(40)君を置きて
初回放送日:2024年10月20日
まひろ(吉高由里子)の書く物語が相変わらず宮中の話題になる中、一条天皇(塩野瑛久)が体調を崩し、不穏な空気が漂い始める。中宮・彰子(見上愛)の前では、気丈に振る舞う天皇だったが、道長(柄本佑)の元に、占いによる不吉な予兆が報告されたことで、次期皇位を巡る公卿たちの動きが加速する。まひろが天皇の容態を心配する彰子に付き添っていると、道長がやってくる。そこで彰子は道長に対して感情を露わにして…
とうとう超絶イケメンの一条天皇の崩御です。
タイトルの「君を置きて」というのは一条天皇の辞世の句になります。
この「君」は誰を指すのか?
私は亡き皇后定子の事だと思いますが、この点を含めて感想を書いていきたいと思います。
次の東宮は誰か?
一条天皇は体調が悪かったので自分自身の運命を悟っている部分がありましたが、陰陽師に「崩御の卦」があることを占いで言われてしまいます。
おまけにその占いの結果を一条天皇自身が御簾ごしに聞いていたのです。
もう自分自身に後はない。
ただ一つの望みは自分の第一皇子を次の東宮にしたいという事でした。
ここでちょっとややこしいので解説しておきます。
一条天皇が譲位した場合、次の天皇になるのはこの時点で東宮である居貞親王です。
この次の東宮に自分の子供を据えたいというのが一条天皇です。
ですが、一条天皇には「皇后定子」の「第1皇子」と「中宮彰子」の「第2皇子」の二人の皇子がいました。
順当に考えると第1皇子が東宮になるのが普通だと考えられますが、「第1皇子」には主だった後見がなく、「第2皇子」には時の権力者である道長の強力な後見がありました。
つまり長男だからと言っても後見のない第1皇子が次の東宮、そして将来の天皇になるのは難しいという事なのです。
天皇になる順番
この時代の特殊な事情として意外に天皇(帝)が短期間で入れ替わっている事です。
寿命が来たからではなくて、「譲位」とという形で、帝が変わっていくのです。
そう思うと、一条天皇の在位は25年なのでこの時期ではかなりの長期政権であった事が伺えます。
今であれば、親から子へ継がれていくのが多くの人が考える事ですが、この時は「兄から弟へ」「叔父から甥へ」など今とは違う感覚があった事があげられます。
これは天皇の位が譲られるのは次の東宮(皇太子)に決まった人なので、天皇の実子であろうが長男であろうが、まずは東宮の地位に付かないと天皇になれないという事情がありました。
だからこそ、帝自身が譲位する前に「次の東宮」を決める事は重大な出来事でした。
天皇でも自分の子供を天皇にするのは次の次の時代
(2代後にならないと自分の子を天皇に出来ない)
君を置きて
一条天皇の辞世の句が詠まれます。
辞世の句は生涯最後の和歌です。
なので、一条天皇は口頭で言ったと思われ、周囲にいた人たちの聞き取りでこの歌が残っています。
大河ドラマでは下記のように紹介されました。
露の身の 風の宿りに 君を置きて 塵を出でぬることぞ 悲しき
意訳:死んでしまう自分自身、大切な「君」を遺して死んでしまう事が悲しい。
ここで「君」とは誰かという議論が必ず起こります。
一条天皇にとって一番愛した女性は皇后定子です。
その皇后定子の遺した第1皇子を自分の跡取りにする事が出来ずに死んでいく自分自身の悲しさを歌ったものだと私は取っています。
大河の演出上でも「君を置きて」という和歌は看取った中宮彰子に向けられたものだという形になりましたが、一条天皇の側近であった行成は「皇后」の気持ちに寄り添っていると書いているシーンがあり、どちらとも捉えられる面白い演出になっていました。
行成が「君」とは「皇后定子」であろうという事は彼自身が遺した「権記」と言われる記録にも書いてあるので、このシーンはその記録を再現したものだと思われます。
道長に反発!まさかの中宮彰子!
子供の頃に一条天皇の元に入内し、一条天皇を主軸に生きてきた中宮彰子は帝の思いをよく知っていました。
自分の子供は第2皇子ですが、第1皇子も我が子同様に育ててきた中宮彰子です。
更に、帝の思いをよく知っていた中宮彰子は我が子よりも年長の第1皇子が東宮になる事を当然だと考えていました。
帝自身でさえ、道長や行成にあらがえない時に、ただ一人中宮彰子が反発したのです。
中宮彰子の思い
帝の思いも知っている。
常識的に考えて同じ帝の子供なら年長の親王が東宮になるべき。
自分の子供である第2皇子はすぐに即位しなくても将来がある。
これまで道長を「父上」と尊重してきた中宮彰子ですが、これ以降「道長」と呼び捨てです。
それくらい、中宮彰子はこの決定に納得していなかった事がよく分かります。
黒幕は「まひろ」?
まひろが中宮彰子に漢文を教えるシーンは何度も再現されていますが、これこそが中宮彰子が常識人たるゆえんでもありました。
漢文を通して中国の皇帝が名君であった場合と没落していった場合の決定的な差は跡取り問題であったり、民草の事を考えていたか否かによるものが非常に大きかったのです。
そういうことを知っている中宮彰子は年少の自分の息子を跡取りにすることは露ほども考えていなかった事がよく分かります。
ただし、道長にしてみれば「余計な事を教えた」まひろに対して怒りがあったという事も容易に想像できることです。
今後、まひろは道長により追放されてしまいますが、この辺の演出もどう描かれるかが楽しみです。
まひろが特に何も意見せずに中宮彰子の気持ちに応えています。
物語や自分の才覚を通して意見を言ってきたまひろには珍しい回になっています。
「何も言わない」けれど、中宮彰子を通して本音は言ったという事かなあ…と思います。
放送リスト
第1回「約束の月」 – 2024年1月7日
第2回「めぐりあい」 – 2024年1月14日
第3回「謎の男」 – 2024年1月21日
第4回「五節の舞姫」 – 2024年1月28日
第5回「告白」 – 2024年2月4日
第6回「二人の才女」 – 2024年2月11日
第7回「おかしきことこそ」 – 2024年2月18日
第8回「招かれざる者」 – 2024年2月25日
第9回「遠くの国」 – 2024年3月3日
第10回「月夜の陰謀」 – 2024年3月10日
第11回「まどう心」 – 2024年3月17日
第12回「思いの果て」 – 2024年3月24日
第13回「進むべき道」 – 2024年3月31日
第14回「星落ちてなお」 – 2024年4月7日
第15回「おごれる者たち」 – 2024年4月14日
第16回「華の影」 – 2024年4月21日
第17回「うつろい」 – 2024年4月28日
第18回「岐路」 – 2024年5月5日
第19回「放たれた矢」 – 2024年5月12日
第20回「望みの先に」 – 2024年5月19日
第21回「旅立ち」 – 2024年5月26日
第22回「越前の出会い」 – 2024年6月2日
第23回「雪の舞うころ」 – 2024年6月9日
第24回「忘れえぬ人」 – 2024年6月16日
第25回「決意」 – 2024年6月23日
第26回「いけにえの姫」 – 2024年6月30日
第27回「宿縁の命」 – 2024年7月14日
第28回「一帝二后」 – 2024年7月21日
第29回「母として」 – 2024年7月28日
第30回「つながる言の葉」 – 2024年8月4日
第31回「月の下で」- 2024年8月18日
第32回「誰がために書く」- 2024年8月25日
第33回「式部誕生」- 2024年9月1日
第34回「目覚め」-2024年9月8日
第35回「中宮の涙」-2024年9月15日
第36回「待ち望まれた日」-2024年9月22日
第37回「波紋」-2024年9月29日
第38回「まぶしき闇」-2024年10月6日
第39回「とだえぬ絆」-2024年10月13日
第40回「君を置きて」-2024年10月20日
第41回「揺らぎ」-2024年10月27日
第42回「川辺の誓い」-2024年11月3日
第43回「輝きののちに」-2024年11月10日
登場人物が書いた本
源氏物語
ネット配信はこちら
キャスト一覧
主要キャスト一覧
まひろ/紫式部 (むらさきしきぶ) 吉高 由里子
藤原 道長 (ふじわらのみちなが) 柄本 佑
藤原 為時 (ふじわらのためとき) 岸谷 五朗
ちやは 国仲 涼子
藤原 惟規 (ふじわらののぶのり) 高杉 真宙
藤原 兼家 (ふじわらのかねいえ) 段田 安則
時姫 (ときひめ) 三石 琴乃
藤原 道隆 (ふじわらのみちたか) 井浦 新
藤原 道兼 (ふじわらのみちかね) 玉置 玲央
藤原 詮子 (ふじわらのあきこ) 吉田 羊
高階 貴子 (たかしなのたかこ) 板谷 由夏
ききょう/清少納言 (せいしょうなごん) ファーストサマーウイカ
安倍 晴明 (あべのはるあきら) ユースケ・サンタマリア
源 倫子 (みなもとのともこ) 黒木 華
源 明子 (みなもとのあきこ) 瀧内 公美
藤原 実資 (ふじわらのさねすけ) 秋山 竜次
藤原 公任 (ふじわらのきんとう) 町田 啓太
藤原 斉信 (ふじわらのただのぶ) 金田 哲
藤原 行成 (ふじわらのゆきなり) 渡辺 大知
源 俊賢 (みなもとのとしかた) 本田 大輔
源 雅信 (みなもとのまさのぶ) 益岡 徹
藤原 穆子 (ふじわらのむつこ) 石野 真子
藤原 頼忠 (ふじわらのよりただ) 橋爪 淳
藤原 宣孝 (ふじわらののぶたか) 佐々木 蔵之介
藤原 定子 (ふじわらのさだこ) 高畑 充希
藤原 彰子 (ふじわらのあきこ) 見上 愛
藤原 伊周 (ふじわらのこれちか) 三浦 翔平
円融天皇 (えんゆうてんのう) 坂東 巳之助
花山天皇 (かざんてんのう) 本郷 奏多
一条天皇 (いちじょうてんのう) 塩野 瑛久
直秀 (なおひで) 毎熊 克哉
赤染衛門 (あかぞめえもん) 凰稀 かなめ
乙丸 (おとまる) 矢部 太郎
百舌彦 (もずひこ) 本多 力
いと 信川 清順
藤原 道綱 (ふじわらのみちつな) 上地 雄輔
藤原 寧子 (ふじわらのやすこ) 財前 直見
藤原 隆家 (ふじわらのたかいえ) 竜星 涼
さわ 野村 麻純
絵師 (えし) 三遊亭 小遊三
藤原 忯子 (ふじわらのよしこ) 井上 咲楽
藤原 義懐 (ふじわらのよしちか) 高橋 光臣
三条天皇 (さんじょうてんのう) 木村 達成
藤原 顕光 (ふじわらのあきみつ) 宮川 一朗太
朱 仁聡 (ヂュレンツォン) 浩歌
周明 (ヂョウミン) 松下 洸平
藤原賢子(ふじわらのかたこ)南 沙良
あかね / 和泉式部(いずみしきぶ)泉 里香
敦康親王(あつやすしんのう)片岡千之助
双寿丸(そうじゅまる)伊藤健太郎
スタッフ一覧
脚本 : 大石静
語り : 伊東敏恵
副音声解説 : 宗方脩
タイトルバック映像 : 市耒健太郎
題字・書道指導 : 根本知
制作統括 : 内田ゆき、松園武大
プロデューサー : 大越大士、高橋優香子
広報プロデューサー : 川口俊介
演出 : 中島由貴、佐々木善春、中泉慧、黛りんたろう、原英輔、佐原裕貴 ほか
時代考証 : 倉本一宏
風俗考証 : 佐多芳彦
建築考証 : 三浦正幸
芸能考証 : 友吉鶴心
平安料理考証 : 井関脩智
所作指導 : 花柳寿楽
衣装デザイン・絵画指導 : 諫山恵実