
タイトルが「死ぬ瞬間」
半世紀以上前に緩和ケアの名著がありました。
高齢者社会や介護問題で私たちに問いかけられます。
(1)終末期患者への向き合い方
キューブラー・ロス「死ぬ瞬間」 (1)終末期患者への向き合い方
初回放送日NHK教育テレビジョン12月1日(月)午後10:25
人が尊厳をもって死を迎えにくい時代に突入した現代。こうした状況に危機感をもったキューブラー・ロスは、シカゴのビリングス病院で「死とその過程」に関するワークショップを開始。その中で末期患者約200人との面談内容を録音し、死にゆく人々の心理の分析を始める。いわば、「死とその過程」を質的にとらえ直し、私たちにとっての「死」の大切な意味を捉えなおそうという新しいアプローチだ。その試みの意義に迫る。
緩和ケアの前身
緩和ケアの前身と言える「死ぬ瞬間」が発行されたのは1969年。
何と半世紀以上前のこととなります。
医学の発達で死病と言われる病気がガンくらいしかなくなった時代の話です。
この時代はペストやコレラなどの何百年も人を死の恐怖に陥れてきた死病も治る病気となり、結核でさえ治療法が確立されていました。
つまり、治らないのはガンだけということになります。
「ガン」と言われたら死ぬ覚悟をしなければならないので、ガン告知はしないことがデフォルトだった時代です。

もちろん、今はガン告知を積極的にして治療しようとする動きが一般的になってきました。
天人五衰
ただ、今でも人は死なないわけではありません。
寿命であれ、病気であれ、事故であれ、人は死んで行きます。
医療が進んだ現代だからこそ、死の過程が以前よりもつらいものになっているからです。
何とも皮肉な話です。
先進的な課題になって行っているのですね。
この話を聞いて私自身も天人五衰というものを思い出します。
天人五衰は「てんにんのごすい」と読みます。
仏教用語で天界に住む天人が寿命を終えるときに現れる5つの兆候のことです。
・服が汚れる
・頭の上の花がしおれる
・体臭がひどくなる
・脇汗が出る
・本来の座席に安住できなくなる
これらの事が明るみになってくると天人も死んでしまうのです。
天人は地上に住む私たちよりも長寿ですから、この天人でさえ寿命が尽きるときは苦しむのです。
何とも宗教的な話になってしまいましたが、「死」を受け入れるということは、宗教的な概念でも簡単に受容できないというのが本当の所なのだと思います。
宗教観でも死は簡単に払しょくできない
著者のキューブラー・ロスはスイスの裕福な家庭の出身です。
患者の多くはキリスト教的な人も多いのが特徴ですが、キリスト教はどうかと言えば「死」に対しては婉曲的な表現をします。
やはり、「天国へ行った」とか「旅立った」なんて言い方もするわけです。
また、「死」が忌むべきことであったのも多くの国で共通した概念でもあるというのは、この本の注目点です。
つまり、この著書は宗教観を超えた人の死生観について考えていると言っても良いように思います。
死にゆく人の意思を尊重する
本書で紹介されるキューブラー・ロスの最初の体験は「ある農夫の死」でした。
木から落ち、助かりそうもない彼を見て「家で死なせてほしい」という彼の望みを周りの人たちが尊重し、彼は家で息を引き取りました。
死を間際にすると、その人の気持ちを優先する傾向は従来からあるのです。

緩和ケアの最初の段階で、半世紀も前にこういう話が確立されていたのです。
私たちは学ぶことが多いように思います。
(2)死にゆく人の「否認」と「怒り」
キューブラー・ロス「死ぬ瞬間」 (2)死にゆく人の「否認」と「怒り」
初回放送日NHK教育テレビジョン12月8日(月)午後10:25
キューブラー・ロスが発見した死の受容五段階は。末期患者に対してどうケアすればよいかについて示唆を与えてくれる。最初は「否認」と「怒り」。「自分は死ぬはずがない」「なぜ自分が?」と死を拒絶し、他者にその怒りをぶつける心理状態だが、その裏側に「孤独」があることに気づき、彼らの言葉にひたすら耳を傾けることが事だという。第二回は、死にゆく人々が厳しい状況に陥らないためにどんなケアが必要なのかを考える。
(3)死を受け入れる?
キューブラー・ロス「死ぬ瞬間」 (3)死を受け入れる?
初回放送日NHK教育テレビジョン12月15日(月)午後10:25
「取り引き」は「善行との引き換えに延命させてほしい」と神などに約束しようとすること。これは、生きる望みをまだ捨てていない証なので決して聞き流してはいけない。「抑うつ」は、病が重篤化し、もはや楽観的な態度をとり続けることができないときに陥るもので、愛するものと永遠に別れなければならない「悲しみ」などによって気持ちが重く沈む心理状態。この段階では、言葉ではなくただ静かにそばに寄り添うことが重要だ。
(4)希望と「死の向こう側」
キューブラー・ロス「死ぬ瞬間」 (4)希望と「死の向こう側」
初回放送日NHK教育テレビジョン12月22日(月)午後10:25
配信期限12月29日(月)午後10:49
死を受容するにあたって大事なのは、死にゆく人の心残りを少しでも軽減するために何ができるかだ。鍵になるのが「希望」。死の受容プロセスにあって、どの段階にもずっと存在し続けるのが「希望」であり、「希望こそが生きる源泉となる」と言う。その後、キューブラー・ロスは、この希望を支える考え方として「死は新しい生への移行である」という死生観をもつに至る。第四回は、彼女が晩年に到達した死生観に迫っていく。

