2023年9月より名探偵ポワロの最終シーズンの再放送が始まりました。
イギリス本国では2013年、日本では2014年が初回放送です。
名探偵ポワロ最終シーズン(第13シリーズ)
アガサ・クリスティ原作の名探偵ポワロシリーズ。
70作品で映像化が終了しています。
何と最終回で描かれるのは「ポワロの死」なのです。
クリスティはポワロシリーズの後にポワロが別の創作者によって違う続きを書かれる事が無いように自分で名探偵の最期を描いて自分自身も天国へ旅立ちました。
象は忘れない
タイトルの「象は忘れない」というのは「動物の象」の事です。
「象の記憶力」がとても良いにインスピレーションを受けたタイトルです。
日本語吹き替えでは熊倉一雄さんがポワロを演じられています。
この最終シーズンの第1話はポワロの掠れた声が印象的です。
ポワロが病気の設定かと思いましたが、この声を充てられた時点で熊倉さんは87歳。
何とポワロの最終回を撮り終わった翌年に天国へ旅立ったのです。
ポワロの声優の熊倉一雄さんは体調も悪かったのではないかと思います。
最終回まで撮りきった素晴らしさに感銘を受けます。
日本語版のポワロの吹き替えは熊倉さん以外考えられませんでしたから
内容(ドラマに準拠します)
過去の事件の真相を知りたいと言う事で依頼されるのは五匹の子豚とよく似ています。
ですが、今回は更に殺人事件が起きます。
過去の事件はある将軍夫妻の心中事件。
どちらが先に相手を殺したかを知りたいという依頼でした。
依頼人は養子にした息子の結婚相手の親がこの心中事件を起こした当事者だったからです。
それを聞いた息子の結婚相手は最初は怒るもののやはり真相を知りたいと言う事から捜索は開始されます。
真相は心中していたと思っていた夫婦の妻は「双子」で夫の愛は結婚前も結婚後も移り変わっていたのです。
嫉妬にかられ双子の一人はもう一人を死に追いやります。
そして、それを双子の姉妹の夫は怒って殺し自殺します。
亡くなったのは夫婦と妹の3人です。
世間では夫婦が心中事件を起こしたように思ったのは双子が入れ替わっていたからです。
何ともややこしい話です。
そして、新たに起こった殺人事件は双子の妹の娘が犯人でした。
犯人が分かったうえでもう一度見ると良くねられている事が分かると思います。
この原作はクリスティ自身が最後に書いた作品だと言われているそうです。
(出版年は、ポワロの死の「カーテン」が最後ですが、執筆順は前後するようです)
自分で書いていてもややこしかったので図解を書いてみました。
これを全部わかっても難しいです。
再読のお供にどうぞ。
ビッグ・フォー(ビッグ4)
ビッグ4
*タイトルは原作では「ビッグ4」ドラマタイトルでは「ビッグ・フォー」となっています。
内容(ドラマに準拠します)
ポワロの作品としては初期の作品だそうなのですが、BBCのドラマ化としては最終シーズンの2話目となりました。
観てみると分かるのですが、殺人事件よりも国際スパイの国家関係が描かれ、どちらかというとアジアは悪いというバイアスの下に事件が進む感じがしました。
(現実的には中国を「悪」と描いているなと思うのですが、○○人だから悪いという感覚はあんまり好きではありません)
ドラマの時系列では最終話から数えた方が早い話数にあるので、ポワロの時系列もドラマに従うと引退直前のポワロで、懐かしい人たちが出て来ることになります。
この懐かしい人というのが「ヘイスティングス」「ミス・レモン」「ジャップ警視監(警部から昇進)」の3人です。
(原作未読の私はこの3人とポワロを合わせて「ビッグ・フォー」かと思ったくらいです)
ヘイスティングと言えばポワロの相棒です。
「ホームズとワトソン」と「ポワロとヘイスティングス」と言われるくらいの名コンビなのですが、実のところヘイスティングスは全編に出てくるわけではないのです。
ドラマ・シリーズだけを考えても第8シーズン第2話(通算49話)以来の出演です。
(2001年6月2日英国初放送)
この「ビッグ・フォー」は第13シーズン第2話8(通算67話)です。
(2013年10月23日英国初放送)
放送日だけを観てみれば12年ぶりの再登場と言う事になります。
そして、脚本にも注目です。
脚本家はBBCドラマの現代版ホームズ「シャーロック」でマイクロフトを演じ製作総指揮をしたマーク・ゲイティスです。
何とマイクロフトが脚本化しました!(笑)
国際的な犯罪と多くの殺人を犯しましたが、その真相は犯人が好意を寄せた女性の愛を得たいためでした。
ス、ストーカーやん?
戦争が起こるかというような大犯罪を犯した犯人でしたが、ポワロの活躍により解決に向かいます。
「ビッグ4」というくらいですので主犯は4人いましたが、そのうち3人は主犯に利用されていたのです。
とは言え、残りも3人も大概悪い事はしています。
この作品をクリスティ自身が発表したのが1927年。
第二次世界大戦がはじまる前です。
この時期の時代の空気がこうだったのかもしれません。
*女優にモンローという名前の女性が出てきますが、これもマリリン・モンローが出る前です。
原作をこれから読まれる方と再読のお供に図解を書きました。
はっきり言って登場人物が多いうえに複雑なのでこれだけでは何のことか分からないと思いますが、メインで起こった事はこういう事です。
死者のあやまち
クリスティの48作目の作品。
BBCのポワロシリーズでは最終シーズンの3分け
1956年の発表。
原題は“Dead Man’s Folly”
「死者のあやまち」と翻訳されています。
“Dead Man”は「死んだ男」
“Folly”は「過ち」という意味と「華美な建築物」という二つの意味が掛け合わされています。
日本語に翻訳する時にこの微妙なバランスを表現するのは難しいですね。
クリスティは言葉遊びが多いので、言葉に込められた【意味】を考える事で事件の深奥やクリスティの伝えたいことをより知る事になるきっかけになると思います。
ヘラクレスの難業
最終話の一つ前のお話となりましたが、このお話の収録が最後になったそうです。
理由は最終話の「カーテン」ではポワロの死が扱われるからです。
スタッフ側もポワロが亡くなって終わるのでは辛いという判断から生きているポワロを収録して終わりにしたかったのです。
放送順はポワロの死が最終回となりましたが、イギリスのスタッフの思いの強さが垣間見られます。
内容
原作は短編集の「ヘラクレスの冒険」の『アルカディアの鹿』と『エルマントスのイノシシ』の2つの話がベースです。
ドラマ化に接し、大幅に改変されています。
また「ヘラクレス」はポワロのファーストネームです。
「あれ???エルキュールでしょ?」と思ったあなた、正解です!
「エルキュール」は「ヘラクレス」の別の読み方です。