古今東西の名著を25分×4回=100分で紹介する「100分de名著」。これまでスペシャル版として「100分de名著forティーンズ」を二回放送し、10代の視聴者層に名著の魅力を発信してきました。今回は更にバージョンアップ! 2024年の春休み、若者からの支持が厚い加藤シゲアキさんを司会に迎え、対象年齢層の幅を更に広げ10代~30代に向けて「100分de名著 for ユース」というスペシャル・シリーズを立ち上げます。
3月といえば、新しい旅立ちをまもなく迎える季節。でも新たな職場や学びの場で、人間関係や仕事上の挫折、恋愛や友情のもつれ等々、若さゆえの悩みに直面し始める時期でもあります。そこで番組では、若者たちが参考になるような、人生の先輩としての助言を交えながら名著の解説を展開。「生きづらさにどう向き合う?」「仕事に取り組む姿勢とは?」「学び続けることの意味とは?」「人生を支えてくれる詩の言葉とは?」といった普段扱わないテーマの名著を取り上げ若者層が深く楽しめる知的エンターテインメント番組を目指します。
<出演者> 【司会】加藤シゲアキ(タレント・小説家)・安部みちこアナウンサー
第1回 シュリーマン「古代への情熱」×齋藤孝(教育学者)
100分de名著forユース (1)学び続けることの意味 シュリーマン「古代への情熱」
https://www.nhk.jp/p/meicho/ts/XZGWLG117Y/episode/te/K93V18LYWJ/
初回放送日: 2024年3月4日
トロイヤ戦争について本で読んだ少年ハインリヒ・シュリーマンは、かつての美しい古都が必ず地下に埋もれていると信じその発掘を志すのだった。
さまざまな困難にぶつかりながらも、トロイヤ発掘の夢を抱き続け、驚異的努力で十数カ国語を身につけていくシュリーマン。私財を投げ打ち、とうとうその夢を実現するのだった。第一回は、あくなき学びの精神が持続できた理由とは何か? そして、学業にあっても仕事にあっても、創造的に学び続けていく意味とは何かを「古代への情熱」を通して考えいく。
シュリーマンは子供の頃、誰しも手にしたことがある1冊ではないでしょうか?
今回、取り上げられたことで私も初めて手にしたときの事を思い出したりしました。
シュリーマン以前はトロイアという国もトロイの木馬も伝説の話だと思われていたのです。
「まさか、本当にあったなんて!」というのが当時の反応だったのです。
トロイアとトロイヤが混在しますが、同じ事です。
シュリーマンのスペック
シュリーマンは前半生と後半生で貧富が逆転します。
この原動力となったのが、幼い日の恋の思い出だと指南役の斎藤先生は推察します。
シュリーマン | (1822年~1890年)68歳 |
本名 | ヨハン・ルートヴィヒ・ハインリヒ・ユリウス・シュリーマン |
9人兄弟の6番目 | |
9歳 | 母・死去 |
13歳 | ギムナジウム入学 |
*ギムナジウムとは日本で言う中高一貫校・良家の子息が通うイメージです。 | |
14歳 | 貧困の為、退学。働きだす |
19歳 | 乗り込んだ船が難破 |
設立した商社が大成功→大富豪になる | |
巨万の富を資本にし、子供の頃から切望していたトロイア遺跡を発掘 |
二部構成
シュリーマンの「古代への情熱」は二部構成になっています。
前半はシュリーマン自身の半生
後半はシュリーマンの死後、他の人によって書かれる
トロイアを知った切っ掛け
牧師の父から古代ギリシャの詩人・ホメロスの「叙事詩」を聞かされた幼少時代。
イェラーの世界史の絵本で「トロイア戦争」を知る。
紀元前13世紀ごろ、現在のギリシャとトルコの間で起こった10年に渡るトロイア戦争。
ギリシャ王国連合は巨大な木馬を贈ってトロイアに侵入。
その中には兵士が入っていてトロイアは陥落した。
この時点でトロイア戦争もトロイアという都市も「伝説」だというのが一般的でした。
つまり、作られた話で本当にあったとは思われていませんでした。
しかし、このトロイアという都市が本当にあったという事はシュリーマンの発掘調査によって本当にあった事が証明されます。
これは実は大変珍しい事で「伝説」と「事実」がひっくり返ったわけです。
トロイアなんて「架空の話」と思われていた!
シュリーマンの初恋
シュリーマンには恋した少女、ミンナがいました。
このミンナという少女には「トロイア」を語っていました。
結局、シュリーマンが結婚を申し込む前に彼女は別の男性と結婚してしまいました。
恋に破れたシュリーマンは、それをバネにして大富豪になり、その巨万の富で発掘調査をし、本当に「トロイア」を見つけたのです。
ミンナとの恋に破れた事が発掘への原動力になっていると斎藤先生は言われます。
トロイの木馬って?
トロイア戦争の話の中で荒唐無稽な話として「トロイの木馬」があります。
これは敵に「巨大な木馬」を贈り、この中にたくさんの兵隊たちが潜んでいたという作戦です。
そして、夜半になって出てきた兵隊たちが敵を攻めて陥落しました。
*インターネットでいったん侵入すると芋づる式にパソコンのプログラムを破壊してしまうウィルスを「トロイの木馬」という言い方をしますが、この話が元になっています。
子供の頃に初めて読んだ時に、この話、「本当にそんな事ある?」ってくらい荒唐無稽に思いました。
「どれくらいの巨大な木馬だったんだろう?」
「本当に兵隊たちがその中で夜まで我慢できたのだろうか?」
そんな風に思いました。
感想
斎藤先生は「ミッション・パッション・ハイテンション」と言うなかなかのオヤジギャグでこのお話を締められましたが、分かりやすい言葉で伝える斎藤先生らしい感じで良かったです。
子供の頃の私は「トロイア遺跡」も「トロイの木馬」もシュリーマンの伝記で初めて知りました。
ですから、前半のトロイアの話も「こんな話、神話だよね」と思う当時の人達の気持ちもよく理解できます。
そんな不思議な物語を情熱をかけて「本当の話」だと証明したシュリーマンを皆さんも読んでみてください。
番組中でシュリーマンが批判もされていたというのはシュリーマン自身が考古学の専門家ではなかったために、丁寧な発掘はされず、遺跡を破壊してしまったからです。
古代への情熱 翻訳本一覧
改訂されています。
一番忠実に翻訳されている印象があります。
こちらの方が口語体で書かれていて読みやすい印象があります。
当時の息遣いを知りたい人はどうぞ。
第2回 松下幸之助「道をひらく」×土井英司(ビジネス書評家)
100分de名著forユース (2)仕事に取り組む姿勢を学ぶ 松下幸之助「道をひらく」
https://www.nhk.jp/p/meicho/ts/XZGWLG117Y/episode/te/22YK7MQ4JG/
初回放送日: 2024年3月11日
昭和43年の発刊以来、累計560万部を超え、いまなお読み継がれるロングセラー「道をひらく」。松下幸之助が実体験と人生に対する深い洞察をもとに綴った短編随想集だ。
一節一節が心に響く、松下幸之助の珠玉の言葉。「仕事をより向上させるために」「事業をよりよく伸ばすために」「みずから決断を下すときに」等々あらゆる若者がぶつかるであろう場面で、名経営者ならではの実践的な知恵がひらめく。第二回は、名著「道をひらく」を通して、仕事に悩める若者たちに仕事の原点を学んでもらう。
戦後のロングセラー第2位のこの1冊
*ちなみに1位は「窓ぎわのトットちゃん」だそうです。
松下幸之助スペック
松下幸之助スペック | |
1894年~1989年(94歳) | |
少年時代 | 小学校を中退 |
丁稚奉公 | |
火鉢店→自転車屋 | |
16歳 | 大阪電灯(現・関西電力) |
18歳 | 夜間学校に入学 |
24歳 | 事業開始 |
経営の神様と言われる |
丁稚奉公時代の逸話
和歌山県の裕福な家庭に生まれたはずの松下幸之助でしたが、父が破産して小学校を中退して丁稚奉公に行きます。
いきなり大変な少年時代ですが、この丁稚時代には工夫を凝らします。
紹介されたエピソードでは客に煙草のお使いに走らされていた幸之助。
言われるたびに買いに走っていたでは、いちいち面倒である事で煙草のまとめ買いをします。
まとめ買いをする事で少し割引で買えるし、客からも好評でした。
でも、同僚からの嫉妬されてしまいます。
「あいつだけ褒められておまけに儲けている」と言うのです。
ここで幸之助は自分の事だけを考えているとみんなから嫌われると反省
志を立てよう
ビジネスの世界の人間なので「志」を建てないと何も始まらない。
夢は大きい方が良い。
夢は小さいと諦めてしまう。
自分がちょっと大それたくらいの目標を立てると人は頑張れる。
道をひらく 一覧
何と可愛らしい!
ハンドブックとして最高です。
装丁買いでも全然OKな1冊です。
第3回 ロビンソン「思い出のマーニー」×河合俊雄(臨床心理学者)
思い出のマーニーのあらすじ
ジブリ作品でも有名になった思い出のマーニーですが、アニメと本作品は大筋で同じです。
有名な話なのでネタバレの上で話を読まれても良いと思います。
アンナとマーニーは親友に
アンナの療養先で出会った金髪の少女・マーニーとはすぐに親友になります。
まるで双子のような関係です。
心理学用語ではチャムを親友。
チャムシップを親友関係と言います。
こうやって親友を作ると言うのは子供時代に自分自身を見返すときに必要なのかと思いました。
空想上の友達~でも、本人の中ではリアル
マーニーはアンナのおばあちゃんでした。
「思い出のマーニー」はファンタジー文学なので空想のお話なのですが、これも心理学上も説明が出来ます。
子供の頃に想像上の友達(イマジナリー・コンパニオン)を持つ事で精神的な安定や自分自身の考え方の振り返りにもなるとも考えられます。
もちろん、空想上なので現実社会には存在しえませんが、本人の中でそれはリアルなのです。
置き去りにされた事を許すアンナ
アンナは両親や祖母に先立たれたことを許せませんでした。
アンナの中では「すぐに帰ってくる」と言って帰ってこなかった祖母を許せなかったのです。
(亡くなったから)
もちろん、おばあちゃん側も約束を反故にしようと思ったわけではありません。
そして、おばあちゃんはマーニーとして現れた時も風車小屋にアンナを置き去りにしてしまいます。
でも、マーニーがアンナを困らせようとか、わざと置き去りにしたわけではありません。
それが分かった事でアンナは先に死んでしまった祖母を許すことが出来たのではないかと思いました。
感想
アニメの「思い出のマーニー」とはずいぶん違う印象を受けた人も多いのではないでしょうか?
私もその一人です。
河合先生の心理学上の説明を聞きながら荒唐無稽なファンタジーではなくて深層心理に特化した良いお話だという事が分かりました。
幽霊やいない人の話と片付けるのではなくてアンナの自問自答や自分の中で成長していく物語というように私は捉えました。
思い出のマーニー 一覧
ジブリの「思い出のマーニー」
思い出のマーニーはジブリ作品としても有名ですね。
ですが、ジブリのマーニーは日本を舞台としているために主人公の女の子は「杏奈」という漢字が当てられています。
日本人という設定です。
本国イギリスの主人公は「アンナ」なのでそのまま日本人の名前として置き換えられています。
ジブリ作品のネット配信は無いためにDVDまたはBlu-rayの視聴になります。
第4回 「石垣りん詩集」×文月悠光(詩人)
石垣りんスペック
石垣りん(1920~2004)84歳 | |
1920年(大正9年) | 東京赤坂で生まれる |
1924年 | 関東大震災・母死去 |
1945年 | 第二次世界大戦・空襲で自宅全焼 |
10坪ほどの借家に家族6人で住む | |
1946年 | 詩を書き始める |
1953年 | 祖父死去 |
1957年 | 父死去 |
1958年 | 手術 |
1974年 | 義理の母死去 |
1975年 | 銀行を定年退職 |
2004年(平成16年) | 死去 |
感想
石垣りんという詩人の事をあまり知らずに来た私。
話を聞いてみれば、「シジミ」も「表札」もどこかで聞いた事のある詩だった。
石垣りんは大正9年(1920年)生まれ。
平成16年(2004年)に84歳で天寿を全うする。
関東大震災を超えて、第二次世界大戦を超えて、大変な思いをして生きてこられた人なんじゃないかと思ったら本当にそうだった。
きっと結婚もされなかったんだろう。
自分が働いて家族を支え続けたんだろう。
そんな事が詩の中から感じられた。
今回の解説では「ユーモア」があるとか言われていたけれど、私は貧困の中で踏ん張っている人の悲鳴のように聞こえた。
やっぱり、感じ方はそれぞれだな。
「表札」という詩は結構有名。
この詩の朗読を聞いていた「この詩を書いた人かあ」と思った人は私だけではないと思う。
自分が病気をして病室の前に掲げられていた自分の名前、旅館に泊まった時の名前などは「様」や「殿」が付く。
要は敬称が付くという事だ。
でも、自分の家の自分の「表札」には敬称が付かない。
つまり、自分の家で自分の持ち物である事だから敬称はいらないのだ。
きっと苦難を笑顔で乗り越えられた方なんだろう。
この短い詩の中でそういう事を感じました。