100分de名著~「千の顔をもつ英雄」~ジョーゼフ・キャンベル

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「千の顔をもつ英雄」はたくさんの神話を分析した「物語」の抜本的な構造を明確にした画期的な本です。
また、私の個人的な出会いは精神医学に引用されていることでした。
物語だけでなくどこに行っても変わらない人間関係や人の営みにも応用できる本です。
各回の感想などを書いていきます。
興味のある部分を目次からジャンプできます。

名著141「千の顔をもつ英雄」ジョーゼフ・キャンベル - 100分de名著
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映画「スター・ウォーズ」「ディズニー・アニメ」の元ネタして使われ、ジョージ・ルーカスを始め、多くのクリエイター、映画製作者、脚本家たちに圧倒的な影響を与え続けている名著があります。ジョーゼフ・キャンベル「千の顔をもつ英雄」(1949)。世界中の神話を調査・研究し、その中に、どの神話にも共通する構造があることを明らかにした神話学の名著です。著者のジョーゼフ・キャンベル(1904-1987)によれば、私たち現代人にとっても、神話は全く意味を失っていないといいます。その言葉の真意とは何なのか? そして私たち現代人にとって神話はどんな意味をもちうるのか? 「千の顔をもつ英雄」を手掛かりに、その深いメッセージに迫っていきます。

キャンベルは、世界中の神話には、「出立→イニシエーション→帰還」という共通構造が見出されるといいます。主人公の英雄は、何者かの召命を受け、異世界への冒険の旅へと旅立ちます。異世界で、英雄はさまざまな試練に直面しながらも、それらを乗り越え、大いなる秘宝や自分にとってかけがえのないパートナーを得ます。最後に英雄は、自らが得たものを携え、さまざまな障害を振り払いながら現実世界に帰還。その世界に豊かな実りや変化をもたらすのです。こうした「行きて帰りし物語」は、神話に共通している構造というだけではありません。私たち人間が人生において精神的な成長を遂げるとき、ほぼ同じプロセスを経ます。いわば、その成長段階を確認したり、活性化したりするために、人類は「神話の知恵」を利用してきたというのです。

われわれ現代人は、そのような「神話」を迷信として排除し続け、その意味を見失ってしまいました。しかし、キャンベルは、人間の精神の動き、人生においての人格の変容の仕方は、古来から全く変わっていないといます。むしろ、新しい形で、「神話的思考」を取り戻すことが、個人や社会に大きな豊かさをもたらしていくことにつながるというのです。

番組では、自らも企業向けワークショップで「英雄の旅」を活用している戦略デザイナーの佐宗邦威さんを指南役として招き、神話学の名著「千の顔をもつ英雄」を分り易く解説。キャンベルの思想を現代社会につなげて解釈するとともに、それを元にして、私たち現代人が「神話の知恵」をどう活かしていくかを探っていきます。

【MC】伊集院光/安部みちこアナウンサー

https://www.nhk.jp/p/meicho/ts/XZGWLG117Y/blog/bl/p8kQkA4Pow/bp/pr5Q69BEWr/

第1回 神話の基本構造・行きて帰りし物語

キャンベル“千の顔をもつ英雄” (1)神話の基本構造・行きて帰りし物語 - 100分de名著
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キャンベル“千の顔をもつ英雄” (1)神話の基本構造・行きて帰りし物語
初回放送日:2024年7月1日

世界中の神話には「出立→試練→帰還」という共通構造が見出される。なぜ神話はこうした普遍的構造もつのか。それは、私たちの精神の成長も全く同じプロセスを経るからだ。

神話の中の英雄は何者かの召命を受け異世界への冒険の旅へと旅立つ。異世界で英雄はさまざまな試練に直面しながらも、それらを乗り越え大いなる秘宝を得る。最後に英雄は、自らが得たものを携え、さまざまな障害を振り払いながら、現実世界に帰還。その世界に豊かな実りや変化をもたらす。こうしたプロセスが私たちの人生のプロセスと見事に重なり合うという。第一回は私たちは「神話の知恵」から何を受け取ればよいかを考える。

https://www.nhk.jp/p/meicho/ts/XZGWLG117Y/episode/te/N3P8V27MGP/

感想

世界中のお話を読んでいると、「国は違えど、同じようなテーマの話が多いな」という印象を持つ人は多いと思います。
その答えに迫ったと言える今回の名著です。
まず、この名著が影響を与えたのはハリウッドや映画業界である事が紹介されます。
誰もが知るであろう「スターウォーズ」もこの「千の顔をもつ英雄」がなければその誕生はなかったと監督のジョージ・ルーカス自身が言うくらいです。
スターウォーズも宇宙の神話を目指したSF映画と言って良いかもしれません。

「英雄の旅の構造」
神話の基本というかプロットは同じである事が「千の顔をもつ英雄」のキャンベルによって明らかにされます。
英雄は「出発・旅立ち」をし「試練」に出会い、それを克服して「帰還」する。
この方法が一貫しているというのです。
なるほど、その通りです。
番組内ではこの筋書きに「桃太郎」をイメージした伊集院さんでしたが、まさに古今東西、まさに日本でもそういう話はあるという事です。

私自身は「葬送のフリーレン」を思い出しました。
ファンタジーや神話という分野は結構似ているという事なのです。

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まさかの基本の基本が全世界共通というのも興味深い話でした。

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第2回 出立

キャンベル“千の顔をもつ英雄” (2)出立 - 100分de名著
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キャンベル“千の顔をもつ英雄” (2)出立
初回放送日:2024年7月8日

神話には必ず「出立」という段階がある。例えばブッダの物語では、最初に「生老病死」を深く感じさせる出会いが生じる。これが出立のきっかけとなるのだ。

若き釈迦族の王子は、「生老病死」を象徴する存在との出会いに心を揺さぶられ、かつてない旅へとおもむく決意をする。この「召命」といわれるプロセスは、私たちも何か新しいことにチャレンジするとき、そのきっかけをつかむための大きなヒントをもたらすという。第二回は、私たちが現代社会において、新しい挑戦のきっかけやタイミングをどうのようにつかんでいったらよいかを神話に学んでいく。

https://www.nhk.jp/p/meicho/ts/XZGWLG117Y/episode/te/XXNZXLJWKG/

感想

「旅立ち」のきっかけとなったお話になりました。
興味深いのはお釈迦様と言われるようになったブッタの旅立ちのきっかけです。
ブッタはシッダルータという名前の裕福な王子さまだった事は意外に知られていないと思います。
そんな何一つ不自由がなかった彼が旅立つきっかけになったのは外の世界を少しずつ見たからです。
城の外には「老人」「病人」「死人」がいて4度目の外出でそのまま旅に出ます。
旅のきっかけは安穏とした生活。
つまり「退屈」していた事からの脱却でもあったというのです。

ブッタの旅立ちはそれこそ、出家や多くの人を救うという事に繋がっているわけですから壮大な事になっていくのですが、この切っ掛けも最初に「旅」に出るという事がないと始まらないのです。

旅・冒険の一歩を踏み出したら、助力者・守護者・メンターと言われる師に出会います。
ここで紹介されるのはアメリカの先住民の「蜘蛛婆さん」と言われる人です。
「婆さん」と言われるだけあって「老女」です。
そんな蜘蛛婆さんは年を重ねた事で多くの知識や経験値を持っています。
またその知識を迷う人や若い人たちに授けて行きます。

メンターと統一した方が分かりやすいかもしれません。
スターウォーズならヨーダ。
スラムダンクなら安西先生。
もしかしたら、近所の方かもしれない。

年長者がアドバイスをするというパターンは全世界に共通している普遍的な事象であるのかもしれません。
チャレンジする人がいて、その人を応援したいという人がメンターになっていくというのかなと思います。

冒険譚や神話だとチャレンジャーは常に成功者で偉業をなした人かもしれません。
でも、自分たちに置き換えてみると、一般人であってもちょっとした悩みを解決してくれるのはちょっとした知人です。
現実の世界はそのアドバイスをくれるのは常に年長者とは限りません。
ですが、そのちょっと関係を持ったその人が自分の悩みや人生の指針を決める事は意外にあるのかなと思いました。

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メンターに出会うにしても自分自身が第一歩を踏み出してからという事を痛感しました。
まず、冒険に出ないとメンターにも出会えないのです。

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第3回 イニシエーション

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イニシエーションとは試練。
通過儀礼の事です。
ここでは英雄たちが立ち向かっていく試練を読み解いていきます。

キャンベル“千の顔をもつ英雄” (3)イニシエーション - 100分de名著
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キャンベル“千の顔をもつ英雄” (3)イニシエーション
初回放送日:2024年7月15日

英雄の冒険では、異世界に飛び込んだ後さまざまな試練に翻弄される姿が描かれる。その意味を読み解いていくと、自分の成長にとってその試練に深い意味があることがわかる。

神話で「龍や怪物との対決」や「敵対勢力がしかけたわな」として描かれる「試練」は、現代人にとってどのような意味があるのか? それを乗り越えるためにどんな知恵が必要なのか? 第三回は、神話に描かれる「試練」の深い意味を読み解きながら、私たち現代人は、自らに降りかかった困難や壁にどう臨んでいったらよいのか、その際ののぞましい精神のあり方とはどんなものかを探っていく。

https://www.nhk.jp/p/meicho/ts/XZGWLG117Y/episode/te/1429P6596N/

感想

英雄たちは旅に出て故郷に帰るまでが物語です。
第3回はどんな英雄も出会ってしまう「試練」について考えています。
キャンベルの考えは真の英雄になるために「試練」は必要だと言います。

ですが、英雄たちの「試練」は並大抵のものではありません。
怪物と戦い、魔法と戦い、戦争で戦います。
何の試練もなくてすんなり英雄になる物語はありません。

試練の末に得るものの特徴として「お姫様と結婚」や「家族との和解」などがありました。
最終的に「めでたし。めでたし」となる事が多くのお話で語られる事です。

試練の特性として「外敵」なものと「内的」なものの二つがあげられます。
外的なのは実際に物理的に戦う事で
内的なのは自分自身の心と戦う事です。
この双方に勝たなければ未来は見えてきません。

どんな冒険もののも物語も「試練」は付き物です。
それは空想の物語ですが、やはり一般の私たちにとっても何かをするためには「試練」が必ずあります。

キャンベルの言葉でも「苦しみがない人生はない」という着地点に行きます。
生きている以上、どんな人にも「苦しみ」はあるものでそれを乗り越えるのも私たちは冒険なのかもしれません。

第4回 帰還

キャンベル“千の顔をもつ英雄” (4)帰還 - 100分de名著
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キャンベル“千の顔をもつ英雄” (4)帰還
初回放送日:2024年7月22日

神話のゴール地点は、英雄が元の世界へ帰還するシーンである。試練を通して成長を遂げた英雄は、元の世界に帰還し、獲得した秘宝などによって大きな恵みをもたらすのだ。

帰還したオデュッセウスが不思議な能力で悪逆なとりまきたちを一掃し、豊かな王国を築いた例からもわかる通り、元の社会には、英雄によって再び活力がもたらされる。事業が実を結ぶには何が必要か、人生のある段階をより豊かに彩るには何が必要かについての知恵が神話にはあふれている。第四回は、私たちが自らの人生を変えたり、社会に変革をもたらすためには何が必要なのか、そのときに必要な努力とは何かを、神話から学ぶ。

感想

行きて帰りし物語。
いよいよ英雄の帰還です。
ですが、これがハッピーエンドとは限らない。
面白いのはこの「行きて帰りし物語」が1度とは限らないのです。
むしろ、また違う問題に巡り合ってしまい、更に旅立つという事が起こるというのです。
つまり、1回で完結でなくて何度もぐるぐる回る。
「円」ではなくて「螺旋」(らせん)のようにぐるぐる回るのです。
これは、面白いですね。
一度は故郷に錦を飾る事があっても違う難題が持ち上がるという事は世の中の常だというのです。

物語は「めでたしめでたし」で終わるけれど、その物語の人物でさえ、その次の未来はあるのです。
これを具現化したもので星新一の「未来いそっぷ」を思い出しました。
結構有名な寓話の「その後」を書いたものです。
「シンデレラ」のその後ってどうだと思います?
王子さまと結婚したシンデレラは息子の女性の趣味で困り果てます。
「アリとキリギリス」は?「ウサギとカメ」は?
あの後の話って面白いですよ。

伊集院さん、阿部さんの経験談も楽しかったです。
自分自身が病気をしたときに「自分がいなくても世間は回る」という事が分かって、開き直れた話や、だからこそ戻ってこれたななんてお話も興味深いモノでした。
「自分がいなくても良い」というネガティブなモノでなくて、
「自分がいなくても大丈夫、じゃあ、もうちょっと休んで英気を養おう」というポジティブな思いとでは後々が随分変わってくるものだと思います。

最後のキャンベルがこれからのテーマになる物語で「地球」という単位で考えるようになるという話もそれこそ「スター・ウォーズ」を予見していてそれも楽しかったですね。

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私自身は精神医学という観点でこの著書に出会いましたが、エンタメ主軸で物語の流れがよく分かって楽しかったです。
実は私、この著作、アーサー・ミラーだと思っていたのです。
今回、ロバート・キャンベルだと分かって良かったです。
皆さんも一緒に読んでみましょう。
自分の物語は自分で責任を持つというのは当然かもしれませんが、楽しんでその行程を歩んでいきましょう。