本なら売るほど~小島青

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グレース
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年末年始の読み物として購入した1冊が「本なら売るほど」というコミックに出会いました。
わざわざコミックと書いたのも、私はこの本が小説だと思っていたからです。
本屋さんのことが書いてあるのかな?
この主人公は古書店のオーナーです。
6編のストーリーが展開します。
それぞれ読み切りです。

本好きに愛される隠れた名本
珠玉の6編をどうぞ

第1話 本を葬送おくする

「本を葬送する」と書いて「ほんをおくる」と読みます。
「葬送」を「おくる」と読むのですね。
これは古書店に大量に持ち込まれた本を更に厳選するために不良在庫となった売れなくなった本を処分することなのです。

グレース
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考えてみれば当然のことかもしれません。
古本は一般の人達もどんどん持ち込んでくるわけですから、相当な量になります。
全てに買い手が付く訳でもないので、そうせざるを得ないのです。
大きな段ボールにつまった本をリサイクルステーションに投げ込むシーンは、かなりの衝撃でした。

古本で持ち込まれる仕事は、故人の持ち物を処分する時に使われます。
私自身もそうですが、私自身が所有している大量の本も私にとっては価値のあるモノですが、私がいなくなってしまえば、同じように価値を感じてくれる人などいないでしょう。
本好きな家族や知人がいたとしても好みも違いますし、私と同じ思いで受け継いでくれる人はいません。

グレース
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だからこそ、本のコレクションは持ち主がいなくなってしまったら無用の長物になってしまうんですね。売りに来る人達は少しでも高く引き取ってほしい訳ですが、余程の希少本でもなければほとんどが査定も付きません。

この主人公はある不動産屋さんから依頼されます。
一戸建ての家の中には大量の本だけでなくおもちゃやレコードなどもとても綺麗に保存されていました。
故人の誠実な性格が伝わってくるようで、店主も生前に会いたかったと思う程です。
でも、これらの本は店主が限られた時間で査定出来たモノだけで他は処分されてしまいます。
本だけでなくおもちゃやレコードなどもたくさんあったので他の業者への査定も勧めますが、笑顔で「お願いしたのはおたくだけです」と言われてしまいます。

グレース
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これも仕方ないことですね。
持ち主の意向が遺志として遺されていないのですから、これ以上のことはできないのです。

ですが、最後にこの引き取った蔵書での古書店とのお客さんとのやり取りもなかなか素敵なものです。
どうぞ、皆さんも読んでみてください。

登場した本

「やし酒」とは「やし」から作ったお酒
パームワインのことです
こちらの作品はアフリカ文学です
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第2話 コーヒーにこんぺいとう

古書店に持ち込まれる大量の本はやはり「遺品」が多いのです。
人が一度手にしたものですから、書き込みなどもありますがたまに現金なども入っていて真面目な店主はそれを持ち主に返しに行きます。
その金額、5万円だったので先方も喜んでくれます。
このお金が入っていたのは寺田寅彦全集の第1巻。
荘厳な装丁の一冊でした。
届けてもらった奥さんは品のいい老女でした。
店主にコーヒーを出し、もてなします。
ここで、ご主人の思い出話と共に店主側からも奥さんが涙する話をします。

ただ、座って本を読んでいた御主人。
奥さんに座って特に何か会話をするわけでもなくて編み物でもしていた時が一番幸せだったというのです。
これだけでも素敵な話なのですが、何とこれは寺田寅彦の詠んだ歌だというのです。

好きなもの
イチゴ
珈琲

美人
懐手して宇宙見物

グレース
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なんと、亡くなったご主人は奥さんを美人と思っていて過ごしていたというのですね。
それを口にせずに、亡くなってから本を通じて思いを伝えた形になりました。
暖かな話です。

登場した本

教科書にも載った寺田寅彦の詩はこちらの本でも確認できます。
全集を読むのは大変なので「詩」からどうぞ。
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第3話 アヴェ・マリア

古本らしいお話で、「森茉莉」さんの本が出てきます。
「誰?」と思う方も多いでしょうね。
かの文豪・森鴎外の娘さんです。
店主は今で言うボーイズラブで退廃的で耽美な作風であると紹介します。
これを高校生の女の子に勧めるわけです。
この女の子、ちょっと店主が好きだったのかなと感じる話でもあります。

実はこの回には店主の前の彼女が子供を抱いてやってくるという本来ならば修羅場になりそうなシーンもあるのですが、そこは本好きの暖かな話です。
どんな話になったかは、ご一読を。

登場した本

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第4話 201号室入居者あり

今回、店主はあまり出てきません。
親戚から譲り受けた部屋に本棚作りをする人とその棚の材料を売るホームセンターで働いていた青年のお話です。
面白いことにこの二人はたまたま隣同士だったので、本棚作りを手伝うことになります。
二人で作ると一気に仕事が進みます。
其の3千冊にも及ぶ蔵書の量を見て青年は圧倒されるのですが、本棚の主も実は積読だったという話になります。
本を集めるのが好きで精読する事はほとんどないそうです。

グレース
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私自身、その気持ちも分からないでもないです。
本は出会いの部分があるので心に留まったその時に買っておかないと後でものすごく後悔する事もしばしばだからです。
ですから、私は「気になったら買う」ということをしています。
もちろん、予算にも限りがあるので、欲しくても買えない時も多々ありますが(笑)

奇妙な友情が出来た二人は今後も仲良くしていくのかなと思ったお話です。

本のうんちく話も展開します。
天面を裁断しているのは文春文庫やちくま文庫
裁断していないのは岩波文庫やハヤカワ文庫。
そして更には新潮社文庫のスピン(しおりのこと)が付いているということも。
本好きには嬉しい蘊蓄ですね。

あと、本棚を作る手伝いをした青年がドフトエスキーを買い求めたのが古書店です。
全三巻の「カラマーゾフの兄弟」なのですが、これが新潮文庫版。
日本語訳も難しくて難解なのです。
後に読みやすいと言われた亀山訳の方を私はお勧めします。
*カラマーゾフの兄弟はかなり暗い話なので。読まれる方はその辺も御留意頂くと良いかと思います。

登場した本

登場人物が「夏目漱石の千円札」で購入した夏目漱石の本がこちら
カラマーゾフの兄弟
作中では新潮社版が紹介されますが
文体が難しいので新訳の方をお勧めします。
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第5話 当世着倒気質とうせい きだおれ かたぎ

タイトルは「とうせい きだおれ かたぎ」と読みます。
「着倒れ」と言う言葉は聞きなれないかもしれませんね。

関西で言われる言葉なのですが
「大阪の食い倒れ。京都の着倒れ。神戸の履き倒れ」なんて言い方をします。
それぞれの地域の人が何に一番お金を使うかということなのです。
大阪の人は「食」京都の人は「着物」神戸の人は「靴」にそれぞれ身体を潰すくらいのお金を使うということです。
今で言うエスニックジョークのような感じがしますね。

つまり、このタイトルの意味は「着物」に拘ってお金を使いますよと言う意味に私は受け取っています。
着物が好きで自分流に着こなしているのに着物を習っているからとわざわざ直されたりする女の子。
ちょっと不愉快な思いをしているのにそこで出会ったのは病院でも着物を着ている老婦人でした。
この老婦人は八掛(着物の裏地)に髑髏を描いている酔狂な人物です。
更に、サングラスをかけて颯爽と去っていくのでした。
着物の着方は意外と自由だと学んだ女の子。
そんな彼女が古書店で選んだのは「半七捕物帳」でした。

登場した本

着物の女の子が購入した本。
なかなか渋いチョイスです
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第6話 さよなら、青木まり子

「青木まり子現象」ってご存じですか?
書店に長くいるとトイレに行きたくなってしまう現象のことです。
本が好きな人なら経験した人は多いと思います。
私は行きつけの書店ではその近くにトイレがあるので結構ありがたいです。
「青木まり子」さんという方の投稿から始まったので、そのまま「青木まり子現象」と言うのです。
彼女は「青木」と言う人と結婚したため今も「青木まり子」さんなのだとか。
(本当かな?それもロマンのある話ですね)

本編は十月堂の店主が古本屋を始める前の話になります。
同じく古書店を営んでいた老人が古書店を辞めるきっかけになった話です。
若い学生がこの古書店を良く訪れてその時にトイレがないかと聞いたときの答えが「青木まり子お断り」のビラです。
まあ、トイレはありません。と言う意味ですね。

彼は本に興味があったわけでもなく自分の卒業制作の仕入れ先に使っていただけでした。
その若い学生が造ったオブジェは老人から買い集めた本を積み上げたモノでした。
この絵面を見て私自身も怒りを覚えました。
酷い、酷すぎます。
かなりのショックを受けたのは老人も同じでそれが古書店を辞めることの後押しになってしまったようです。

グレース
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この老人と入れ替わるように古書店を始めたのが十月堂の店主。
つまり、この本の主人公と言うわけです。

登場した本

十月堂の店主がサラリーマン時代に買い求めた本
ブラッドベリの秀作
映画も話題になりました
カトリック教会の裏側を書いた秀作
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