「夜ドラ」あなたのブツが、ここに
「あなたのブツが、ここに」というのがこの夜ドラのタイトルです。
コロナ禍で大変な思いをする一般の人たちの涙と笑いを描いた作品です。
夜にテレビを付けていたら「ええ声」が聞こえてきました。
何と俳優として津田健次郎さんが出られているドラマでした。
観るきっかけになったのはそんな事です。
登場人物
山崎亜子 主人公・「やまざき」ではなくて濁らずに「やまさき」
シングルマザーでキャバクラ勤め。娘を一人で育てている。コロナでキャバクラだけでは食べていけなく宅配の仕事を始める。
山崎咲妃 亜子の娘。しっかり者で困った事があってもママには言い出せない。
山崎美里 亜子の母、咲妃の祖母。一人でお好み焼き屋さんを切り盛りしていたが、コロナで困った娘と孫を喜んで受け入れる。
芸人さん多数
海原はるか、 烏川耕一、ちよこ、山崎静代(南海キャンディーズ)、シルクなど多数出演。
第1週(1話から4話)
2020年10月
一人娘を抱えシングルマザーで奮闘する亜子の元にもコロナの影響は出てきました。
「給付金の申請をしてあげるから」とお客さんに言われ、暗証番号まで教えてしまい、なけなしの貯金を取られてしまいます。
警察にも「怪しいと思わなかったのですか?お年寄りが騙されるなら分かるけれど」と言われてしまいます。
家賃も払えなくなった亜子は尼崎の母を頼りにセキュリティ付きの高級マンションを出ます。
キャバクラの給料でかなり良い暮らしをしていた事がうかがえ、住んでいるところも家具・ファブリックなども高級なもので揃えられていました。そこから貯金残金54円の生活に転落してしまいます。
キャバクラのお客さんで少し羽振りのいい人がいました。
宅配の社長さんでした。
「時給4000円の人もいる」という言葉に心が動きます。
面接を受けるために自転車で爆走する亜子をマルカ運送の経理の時江さんが自転車で追い抜いていきます。後から観ると結構笑えるシーンです。
宅配の仕事を始めたものの、失敗ばかりです。決められた量の配達も出来ません。ルートは分からない。怒られてばかり。
宅配先のお客さんも無理を言う人も多く対応するのも心が折れます。
この段階で、配送先にかつては亜子が住んでいたような高級マンションも出てきます。作中で特に言及されていませんでしたが、亜子は複雑な気持ちでいたのではと思われます。
第2週(5話から8話)
仕事がうまく行かない事でトラブル続出。思うようにならず、「辞める」と宣言してしまう亜子。
引き続き、夜のキャバクラの仕事をしていたが、とうとう店自体を休業になってしまいます。
それでも他のキャバクラの面接を受け続ける亜子。
今度は年齢が仇になってなかなか雇ってもらえません。
背に腹はかえられず、宅配の制服をクリーニングして返すときに、もう一度雇ってほしいと頼みます。
一方で娘の咲妃が学校でいじめられている事を知ります。
心配させたくないばかりにママに言えなかった咲妃。
このいじめが、後々大きくなってしまいます。
宅配の仕事は悪い事ばかりではなく、いい出会いもたくさんあります。
そうしで仕事も慣れてきたときに、亜子が配達した高級ワインが割れていたとクレームが入ります。
亜子はお客さんが「わざと壊した」のだと思い、会社の人たちにもそう言いますが、それは違うのだと諭されます。
ベテランの宅配員、武田からはお客様にとって一つ一つの荷物には人生が掛かっていると怒りながら言われてしまいます。
そういう気持ちで運ばなければならないと。とても深い言葉です。
ベテラン宅配員、武田から亜子に言われた言葉です。
みんな生き残んのに必死なんや! 数の問題ちゃうぞ。 一個一個が切実なんや! その切実なもんが壊されたり潰されたりしたらどない思う? 誰がやった?関係あれへん。 誠心誠意謝罪すんのが筋ちゃうんか! 無事に届けるんが俺らプロの責任や! コロナのせいとかいう話ちゃう。 やり過ごせる相手ちゃう。 腹くくられへんのやったら辞めてくれ。 迷惑や。
その後、配達していく過程でステキなお客さんにも出会います。
亜子は自分に覚悟が足りなかった事を自覚していきます。
そして、夜のキャバクラの面接を辞めてフルタイムで宅配の仕事に就くことを決心します。
2週目までの感想
俳優陣には「ええ声」の津田健次郎さんがベテラン宅配員、武田を演じています。
大阪おなじみの芸人さんたちもなかなか良い味を出していて、苦しいコロナの時代を笑いと涙で乗り切ってくれます。
年代も明確で最初は2020年のコロナが始まった頃なので、マスクもウレタンマスクだったり、鼻は出るようだったりと「最初はそうだったなあ」と思う事が多かったです。
コロナを振り返る…というには少し早いかもしれませんが、思うところが多くて胸に迫るものがあります。
3週目(9話から12話)
主人公の亜子が業務にも慣れてきた頃、ちょっと気になるお客さんに出会います。
その子は中学生くらいの女の子、佐伯里奈ちゃん。
いつもカップラーメンなどを頼んでいて栄養状態が心配です。
平日の昼間にいつも在宅なのも気になります。
挨拶と少しばかりの世間話をするようになったある日、その里奈ちゃんは倒れてしまいます。
放ってもおけないのでそのまま病院に付き添います。
病院の診断も栄養失調などネグレクトを疑われるような診断だったのですが、親に連絡がいくことを嫌がります。
そういうわけにもいかないので何とか親と連絡を取ろうとするものの一向に連絡はとれない。
仕方なく、また家に連れて帰ります。
ネグレクトの疑いがあるので病院側は通報義務があると思うのですが、ここではなかったです。
やっと親と連絡が取れたのでしょう。
親本人が会社にやってきます。
ここで普通はお礼を言うのでしょうが、こういう人は「余計な事をして」と大クレームを入れます。
社長が土下座をする事態なり、社長は事務の時江さんに「児相の電話番号を調べて」と言います。
文句を言いに来た親はそれで帰る事になります。
時江さんは「社長の土下座、久しぶりに見たわ」と。
社長は謝罪の天才でこうやって上手に事を収める事が得意のようでした。
今度は娘の咲妃がいじめられている事を知る亜子。
いてもたまらず学校に行くと、娘の机や教科書に悪質ないたずら書きがある事を発見します。
主犯は大樹という男の子。
コロナの疑いが出た子に消毒スプレーをかけまくるような悪童です。
亜子はモンスターペアレントと化し、「誰や!咲妃をイジメた奴は!」と教室の教壇で喚きます。
子どもたちは驚きますが、咲妃は止めに入ります。
「これは罰なんや」
咲妃は仲良くなった愛美ちゃんに「マスクを取った顔を見せてほしい」と言われたのを最初は断っていました。
少し離れたところでならと、マスクを取って声を出して応じるとそれを見ていたおじいさんに厳しく注意されてしまいます。
それを大樹が見ていたのでイジメられたと言う事でした。
大樹のイジメは担任が「気が付きませんでした」というレベルではないと思いますが、若い女性担任だと言う事でなめられていたんだなと感じました。
4週目(13話から16話)
4週目の一番最初は大樹が泣きながら謝るシーンから始まります。
先生にも親にもこっぴどく怒られたのでしょう。
彼にとっても、そういう真剣に叱ってくれる親御さんで良かったなと思ったシーンでした。
落ち込んでいた咲妃も胸のつっかえが取れたようで元気になります。
咲妃のいじめ問題で早退した後の配達を変わってくれていたのはミネケンでした。
ミネケンは佐野晶哉さん(Aぇ! group/関西ジャニーズJr. )
そのお礼に亜子はミネケンを母のお好み焼きでもてなそうと母のお店で自分達の家でもある「お月さん」に招待します。
ミネケンは花束を持って登場。
家族全員と仲良くなって咲妃も「私もミネケン好きやで」とミネケンが帰った後で親子3人で話します。
かつて働いていたキャバクラ「バベル」の店長から連絡があります。
ナンバー1ホステスだった「ノア」ちゃんが自殺したとの事でした。
自殺の原因は分かりません。
ノアちゃんは稼ぎも良くて貯金もあったはずでした。
亜子は仲の良かった「しずく」ちゃんから長年はまっていたホストがいた事を聞きます。
ノアちゃんの家族は彼女がどうやって生きていたか幸せだったか聞きたがりますが、詳しい事は亜子にもしずくにも分かりません。
それでも「幸せだったと思います」という亜子に「幸せな人間が自殺なんてしないんだ」というノアちゃんのお父さん。
ノアちゃんの遺影が高校生の時の写真でした。
本名が「七海」というところから「海」で「ノア」と付けたのだろうと思われます。
たった1回の失敗で死を選んでしまったノア。
何度も失敗しても生きている亜子…。
亜子の母(ばあば)も寂しかったんだなと思わせる最後のカットでした。
ばあばは亜子を抱きしめます。
3週目、4週目の感想
コロナ禍で明らかになった問題が次々に出てきます。
ネグレクトの疑いがある子供。
我が子もうっかりマスクを取ったところをたまたま見つかって酷いイジメに遭います。
女性の自殺者もでました。
いつも、犠牲になるのは弱者です。
主人公、亜子の母も早くに夫に先立たれて娘を育ててきています。
気丈でいつも明るい亜子の母(ばあば)ですが、やはりちょっと寂しかったのかなと最後のカットで思いました。
とてもいいシーンでした。
第5週(17話から20話)
2021年7月。
東京オリンピックがやってきました。
「ホンマに同じ日本でやってるんかな?」というくらい別世界の話になっていました。
そんな中、マルカ運輸の社長・葛西はコロナ陽性に???
騒然とする従業員達、そこで皆が恐れる副社長がやってきます。
それは社長の別居中の奥さん。
高圧的で高身長のいかにも姉御肌のその人は先代の娘さんでした。
何と社長は婿養子だったんですね。
この副社長は南海キャンディーズのしずちゃんが演じられています。またこのしずちゃんが良い味を出しているんです。女優として演じるときは「山崎静代」という名義で出られています。またこの「山崎」の読み方も「やまざき」と濁らずに「やまさき」。何と主人公の「山崎亜子」と同じなんですね。狙ってやったのか偶然なのかは分かりませんが、気が付いたときは嬉しかったです。
別居中の社長、葛西は一人暮らしなのでしずちゃん副社長は亜子に必要なものを届けてくれるように頼みます。
副社長は「あいつに謝られると許してしまうねん」と。
そう、社長は謝罪の天才です。
一人コロナで自宅待機中の社長、亜子は必要なものをドアノブに下げるだけで帰ろうとしますが、社長が別居中の妻が来たと思い、必死に謝ります。
亜子はドア越しに名乗らずに頭を下げてその場を去ります。
今度はミネケンが子供を巻き込んだ事故を起こしてしまいます。
幸いにも子供はトラックを避けようとして少し転んだだけで大した怪我にはなりませんでした。
副社長とともに謝罪に訪れますが、先方の親はここぞとばかりに怒りをぶつけてきます。
大事に至らず、誠心誠意謝罪してそれに対する賠償もしても異常な怒りをぶつけて来る被害者の親。コロナで心がすさんでいる時期です。こうやって何か一つ人の落ち度があればとことん追求して人を陥れるというモンスタークレイマーが多発した時期でもありました。
大型免許を取ってトラックを運転する夢を持っていたミネケンの心は折れて辞めてしまいます。
娘の咲妃の元にやたら親し気な男性が近づいてきます。
咲妃とお友達の愛美にとってバドミントンの審判をしてくれる優しいおじさんだったのですが、この人が咲妃の実父で亜子の元夫でした。
控えめに言ってもおクズ様としか言えない人間なのですが、亜子もばあばも対処のしように困ります。
咲妃に対しては優しいおじさんで振る舞うものの、そのクズっぷりはとても許せる範疇ではありませんでした。
最終週(21話から24話)
21話
亜子の会社にまで押しかけて来る亜子の元夫。
ここでも一見、いい顔をします。
亜子が来る前に差し入れを入れて良い人ぶります。
ですが、亜子が帰ってきてその場から元夫を連れ出します。
その問答を聞いていた仲間たちは助け船を出し、元夫に帰ってもらう事に成功しました。
元夫の要求は「金」でした。
貸さなければ、自分が実の父であると言う事を娘に言うと脅しまで掛けてきました。
その場を収めてくれた人たちに感謝し、しずちゃん副社長に至っては「しばいたったらエエのに」とシャドーボクシングをしながら亜子に微笑みかけます。
しずちゃんはボクサーでもあるのでこのシーンがあったかなと思います。力強い、良い上司です。
亜子は咲妃に本当の事を話します。
一旦は受け入れた咲妃でしたが、今まで思いもしなかった実父がそこにいたのです。
咲妃には酷い事をされた思いや記憶がありません。
ただ、「父がいた」という思いもしなかった現実に思慕や憧れがなかったとは言いきれないのです。
思わず、母・亜子に当たってしまう咲妃。
咲妃は実父のクズっぷりを知りません。この時点において娘の自分の事でさえ「金」を出させる脅しに使っていると言う事さえ。
22話
亜子は落ち込んで出勤もままならずにいました。
ばあばは孫にきちんと言うのも勇気がいるし偉い事だと思うと話をします。
それをそっと聞く咲妃。
そんな中、亜子が会社に行っていない事を二人は知ります。
知らせてくれたのは一念発起して帰ってきたミネケンでした。
咲妃もやっぱりママが好きなんですよね。ママがピンチと知って一番最初に心配してしまうんです。
23話
元夫との対決!
それでも金の無心しかしないおクズ様。
貸してくれなきゃ自分が父親だと娘に言うと更に脅してきます。
貸してくれなんて嘘。最初から返す気なんてありません。
亜子は娘の咲妃に全部言ったと告げます。
それじゃ、もう良いと立ち去ろうとします。
ですが、亜子は咲妃の日記には見知らぬ人が審判をしてくれた事が楽しかったと毎日のように書いていたと教えます。
さすがのおクズ様の元夫も思う所があって、咲妃からもらった飴をじっと見つめながら去ります。
でも、それで改心することもやり直そうともなりませんでした。
そんなおクズ様にも「ありがとう」と言えちゃう亜子。
娘が大きくなって会いたいと言って来たら会ってあげてと言えちゃう亜子。
離婚して子供を一人で育てて戦ってきた亜子と自分の都合で逃げ回っていた元夫の差がここで出たように思いました。
娘の咲妃も怒りをぶつけるところが分からなかったと、ママと仲直りです。
荷物を一日で150個も配れるようになっていた亜子はマルカ運輸にとってなくてはならない存在になります。
そこへ、コロナ陽性で隔離期間を終えた社長が帰ってきます。
たまたま皆が盛り上がってしまっているところに出くわしてしまって拗ねてしまう社長。
社長が帰ってきた以上、副社長である聖子さん(しずちゃん)は去ろうとします。
でも、社長が引き止めます。
隔離期間で一人でいた時、寂しくてならなかった事、すべてが敵に思えた事、差し入れが嬉しかった事。(差し入れは亜子が持って行ったんですけれどね。)
寄りを戻してほしいと土下座します。
さすが、謝罪の天才の社長です。
まさかの元さやで社長と副社長は抱き合ってよりを戻すことになります。
信夫くん!聖子ちゃん!(これには笑いました)
最終回。
今まで関わった人たちが少しずつ幸せになっていきます。
オジサンがオバサンになりました(女装って感じかな?)
ネグレクトで学校に行けなかった女の子が通学しているのに遭遇します。
コロナフィレルで徘徊していた方も娘さんが来てくれて少し具合は良い様子。
お好み焼きパーティをマルカ運送でしたりします。
ミネケンは「咲妃」と呼び捨てにするくらいの間柄になっていきます。
そんな咲妃も中学生に。
亜子も後輩の指導を任されるくらいになってきました。
うまくやるコツは毎日やる事と後輩に教えます。
アイスの当たりが出たら家族旅行に一緒に連れて行ってもらえると言われたミネケン。
とうとう当たりが出ます!
さて、連れて行ってもらえたかどうかは分かりませんでしたが、いいエンディングでした。
感想!
このドラマが放送された2022年8月末から9月は日本にとってまだコロナを振り返るという時期にはなっていません。
まだまだマスクを付けて消毒をしてと言う日々が続いています。
正体不明のコロナが蔓延しだした頃、一気に生活が乱れたのはこのドラマの中の人たちだけではありませんでした。
最初は何が何だか分からなった事、職を失ったり、騙されたり、身近な人が亡くなってしまったり…。
主人公の亜子も右往左往しながら、このままではいけないと思いながら、空回りする連続です。
マスクも最初はウレタンマスクでピンクのかわいらしいものを付けています。
爪もキャバクラに復帰しようと思っていた時期は派手なネイルをしていました。
ですが、不織布マスクになり、顔の半分を覆うようにマスクを付けるようになりました。
あんなに派手だった爪もネイル一つしないでメイクもナチュラルメイクになるのです。
亜子の成長とコロナとの戦いを思い起こす人は多かったと思います。
途中で、女性の貧困問題や自殺なども経験します。
ネグレクトで置き去りにされる子供にも遭遇しました。
宅配のお客さんでいつも笑顔で対応してくれた人を徘徊で見つける事もありました。
本来なら宅配の業務ではないものの、それを放っておけない亜子。
それで宅配の業務に差し障りが出てしまいますが、責めずにフォローしてくれるマルカ運送の人たち。
コロナ陽性になって隔離期間に一人ぼっちで過ごしたら寂しくてたまらず人の温かさに身に沁みたり…と。
似たような経験をした人は多いだろうと思います。
私ももちろんその一人です。
夜ドラの15分の24話の作品でしたが、皆さんにも観ていただきたいなと思います。
いたずらに批判するのではなくて、「こんな事あったなあ」くらいの気持ちで観ていただけたらと。
どんなに大変な時期でも「人」だなと思いました。
NHKオンデマンドでも観る事が出来ますのでお時間のある方は是非。