進撃の巨人30巻　3組の兄弟。エレンの首を撃ち抜くガビ。エレンの首を拾った事で道が開ける。グリシャの行動はエレンの指示。始祖ユミルの巨人化は虫との接触？二千年前からユミルが待っていたもの。

グレース

あらすじと感想。原作の順番に準拠します。
アニメと原作では話数や分かりやすくするために話が前後しているものが多いようです。
ここでは原作の順番を優先して、分かりにくい部分は私の解説と感想を加えて書いていきます。
多角的に読まれることも多い本作品ですので、ここでの解説も私個人の一つの解釈に過ぎない事を前提としてお読みいただけますと幸いです。

あらすじと感想
アニメ化部分
コミックリスト
進撃の巨人関連リンク

あらすじと感想

前巻29巻のあらすじはこちら。

進撃の巨人Amazon
進撃の巨人　紀伊國屋書店
進撃の巨人　TSUTAYA（蔦屋書店）
進撃の巨人　楽天ブックス

U-NEXT　進撃の巨人
Hulu　進撃の巨人
Amazon　進撃の巨人

第119話　兄弟

マガトは鋼の巨人（ライナー）と顎の巨人（ポルコ）に獣の巨人（ジーク）と始祖の巨人（エレン）を接触させるなと命じます。そうなる前に始祖を食えと。
ライナーとポルコはエレンに襲い掛かります。後方から車力の巨人（ピーク）に乗ったマガトはエレンに砲火を浴びせます。その近くにはフロック率いるイェーガー派が阻止するために立体起動装置を使ってピークを襲い掛かります。
ミカサとアルミンも車力の巨人を何とかしないといけないと思いますが、それ以前にマーレ兵もいます。
ピクシス司令は馬に乗り、現場指揮をします。敵兵の背後を捉えるように指示します。

ジークは倒れたままです。エレントライナーが格闘している間に再生能力を使い果たしたポルコが倒れています。ポルコは倒れながら顎の巨人の記憶を通して兄の話を知ります。ポルコの兄マルセルは自分の弟を戦士にしたくなくて弟よりもライナーを押し上げていたのです。自分の弟を守りたかったからです。

ファルコを連れたコルトは叫ぼうとする獣の巨人（ジーク）の前に現れます。巨人同士が戦闘しているその場に来るなんて正気の沙汰ではありません。理由は簡単です。コルトもまた自分の弟ファルコを失いたくなかったのです。ジークが叫んでしまったらジークの脊髄液入りのワインを飲んでしまったファルコも無垢の巨人になってしまいます。コルトはこの事情を必死で説明し、ジークに「叫ばないでくれ」と頼みます。せめて、ファルコが「叫びの」の効果のある範囲を出るまではと必死です。ガビも馬で来ています。馬に乗るように言いますが、ガビを巻き込みたくないファルコは「来るな」と言います。
コルトの必死の願いをジークは息を飲んで聞きます。「弟を思う気持ちはよくわかる」と小さな声で言った直後、ジークは叫びます。これでファルコは無垢の巨人になります。巨人化に巻き込まれるとコルトも死にます。でも、コルトはファルコが巨人化するのを分かっていてファルコを抱きしめます。
ファルコの巨人化に巻き込まれて自分も死ぬであろう事が分かっていてファルコを抱きしめるコルト。

グレース

このシーンは進撃の巨人の中で一番美しいシーンだと思います。敵であるマーレ人たちも戦士を目指した子供達もきっかけは「家族を守りたい」という事だと言う事が現れているシーンだと思います。この回に出て来る3組の兄弟はイェーガー兄弟（ジークとエレン）。ガリアード兄弟（マルセルとポルコ）。グライス兄弟（コルトとファルコ）の3組です。それぞれ、形は違っても兄は弟を思い、弟は兄を思うのです。

巨人化するのはファルコだけではありません。ワインを飲んでしまったナイル、ピクシス司令も巨人化します。ピクシス司令は叫びを聞いたときに酒を飲んでいますが、そっと目を閉じます。覚悟を決めたのでしょう。
一瞬で巨人化していく高官達。

ファルコが巨人化したその時、コルトはファルコの巨人化に巻き込まれて焼死しています。それをそばで直視したガビもさすがにショックが隠し切れません。

一斉の巨人化にピークとマガトは形成を逆転したと思いましたが、ミカサとアルミンに強襲され体制を崩します。

エレンとの戦いで力尽きてしまったライナー（鋼の巨人）に巨人化したファルコがうなじを噛み切ろうとします。鎧を引き継ぐのはファルコ。そう思った瞬間に、顎の巨人から人の姿に戻ったポルコが出てきます。もう再生能力も失う程にボロボロになってしまったポルコ。兄、マルセルの記憶を見てライナーに自分が上だと言い切ったポルコ。そのポルコに襲い掛かったのは無垢の巨人ファルコでした。これでファルコは顎の巨人を継承したことになります。

ポルコ・ガリアードは自分の死期を察し、ファルコの前に身を晒したのでしょう。それで自分が食われることも承知の上です。

エレンは硬質化した隙に人の姿に戻り、ジークの元へ駆け出します。ジークと接触するためです。そこへガビはライフルを持ちます。エレンを撃ち、首を飛ばしたのはガビでした。

グレース

ガビの正射能力は正確すぎて恐ろしいほどです。むしろ外すことはありません。これは子供だからこそ、目の良さで正確さが増すのです。こういった描写はアメリカのベトナム映画「フルメタル・ジャケット」（1987年）でも出てきます。最終的に子供も武器を取るようになると言うのは何もアニメやファンタジーの世界の話ではないと思います。

第120話　刹那

ジークとエレンがレべリオ区で会った時の事が回想されます。他に色んな事が思い起こされました。
ガビに撃たれ、首を飛ばされたエレン。その首はジークによって地面に着くまでに受け止められます。その反動で「道」が開けます。
そこには異次元の「道」がありました。エレンとジークは話をします。ジークは王家の血筋なので「不戦の契り」の鎖につながれています。

誰かいます。「始祖ユミル」です。始祖ユミルはここでずっと巨人を作り続けていたのだとジークは言います。

そしてジークは「安楽死計画」を実行すべく、エレンにユミルに伝えろと言います。
エレンは拒否します。この時にエレンは初めてジークに本心を明かしたのです。

オレがこの世に生まれたからだ

ジークはエレンが自分の望みを叶えない事に嘆きますが、すぐに鎖を粉々にします。ユミルに作らせた見せかけの土で出来た鎖だと。

グレース

ジークは王家の力でユミルにある程度の指示は出来るようですが、根本の「子供を作らせない」ということまでは指示できません。始祖の力を持っていないからです。ですが、ジーク自身が始祖の力を持っていたら王家の血の「不戦の契り」でユミルに命じることは出来ない。エレンなら始祖の力で「安楽死計画」は可能。しかし、王家の血を持つ巨人のジークでなければ「道」に辿り着くことは出来ない。そういう何ともねじれた話になっています。

今度はエレンが鎖につながれます。ジークはエレンに近づきエレンがどれだけ哀れだったかを説き、もう一度説得を試みます。ジークとエレンは額をぶつけて二人の実父グリシャの記憶を観る事になります。

壁の中のグリシャは結婚し、新しい命を授かります。エレンです。ジークと違いエレンは愛されて育ったようにジークには見えました。またグリシャが壁の中の王家を早い段階で付き止めていた事も知ります。始祖の巨人を王家から奪うためです。ジークはエレンに問い続けます。エレンもグリシャが悪いと言います。
グリシャが自室で眠っている光景もジークとエレンは見ます。グリシャの手元にはかつての家族の写真がありました。最初の妻、ダイナと息子のジーク、そして自分が写った3人の写真です。寝言で「ジーク」と呟くのをジークは聞きます。グリシャは起き上がって、「ジーク…そこにいるのか？」と言ったものの、「ジークがあんな髭面おじさんなわけない」と再び座ります。

グレース

記憶をさかのぼっているジークが見えたんでしょうか？

エレンは次の記憶にジークを誘います。

第121話　未来の記憶

記憶はエレンの子供の頃のつづきです。アルミンもミカサも出てきます。ミカサを襲った人間を殺した事も。
エレンはジークこそ死んだ父親に囚われている哀れな男だと言い、ジークはエレンにそれでも見捨てないと言い、話がかみ合う様子はありません。ただ、穏やかに話を続けているだけです。

そして、とうとう、壁が壊されたあの日、王家に踏み込んだグリシャ。王家の人間を襲い、始祖を奪おうとしますが、躊躇してしまいます。

進撃の巨人の力の一つは未来を観る事です。進撃の巨人の継承者を通して未来を観る事が出来ます。それを始祖の巨人である王家の人間は知りません。

ここで王家の人間を殺すと言う事も進撃の巨人の記憶でグリシャは知っています。でも、躊躇してしまったのです。自分は医者だから子供まで殺すことは出来ないと。そんなグリシャを後押ししたのはエレンでした。

何と、グリシャに王家の人間を殺すように誘導したのはエレンでした。ジークとエレンが道をつないで過去に遡ったからこそ、グリシャは王家の人間を殺したのでした。

巨人化し、王家の人間を殺していったグリシャ。ただ一人、王家の父親だけを残して。このただ一人がこの時点での女王「ヒストリアの父」だったのです。

グリシャは崩れ落ちる中、ジークを見ます。ジークに「叶うのはエレンの望み」だと言うのです。進撃の巨人の未来を見る力によりエレンの記憶を見たグリシャはこの時に戦いの先を見たのです。
「エレンを止めてくれ」とジークを抱きしめるグリシャ。その時にジークはエレンが鎖でつながれているところまで戻ります。エレンはまだグリシャがエレンに食べられているところを見ていないと言い放ちます。
進撃の巨人が未来を観る事が出来ると言うのはジークも初めて知った事です。でも、全部を観たわけでもないと確信します。
エレンの代わりにジークが始祖ユミルにすべてのエルディア人から生殖能力を奪えと命じます。
始祖ユミルは何か発動を始めます。エレンはそれを止めようと鎖を引きちぎり始祖ユミルに駆け寄ります。

第122話　二千年前の君から

始祖ユミルの記憶です。
ユミルは奴隷でした。豚を逃がした責任をユミル一人に擦り付けられます。
目を傷つけられ、矢を放たれます。
倒れ込んだ森の中に大きな樹がありました。
その穴の中に足を踏み外してしまったユミル。
そこで何かと接触します。

グレース

ここで何かは何であるか言明されていませんが、光る虫。ムカデのようなものと言うのが一般的な考察です。

ユミルは巨人化します。巨人になったユミルは道を開き、荒れ地を耕し、峠に橋を架けました。その働きにフリッツ王は喜び、側室となり子供を産みます。その間も巨人化してマーレを破壊し続けます。

フリッツ王の信頼も厚く、待遇も良くなるユミル。そこへある兵士がフリッツ王に槍を投げます。槍に刺さったのはフリッツ王ではなくユミルでした。ユミルが王を庇ったのです。
ユミルは死にましたが、その巨人の力を引き継がせるためにユミルの産んだ3人の娘にその亡骸を食べさせました。その3人の娘の名前がマリア、ローゼ、シーナでした。

フリッツ王の言葉にエレンは「終わりだ！」と叫びます。
始祖ユミルに駆け寄り、彼女を後ろから抱きしめます。「お前が決めて良い！」とユミルに言います。ジークも諦めていません。その背後からエレンとユミルの元へ行って阻止しようとします。

「待っていたんだろ？ずっと二千年前から誰かを」とユミルに問いかけるエレン。
その言葉に今まで無表情だったユミルが目を見開き涙を流し始めます。

その瞬間、「道」から現実に戻るジークとエレン。
エレンの首が飛んでジークが受け止めるその瞬間まで戻りました。

エレンを撃ったガビを助けようと鋼の巨人が手を伸ばします。
そして、ジークとエレンが接触した事でエレンは強大な骨となっていくのです。
次巻に続きます。