
裁判の結果を「執行する」とは、いったいどういうことなのでしょうか。
無戸籍や外国人犯罪を軸に、複数のテーマが一気に錯綜する、非常に情報量の多い回となりました。
分かりにくい法律用語や制度の解説を少ししてから、感想へと進めていきたいと思います。

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書証主義と人証主義とは?

第5回のタイトルになった「書証主義と人証主義」とは何でしょう?
何を主体にして裁判の判決が下されるかです。
| 用語 | 超簡単に言うと | 結果 |
|---|---|---|
| 書証主義 | 書類・記録が一番大事 | 処理速度が速い |
| 人証主義 | 人の証言が一番大事 | 時間がかかる |
ドラマでは処理件数の問題が最初に問われます。
とても丁寧に一件一件を判断する主人公の安堂裁判官は処理速度が遅い事が前回でも問題になっていました。
裁判官の力量は処理件数ではかられる部分も大きいため、裁判官の処理件数は度々問題になります。
ただし、だからと言って適当に出来るわけもありません。
最終的には証拠がないモノに判決は下せません。

裁判は感情ではなく証拠で動く

執行官とは?
冒頭で裁判官の判決を実行する執行官が出てきます。
その名の通り、判決や決定した事を現実の結果に導き出す役目です。
裁判官・書記官・執行官の違い

裁判は裁判官だけでは遂行できません。
執行官の他に書記官もいます。
役目は以下の感じです。
| 職種 | 役割 |
|---|---|
| 裁判官 | 判断する(判決を出す) |
| 裁判所書記官 | 記録・事務処理 |
| 執行官 | 実際に現場で実行する |
執行官の主な業務

執行官の仕事は現場を押さえるわけですから、実力行使に及ぶ場合も出てきます。
警察などが同行することもあります。
| 業務内容 | 具体例 | 分かりやすい説明 |
|---|---|---|
| 強制執行 | 差押え、明渡し | 財産や不動産を強制的に回収 |
| 不動産明渡し | 立ち退き執行 | 退去命令を現場で実行 |
| 動産執行 | 家財差押え | 家の中の財産を差押え |
| 不動産執行 | 競売 | 土地・建物を差押え → 売却 |
| 現況調査 | 現地確認 | 人が住んでいるか等の調査 |
| 送達補助 | 書類手渡し | 重要書類の直接交付 |
| 証拠保全 | 状況保存 | 壊される前に記録 |
執行官の権限(かなり強い)

裁判の判決をもって執行するわけなのでかなりの権限を持っています。
ドラマ内でもドアを開けなかった住人に対してドアのカギを壊して入るシーンがありますが、これも執行官に与えられている権限の一つです。
| 権限 | 内容 |
|---|---|
| 立入権 | 他人の家・会社へ立ち入り可 |
| 開錠権 | 鍵を壊して入室可能 |
| 差押権 | 財産を強制的に確保 |
| 排除権 | 強制退去させる |
※ 警察官と連携して行うケースも多いです。

無戸籍とは?

ドラマの中では無戸籍の子供が出てきます。
混同されがちですが無国籍ではありません。
無戸籍(むこせき)とは、日本国籍を持っているにもかかわらず、戸籍に記載されていない状態を指します。
👉「国籍がない」のではなく
👉 「戸籍に載っていない」状態
なぜ無戸籍になるのか?【主な原因】

無戸籍になってしまう人はどんな原因でそうなってしまうのでしょう?
意外に、身近な問題でもありそうです。
| 原因 | 具体例 |
|---|---|
| 離婚・再婚トラブル | 元夫の戸籍に入るのを避けた |
| DV・家庭内暴力 | 加害者と関わりたくない |
| 不倫・婚外子 | 戸籍に記載したくない |
| 家族関係断絶 | 親が出生届を出さない |
| 制度理解不足 | 届出義務を知らない |
無戸籍の人が直面する現実

ドラマの中でも、無戸籍の子供が学校に行けていないことが問題になっていました。
他にどんな問題が出てくるでしょう?
| 分野 | 困ること |
|---|---|
| 教育 | 就学拒否・進学困難 |
| 医療 | 保険証が作れない |
| 就労 | 就職不可・非正規のみ |
| 住居 | 賃貸契約不可 |
| 金融 | 口座開設不可 |
| 行政 | ほぼ全サービス利用不可 |

以上のように、普段の生活で困ることばかりです。
👉 無戸籍は「本人の責任」では一切ない
無戸籍の解消方法

ドラマでも無戸籍の子供が戸籍を得てから裁判を受けるという流れになりました。
犯罪が絡まなくても自分自身で戸籍を得ることが出来ます。
下記のリンク先は法務局のモノなので安心して参照してください。
実際に無戸籍の方がいらっしゃったら、こちらに詳しく書いています。
無戸籍の方の戸籍をつくるための手引書 – 法務局
流れを説明すると以下のようになります。
家庭裁判所 → 調査 → 就籍許可 → 戸籍作成

家庭裁判所に行くまでがハードルが高いと思います。
まずは法テラスや市町村の戸籍窓口で相談するのが良いと思います。

感想

無戸籍、ヤングケアラー、介護、外国人。
問題がてんこ盛りの回になりました。
結論から言うと、ベトナム人のグエンさん。
無戸籍で教育も受けていない少女に、自分も拙い日本語を必死で教える良い人でした。
しかし、公務執行妨害をしてしまったため、服役後、強制送還となってしまいます。

ちょっと重いテーマになりました。
裁判官の判決をもって、執行官が当事者の家に踏み込みます。
ここで住民の抵抗により、怪我をしてしまう執行官。
こうなってしまった原因として、新人裁判官が裁判の処理件数が少ないことを問題視し、とにかく書面だけで安易に判断してしまった点が指摘されます。
ですが、この新人裁判官は「自分は3年目だ」と言い放ち、謝罪どころか「執行官の責任だ」と責任転嫁をします。
3年目の落合裁判官は、とにかく出世欲の強い女性です。
そのため、自分の責任にはしたくないわけです。
出世欲の強い人間が、責任を他人に押し付ける最低の姿が描かれています。
自分の判断のせいで怪我をした執行官の病院に駆けつけるものの、謝罪はなく、お見舞いの言葉すらありません。
主人公の安堂裁判官は発達障害であることを悩んでいますが、むしろ、こういう人間のほうがよほど問題があると感じました。

ですが、そんな鉄壁の落合裁判官も人と触れ合ううちに少しずつ変わっていきます。
最終的に、この新人3年目のエリート裁判官である落合裁判官は、書面や書類だけで判断する「書証主義」ではなく、少女本人の話を直接聞く「人証主義」に切り替えます。
その結果、少女は無戸籍で、祖母の介護を母親にさせられ、教育も受けていないという、あまりにも過酷な状況に置かれていたことが分かります。
さらに、突発的な出来事とはいえ、母親を死に至らしめてしまったかもしれないという重い事実も明らかになります。
命を絶とうとしていたとき、グエンさんに止められ、世話になります。
少女は「初めてお腹いっぱい食べられて、ぐっすり眠れた」と言います。
日本で生まれ育った少女は、無責任な親のせいで酷い生活を強いられていました。
それを救ったのは、外国人のグエンさんだったのです。
少女は戸籍を取ることができるようになりましたが、グエンさんは執行猶予なしで1年6か月服役した後、強制送還されることが決定しました。

色んな問題が一気に描かれた回になりましたが、考えさせられる話でした。
皆さんはどう思われましたか?

📅放送一覧(全8回)

📺 登場人物(ドラマ版)& 役者
🧑⚖️ 主要キャスト(裁判所・法廷関係)
| 登場人物(役名) | 役者(キャスト) | 役割・備考 |
|---|---|---|
| 安堂清春(あんどう きよはる) | 松山ケンイチ | 裁判官・特例判事補(主人公) |
| 小野崎乃亜(おのざき のあ) | 鳴海唯 | 弁護士 |
| 落合知佳(おちあい ちか) | 恒松祐里 | 判事補(裁判所職員) |
| 津村綾乃(つむら あやの) | 市川実日子 | 執行官 |
| 門倉茂(かどくら しげる) | 遠藤憲一 | 部長判事(安堂の上司) |
| 八雲恭子(やくも きょうこ) | 山田真歩 | 主任書記官 |
| 荻原朝陽(おぎわら あさひ) | 葉山奨之 | 書記官 |
| 古川真司(ふるかわ しんじ) | 山崎樹範 | 検察官(検察側) |
| 結城英俊(ゆうき ひでとし) | 小木茂光 | 最高検察庁・次長検事 |
👪 周囲の人物(家族・関係者)
| 登場人物 | 役者 | 関係 |
|---|---|---|
| 安堂朋子(あんどう ともこ) | 入山法子 | 安堂清春の母 |
| 山路薫子(やまじ かおるこ) | 和久井映見 | 精神科医・安堂の診断医・支援者 |
⚖️ その他の登場人物
| 登場人物 | 役者 | 備考 |
|---|---|---|
| 穂積英子 | 山本未來 | 人権派弁護士 |
| 吉沢亜紀 | 齋藤飛鳥 | 再審を求める関係者 |

📚原作リンク
| タイトル | 主要テーマ | 電子書籍 |
|---|---|---|
| テミスの不確かな法廷 | 発達障害を抱える裁判官の成長と人間ドラマ | あり |
| テミスの不確かな法廷 再審の証人 | 冤罪再審裁判と衝撃の展開 | あり |


