2位:町の本屋が協力関係へ!
3位(同率):きよさん、天国へ
4位(同率):長谷川平蔵、今の刑務所を作った
歌麿の妻、きよさんの治らない病気から絶望的な始まりになりましたが、長谷川平蔵の生真面目さに救われた回でもありました。
50両も騙されて金蔵を空っぽにされたと分かっても、それが人助けになったと知るとチャラにして更に蔦重達を助けてしまうお人好しでした。
各話リスト

今までのお話の感想を書いています。
たまに蘊蓄も追加しています。
よろしかったらどうぞ。
第1話「ありがた山の寒がらす」
第2話「吉原細見『嗚呼(ああ)御江戸」
第3話「千客万来『一目千本』」
第4話「『雛形若菜』の甘い罠」
第5話「蔦(つた)に唐丸因果の蔓(つる)」
第6話「鱗(うろこ)剥がれた『節用集』」
第7話「好機到来『籬(まがき)の花』」
第8話「逆襲の『金々先生』」
第9話「玉菊燈籠恋の地獄」
第10話「『青楼美人』の見る夢は」
第11話「富本、仁義の馬面」
第12話「俄(にわか)なる『明月余情』」
第13話「お江戸揺るがす座頭金」
第14話「蔦重瀬川夫婦道中」
第15話「死を呼ぶ手袋」
第16話「さらば源内、見立は蓬莱(ほうらい)」
第17話~乱れ咲き往来の桜
第18話「歌麿よ、見徳(みるがとく)は一炊夢(いっすいのゆめ)」
第19話「鱗(うろこ)の置き土産」
第20話「寝惚(ぼ)けて候」
第21話「蝦夷桜上野屁音(えぞのさくらうえののへおと)」
第22話「小生、酒上不埒(さけのうえのふらち)にて」
第23話「我こそは江戸一利者(えどいちのききもの)なり」
第24話・げにつれなきは日本橋
第25話・灰の雨降る日本橋
第26話・三人の女
第27話・願わくば花の下にて春死なん
第28話・佐野世直大明神
第29話・江戸生蔦屋仇討(えどうまれつたやのあだうち)
第30話・人まね歌麿
第31話・我が名は天
第32話・新之助の義
第33話・打壊演太女功徳(うちこわしえんためのくどく)
第34話・ありがた山とかたじけ茄子(なすび)
第35話・間違凧文武二道(まちがいだこぶんぶのふたみち)
第36話・鸚鵡(おうむ)のけりは鴨(かも)
関連書籍一覧

ドンドン追記していきます。
私も精読中。
また、感想の方も上げて行きますのでお楽しみに!