(11)まどう心
https://www.nhk.jp/p/hikarukimie/ts/1YM111N6KW/episode/te/J15LXY6Q5Q/
初回放送日:2024年3月17日
兼家(段田安則)の計画により花山天皇(本郷奏多)が退位し、為時(岸谷五朗)は再び官職を失うこととなった。まひろ(吉高由里子)は左大臣家の娘・倫子(黒木華)に父が復職できるよう口添えを頼むが、摂政となった兼家の決定を覆すことはできないと断られる。諦めきれないまひろは兼家に直訴するが…。一方、東三条殿では道隆(井浦新)の嫡男・伊周(三浦翔平)らも招いて宴が催され、栄華を極めようとしていた。
兼家一家は出世
花山天皇は出家し花山院になったおかげで兼家一家は出世。
まひろの父の為時や小右記の藤原実資は職を失ってしまいます。
あからさまな人事で為時はショックのようだけれど、「高倉の女」の下には通います。
お手付きであろう「いと」は家には残る感じですね。
*「いと」はまひろの弟の乳母くらいのポジションだけれど、多分為時の愛人の一人です。
いとはお給金貰ってないんじゃないかと思うくらいです。
唯一の男で乙丸がいますが、いとと乙丸以外は解雇になったという事だと思います。
中級貴族であるはずの藤原為時ですが、学究肌で政治的な事とは疎かった彼は貧乏貴族だったというのも嘘ではなかったようです。
摂関政治って何?
ここで出て来るのが摂関政治です。
一番偉いのは天皇(帝)であるわけですが、変わって実質的な政治を行う事です。
どうして、「摂政」と「関白」と名前が変わるか不思議に思う人もいると思います。
これは天皇が成人するまでにその職に就いた場合を「摂政」
天皇が成人してからその職に就いた場合を「関白」と言います。
ここで勘の良い人なら分かるでしょう。
「摂政」の方が天皇は子供ですから政治はやりたい放題になるわけです。
花山天皇が煙たかった理由もコレです。
「関白」には藤原公任の父が就いていましたが、花山天皇は成人した大人でした。
ですから、天皇自身が選んだ人間をごり押しで政治的な中枢に就かせることも可能でした。
従来の貴族たちからすれば、面白い訳もありません。
ただし、今回のように幼少の天皇の後見になる事に成功すれば、またそれはそれで反感を買うことにはなるのです。
また、この方法であると天皇の子供を自分の娘が産まなければならないという「運」が必要になってきます。
藤原家は自分の娘が皇后になり次の天皇を産むことで政権を持っていましたが、それが永続的に続く訳もなく、衰退していきます。
(このお話はもっと後になります)
皇太子は年少の甥に。
今回、天皇になったのは詮子の子供で一条天皇です。
ドラマ内でも再現されていますが、7歳の男の子です。
実は詮子には姉がいて超子と言います。
この時点で既に亡くなっていますが、この人が超子の子供が今回の天皇が即位した時の皇太子になります。
(皇太子は東宮と呼ばれます)
つまり、今回の皇太子は天皇よりも年少なのです。
皇太子となって次の天皇になるのですが、これは「屈辱」でしかないのです。
自分より年少の甥が先に即位するとなれば、皇太子であっても自分がいつ天皇の位に就けるかどうか分からないからです。
一条天皇が即位した時の東宮(皇太子)は天皇よりも年下!
のちに三条天皇となるこの度の東宮にとっては屈辱的な措置!
ですが、このごり押しの7歳の男の子を先に天皇にしたのも「摂政」になるためなのです。
少し年長の超子の子供を天皇にしてしまうとすぐに成人してしまいます。
自分たちの思う政治が出来なくなるという事なのです。
花山天皇の二の舞にならないためにより年少の天皇を即位させる必要があったのです。
そして、何かあっても次に即位するのは自分の孫なので藤原兼家にとっては盤石の態勢を築いたという事です。
【参考】兼家と天皇家
花山院はおもしろくない
こうなれば、面白くないのは花山院です。
騙されて出家させられて天皇の位を退けさせれらた訳です。
ドラマの中では新しい天皇が即位するための高御座(たかみくら)のなかに穢れたものが置かれています。
(副音声では「子供のクビ」となっています。)
「死」や「血」が穢れとされた時代、高御座の中にそんなものがあったと知られてはたいへんです。
それを視て処理した道長はその場にいた者たちに箝口令を敷きますが、言われた方はたまったものではありません。
ですが、摂関家のお坊ちゃまの命令ですから、この場は聞いたのだと思います。
平安文学の「大鏡」でも子供のクビが置かれていた事が書かれている。
しかし、伝え聞いた兼家(道長の父)は寝たふりをして聞かなかった事にして即位式を実行。
安倍晴明が今回も暗躍
安倍晴明が天皇の即位にも今回も暗躍しています。
もう東三条家では摂政・兼家、嫡男・道隆と同じ畳の上で扱われています。
(すごいです。安倍晴明は摂政と同じ上座です!)
これは陰陽師が政治的な地位でなくても特権的な地位である事の現れであるなと思いました。
晴明が「この日は穢れている」「この日は吉日」と言えば決まってしまうのです。
最終的には晴明の判断で政治は動いていきます。
陰陽道という形をとっているものの、今回も安倍晴明の黒幕としての政治能力が示されたと言って過言ではないと思います。
まひろと会う摂政・兼家
職を失った父に嘆願するためにまひろは摂政・兼家に直談判に行きます。
会ってもらえるものの、「断ったのはそちらだ」とにべもなく追い返されてしまいます。
傍らで道長がのぞき見していたような演出もありました。
摂政の兼家がこんな小娘に会うなんて事は考えられないと思っていたのですが、よく考えると兼家は天皇の后にまた自分の孫を付けようと思っています。
その時には高い教養が必要だと分かっているので学問が出来るという噂の「為時の娘」を前もって見ていたのではないかと思うと、空恐ろしい気持ちになりました。
つまり、将来の天皇の后の教育係(女房)の面接だったのではと思うのです。
これが、伏線として回収されたら面白いなと思います。
ご覧になられたあなたはどう思われました?
次回は楽しみです。
まひろと兼家が会ったのも兼家の策略?
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放送リスト
第1回「約束の月」 – 2024年1月7日
第2回「めぐりあい」 – 2024年1月14日
第3回「謎の男」 – 2024年1月21日
第4回「五節の舞姫」 – 2024年1月28日
第5回「告白」 – 2024年2月4日
第6回「二人の才女」 – 2024年2月11日
第7回「おかしきことこそ」 – 2024年2月18日
第8回「招かれざる者」 – 2024年2月25日
第9回「遠くの国」 – 2024年3月3日
第10回「月夜の陰謀」 – 2024年3月10日
第11回「まどう心」 – 2024年3月17日
第12回「思いの果て」 – 2024年3月24日
第13回「進むべき道」 – 2024年3月31日
第14回「星落ちてなお」 – 2024年4月7日
第15回「おごれる者たち」 – 2024年4月14日
第16回「華の影」 – 2024年4月21日
第17回「うつろい」 – 2024年4月28日
第18回「岐路」 – 2024年5月5日
第19回「放たれた矢」 – 2024年5月12日
第20回「望みの先に」 – 2024年5月19日
第21回「旅立ち」 – 2024年5月26日
第22回「越前の出会い」 – 2024年6月2日
第23回「雪の舞うころ」 – 2024年6月9日
第24回「忘れえぬ人」 – 2024年6月16日
第25回「決意」 – 2024年6月23日
第26回「いけにえの姫」 – 2024年6月30日
第27回「宿縁の命」 – 2024年7月14日
第28回「一帝二后」 – 2024年7月21日
第29回「母として」 – 2024年7月28日
第30回「つながる言の葉」 – 2024年8月4日
第31回「月の下で」- 2024年8月18日
第32回「誰がために書く」- 2024年8月25日
第33回「式部誕生」- 2024年9月1日
第34回「目覚め」-2024年9月8日
第35回「中宮の涙」-2024年9月15日
第36回「待ち望まれた日」-2024年9月22日
第37回「波紋」-2024年9月29日
第38回「まぶしき闇」-2024年10月6日
第39回「とだえぬ絆」-2024年10月13日
第40回「君を置きて」-2024年10月20日
第41回「揺らぎ」-2024年10月27日
第42回「川辺の誓い」-2024年11月3日
第43回「輝きののちに」-2024年11月10日
登場人物が書いた本
源氏物語
ネット配信はこちら
キャスト一覧
主要キャスト一覧
まひろ/紫式部 (むらさきしきぶ) 吉高 由里子
藤原 道長 (ふじわらのみちなが) 柄本 佑
藤原 為時 (ふじわらのためとき) 岸谷 五朗
ちやは 国仲 涼子
藤原 惟規 (ふじわらののぶのり) 高杉 真宙
藤原 兼家 (ふじわらのかねいえ) 段田 安則
時姫 (ときひめ) 三石 琴乃
藤原 道隆 (ふじわらのみちたか) 井浦 新
藤原 道兼 (ふじわらのみちかね) 玉置 玲央
藤原 詮子 (ふじわらのあきこ) 吉田 羊
高階 貴子 (たかしなのたかこ) 板谷 由夏
ききょう/清少納言 (せいしょうなごん) ファーストサマーウイカ
安倍 晴明 (あべのはるあきら) ユースケ・サンタマリア
源 倫子 (みなもとのともこ) 黒木 華
源 明子 (みなもとのあきこ) 瀧内 公美
藤原 実資 (ふじわらのさねすけ) 秋山 竜次
藤原 公任 (ふじわらのきんとう) 町田 啓太
藤原 斉信 (ふじわらのただのぶ) 金田 哲
藤原 行成 (ふじわらのゆきなり) 渡辺 大知
源 俊賢 (みなもとのとしかた) 本田 大輔
源 雅信 (みなもとのまさのぶ) 益岡 徹
藤原 穆子 (ふじわらのむつこ) 石野 真子
藤原 頼忠 (ふじわらのよりただ) 橋爪 淳
藤原 宣孝 (ふじわらののぶたか) 佐々木 蔵之介
藤原 定子 (ふじわらのさだこ) 高畑 充希
藤原 彰子 (ふじわらのあきこ) 見上 愛
藤原 伊周 (ふじわらのこれちか) 三浦 翔平
円融天皇 (えんゆうてんのう) 坂東 巳之助
花山天皇 (かざんてんのう) 本郷 奏多
一条天皇 (いちじょうてんのう) 塩野 瑛久
直秀 (なおひで) 毎熊 克哉
赤染衛門 (あかぞめえもん) 凰稀 かなめ
乙丸 (おとまる) 矢部 太郎
百舌彦 (もずひこ) 本多 力
いと 信川 清順
藤原 道綱 (ふじわらのみちつな) 上地 雄輔
藤原 寧子 (ふじわらのやすこ) 財前 直見
藤原 隆家 (ふじわらのたかいえ) 竜星 涼
さわ 野村 麻純
絵師 (えし) 三遊亭 小遊三
藤原 忯子 (ふじわらのよしこ) 井上 咲楽
藤原 義懐 (ふじわらのよしちか) 高橋 光臣
三条天皇 (さんじょうてんのう) 木村 達成
藤原 顕光 (ふじわらのあきみつ) 宮川 一朗太
朱 仁聡 (ヂュレンツォン) 浩歌
周明 (ヂョウミン) 松下 洸平
藤原賢子(ふじわらのかたこ)南 沙良
あかね / 和泉式部(いずみしきぶ)泉 里香
敦康親王(あつやすしんのう)片岡千之助
双寿丸(そうじゅまる)伊藤健太郎
スタッフ一覧
脚本 : 大石静
語り : 伊東敏恵
副音声解説 : 宗方脩
タイトルバック映像 : 市耒健太郎
題字・書道指導 : 根本知
制作統括 : 内田ゆき、松園武大
プロデューサー : 大越大士、高橋優香子
広報プロデューサー : 川口俊介
演出 : 中島由貴、佐々木善春、中泉慧、黛りんたろう、原英輔、佐原裕貴 ほか
時代考証 : 倉本一宏
風俗考証 : 佐多芳彦
建築考証 : 三浦正幸
芸能考証 : 友吉鶴心
平安料理考証 : 井関脩智
所作指導 : 花柳寿楽
衣装デザイン・絵画指導 : 諫山恵実