
身請けの決まった瀬川はあいさつ回りで忙しそうです。
蔦重との時間はなさそうです。
幕府側も動きがあったようで…。

(10)『青楼美人』の見る夢は
初回放送日:2025年3月9日
瀬川(小芝風花)の身請けが決まり、落ち込む蔦重(横浜流星)。そんな中、親父たちから瀬川最後の花魁道中に合わせて出す、錦絵の制作を依頼され、市中へ調査に出るが…。
青楼美人って?

いきなりタイトルの青楼美人って何のことだと思いますか?
青楼とは妓楼の事です。
妓楼と言ってしまえば、直接的なので「妓」を「青」に変換する事でちょっとオシャレな感じになるんですね。
青楼美人と言ってしまえば、「吉原の女郎の美人」の事なのです。

妓楼美人ではなくて、青楼美人という言い方で女郎たちの格も上がるように思います。
先輩からのアドバイス

市中の本屋さんから追い出された蔦重は街の本屋の仲の唯一の味方である須原屋(里見浩太朗)に相談します。
須原屋さんは実直なのでこのまま「改」(改訂)を地道に続けることを勧めます。
ですが、平賀源内はやりたいことをやれとアドバイスします。
蔦重の夢は吉原を昔のように江戸っ子の憧れにしたいと言いました。
花魁たちは高嶺の花で女郎たちは身請けや良い出会いに恵まれる。
瀬川を喜ばせたい⇐ここが本音。

平賀源内は吉原を仰ぎ見るようなところに変えてやろうと言い出します。
千代田のお城って将軍様の住まう江戸城の事です。
残念ながら、この時点で江戸城の天守閣は火災で焼失し再建される事はありませんでした。
つまり、江戸っ子にとっても「千代田のお城」は観た事がない憧れの場所だったんですね。
仰ぎ見る天守閣はないけれど、将軍様の住居はそのままそこにありました。

瀬川は憧れの女郎になる

瀬川は高い身請け料を鳥山検校に払ってもらって吉原を出て行きます。
途中で足抜けしたり、死んでしまう事もなく外に出る事が出来るのは大変めでたい事でもありました。
これで、女郎になっても素晴らしい将来が待っているという憧れの存在に瀬川はなれたという事です。
市中には役者のブロマイドが流行る

次の一手を考えなければならない蔦重は市中で役者の絵がたくさん売っている事に気が付きます。
人気の絵師は勝川春章と言いました。
似顔絵の元祖と言われている人で彼の真似をしてたくさんの役者の絵が出回ったのです。
今で言うブロマイドの前身のようなものですね。
日光社参、瀬川への恩返しとは?

莫大な費用が掛かる日光社参(前将軍の法事)。
幕府の財政では賄いきれないので見物料を取る事を平賀源内に提案され、田沼意次は実行する事に決めます。
これは瀬川の花魁道中からヒントを得たモノだったので瀬川に恩返しをしたいと考えていました。
田沼意次は蔦重を含める吉原の親方と対面。
そこで蔦重から「青楼美人」の本を受け取ります。
これを受け取る事で、蔦重は本を将軍様にも見せるきっかけを作ったというお墨付きをもらったという事なのです。

本を将軍様が本当に見てくださったかどうかは分かりません。
でも、とにかく、「見てもらったかもしれない」という分には嘘ではなくなりました。
これで蔦重は「本」を大宣伝できることになります。
瀬川にも献本。引退するのに瀬川は巻頭カラー

蔦重は瀬川にも出来上がった本を渡したかったのですが、親方衆ににらまれているので直接会うことは控えていました。
瀬川の親方である松葉屋は最後の機会と思ったのでしょう。
蔦重にさりげなく、会って渡すように言い渡します。(粋です)
瀬川は美しい本を見て驚きます。
カラーの絵姿は女郎の普段の姿だったのです。
更に引退する自分自身の絵姿が巻頭カラーだったのです。

蔦重から瀬川へのプレゼントはいつも「本」
色んな思いで涙する瀬川にもらい泣きをした人も多いのでは?
瀬川は白無垢姿での最後の花魁道中となります。
これは鳥山検校が正式な妻に迎えるという事なのでしょうが、こういうケースも非常に珍しかったのではと思います。
女郎の身請けと言っても、妾や愛人になるのが多かったので、正式な妻にというのはそれだけ瀬川が鳥山検校に大切に思われていたという事でもあります。
瀬川の吉原最後のセリフは「おさらばえ…」吉原への別れと蔦重への思いの断ち切りの言葉です。
吉原の大門の外に辿り着いたときにそこには鳥山検校が待っていました。

感想
身請けが決まった瀬川はあいさつ回りで忙しく蔦重とはすれ違いが続いていましたが、蔦重は最後のはなむけに瀬川の巻頭カラーの本を出します。
本のプレゼントに瀬川は「いつも本ばかり」と言うものの嬉しそうなのが印象的でした。
引退して吉原を引退する瀬川に対して引退後なのに瀬川の事をトップページに持ってくるわけですから、瀬川への特別な思いを感じましたね。
おまけに巻頭カラーです。
瀬川自身も自分がいない後の再見に自分の名前が絵姿と共に載るわけですから、感慨深いことこの上ないのです。
そんな瀬川の後ろには白無垢の打ち掛けが掛かっていました。
つまり、嫁入り道具ということですね。
蔦重と別れのプレゼントをもらう時点で瀬川自身は身請けされるわけですから、嫁に行くのと同じかもしれませんね。
つまりは、蔦重以外の男のモノになるということです。
瀬川最後の花魁道中では大門を出る前では蔦重に向かって「おさらばえ」と言って踵を返します。
大門の外では鳥山検校が待っていました。
笑顔で蔦重に別れを告げ、笑顔で鳥山検校に飛び込む瀬川。
その笑顔は鳥山検校には見えないのですが、検校も笑顔で返すのが素敵でした。

これから、幸せになってほしい瀬川ですが、検校は瀬川を身請けしたことで多くの反感を買われる事になると言うのが史実にあります。
大河ではどう描かれるでしょう?
次回以降、楽しみです。
おまけ~アンケート結果
放送後のアンケートにお答えいただきありがとうございました。
やはり一番は瀬川の吉原最後の笑顔での終わり方でした。
1位・瀬川、蔦重と笑顔で「おさらばえ…」
2位・瀬川、白無垢で引退
3位・瀬川、鳥山検校と笑顔で去る
4位・瀬川、引退後に巻頭カラー

瀬川の「おさらばえ…」は
吉原を去る事と鳥山検校に嫁ぐことで蔦重と別れるという事をかけているように感じました。
また、瀬川の白無垢姿はその通り「嫁ぐ」ということも暗示しています。
ただ、身請けして妾や愛人になるという事ではなくて正式に「妻」になるということでもあったと思います。
各話リスト

今までのお話の感想を書いています。
たまに蘊蓄も追加しています。
よろしかったらどうぞ。
第1話「ありがた山の寒がらす」
第2話「吉原細見『嗚呼(ああ)御江戸」
第3話「千客万来『一目千本』」
第4話「『雛形若菜』の甘い罠」
第5話「蔦(つた)に唐丸因果の蔓(つる)」
第6話「鱗(うろこ)剥がれた『節用集』」
第7話「好機到来『籬(まがき)の花』」
第8話「逆襲の『金々先生』」
第9話「玉菊燈籠恋の地獄」
第10話「『青楼美人』の見る夢は」
第11話「富本、仁義の馬面」
第12話「俄(にわか)なる『明月余情』」
第13話「お江戸揺るがす座頭金」
関連書籍一覧

ドンドン追記していきます。
私も精読中。
また、感想の方も上げて行きますのでお楽しみに!