
閉鎖環境での試験は続きます。
他人が5人、閉鎖環境で2週間過ごすわけですから、簡単ではありません。
しかも、トラブル続きです。
閉鎖環境試験で試されるのは「問題解決力」ではなく「人間性」
他人がいるからトラブルになるのではなく、JAXAがあえてトラブルになりそうな指示を出しているのです。しかし、それが仕組まれたものだとは、トラブルを起こした本人以外には分かるはずもありません。
さて、ここでそれぞれのチームの「色」が出てきます。
おまけに、そのトラブルの合間に行われる訓練の一つが「白いパズル」。
これはかなり厄介な訓練です。
トラブル続きの中で、この白いパズルが出されたのですから、イライラもマックスになります。
閉鎖環境での試験は、それぞれ5人ずつ、3チームに分かれて行われています。
ムッタが責めなかった理由――宇宙飛行士に求められる本当の資質
ムッタのチームは、時計が壊れてしまったことが最初のトラブルでした。
ムッタは、チーム最年長の福田さんが壊してしまったところを見ていました。
これを「福田さんのせいだ」と言うのは簡単でしたが、ムッタはいろいろ考え、「グリーンカード」を思い出します。
グリーンカードとはアメリカの永住権のことではなく、宇宙飛行士の訓練の一つとして、わざとトラブルが起こるような指令を出すことです。
宇宙飛行士は宇宙でどんなトラブルに巻き込まれるか分からないため、意図的にトラブルを起こし、その対処方法を学ぶのです。
ムッタのすごいところは、「グリーンカード」であることに気付く前から、決して時計を壊した福田さんを責めなかったことです。
責めなかったことで、ムッタ自身が時計を壊したのではないかと疑われたほどでした。
それでもムッタは、福田さんをつるし上げるようなことはしませんでした。

実は、これこそが宇宙飛行士に求められる資質なのです。
宇宙空間では、どんなトラブルが起きても責任者を追及することが最優先ではありません。
犯人探しをしてもトラブルが解決するわけではなく、安全な航行につながるわけでもないからです。
残念なのは、ムッタの親友・ケンジのチームです。
特に、ケンジとリーダーの座を争っていた溝口は、とにかくケンジを犯人として追及することをやめません。
グリーンカードでJAXA側からの指示だったと分かった後でさえ、追及こそやめたものの、点数制で人を評価する考え方は変えませんでした。
溝口は非常に優秀で、常にリーダー格だったことがこの後の巻で語られます。
しかし、それだけでは宇宙飛行士にはなれなかったのです。
JAXA側は、こうした人としての資質もしっかり見ているのです。
この『宇宙兄弟』という作品が、いかに現実の宇宙飛行士選抜を丁寧に描いているかがよく分かる場面でもあります。
シャロンの思い出とうどん作りが生んだ最高のチームワーク
この巻で私が好きなのは、ムッタのチームが最終日に食料がなくなってしまい、うどんを作る場面です。
グリーンカードで険悪になりかけていたこのチームは、ムッタの機転によって、とても良いチームへと変わっていきます。
食料がなくなってしまったと分かったときでさえ、誰一人としてチームメンバーを責めませんでした。
そして、材料があるから「うどんを作ろう」という提案に、みんなが賛成します。
うどん作りをどこで覚えたのかと聞かれたムッタは、メンバーに初めて「シャロンおばちゃん」の話をします。
天文学者のシャロンのもとで、弟のヒビトとうどんを作ったことや、英語を教えてもらったことなどを話すのです。
すると、メンバーたちはシャロンを知っている人ばかりでした。
そればかりか、みんなが我先にとシャロンの話を語り始めます。
ムッタにとって、シャロンの話で友達と盛り上がったのは初めてのことでした。
子どもの頃、同級生たちにシャロンの話をしても、誰も興味を示してくれなかったからです。
その経験があったからこそ、ムッタはそれ以降、友達を誘って天文台へ行こうという気持ちになれなかったのでしょう。
シャロンの話で盛り上がれたのは、宇宙を愛する人たちだからこそでした。

ですが、このメンバーの中から「2人を選ぶ」という最終課題が残っています。
次巻に続きます。
テレビアニメ『宇宙兄弟』まとめ

NASA・JAXAの全面協力で制作された伝説的な作品です。
JAXAの宇宙飛行士は実名で登場します。
宇宙飛行士本人の登場も話題になりました。
エンディングテーマの後には宇宙関係の写真が紹介されるお楽しみ企画もありました。
| 話数 | 放送日 | 内容 |
|---|---|---|
| 第1~13話 | 2012年4~6月 | 宇宙飛行士選抜試験編 |
| 第14~31話 | 2012年7~11月 | 二次試験・閉鎖環境試験編 |
| 第32~51話 | 2012年11月~2013年4月 | 宇宙飛行士候補生編 |
| 第52~75話 | 2013年4~10月 | NASA訓練・ヒビト編 |
| 第76~99話 | 2013年10月~2014年3月 | 月ミッション・帰還編 |
放送期間
- 放送開始:2012年4月1日
- 放送終了:2014年3月22日
- 話数:全99話
- 放送局:読売テレビ・日本テレビ系列

約2年間にわたって放送されました。
大人気作品でした。
原作では19巻までです。
また、アニメ化されて原作の最終回まで制作してほしいです。
皆さんのエールをお願いしたいです。
最後に宇宙兄弟の歴史をチェック
| 年月日 | 出来事 | 備考 |
|---|---|---|
| 1969年7月20日 | アポロ11号が月面着陸 | 『宇宙兄弟』の物語全体の原点となる歴史的出来事。 |
| 1993年10月28日 | 南波六太(ムッタ)誕生 | さそり座。同日、ドーハの悲劇が起こる。 |
| 1996年9月17日 | 南波日々人(ヒビト)誕生 | おとめ座。同日、野茂英雄投手がMLBでノーヒットノーランを達成。 |
| 2006年7月 | 幼いムッタとヒビトがUFOを目撃 | 「二人で宇宙飛行士になる」と約束した運命の日。 |
| 2025年5月 | ムッタが会社を辞め、JAXA宇宙飛行士選抜試験へ挑戦 | 『宇宙兄弟』本編が本格的に始まる。 |
| 2026年(作中) | ヒビトが日本人初の月面着陸を達成 | ムッタも宇宙飛行士として宇宙へ飛び立つ。 |
| 2026年(現実) | 『宇宙兄弟』連載完結 | 約19年間続いた連載が幕を閉じる |

原作が完結した2026年がムッタがJAXAの宇宙飛行士になってヒビトが月面着陸した年になりました。
現実の世界では2026年時点では日本人の月面着陸はまだですが、近い将来実現することを願っています。

