悪徳サラリーマンで悪事を繰り返してきた主人公は
「善良な市民同盟」に選ばれた善人として認められたことで
改心してマジメになります。
原作は「なりそこない王子」になります。
内容（ドラマに準拠します）
主人公は悪徳不動産会社の営業マンです。
彼自身、会社のお金を横領するなど悪い事ばかりする人間でした。
そんなある日、不思議な老人に出会います。
「善良な市民同盟」という組織の人間です。
この組織は未知のウィルスとそれに対応できるワクチンを開発しています。
そのワクチンを世界中にばらまいてワクチンを打っている人間だけが生き残るという作戦です。
老人に気に入られ選ばれた善人とされた主人公は「善良な市民同盟」に入る事が出来て更にワクチンを打ってもらう事になります。
未知のウィルスをばらまく日を「審判の日」と老人は定めています。
ただし、この事は一切口外できません。
契約書にまでサインさせられます。
（この時に多額のお金を取られている事を主人公は気にしていない模様）
心を入れ替えて善人として真面目に働くようになった主人公には恋人も出来ます。
彼女が妊娠した事で自分だけでなく彼女も助けてほしいと「善良な市民同盟」の老人に懇願しますが、約束を破り他者に言った事で老人は激高します。
老人は彼女の参加を認めないばかりが主人公をも除名すると言い出します。
これでは、自分の命もなくなると思った主人公は「自分だけでも助けてほしい」と最低の言葉を発します。
それは彼女もいる前でです。
彼女は呆然とします。
妊娠している彼女の前で自分だけ助かりたいという最低男です。
主人公は老人に殴られ、気絶し目が覚めた時は自分の部屋にいました。
一瞬で、愛する彼女も彼女の中にいた子供も失ってしまったのです。
「善良な市民同盟」の事務所に行くとそこはもぬけの殻でした。
「審判の日」はやってきませんでした。
つまり、老人にも騙されていたのです。
一番の悪人は老人だったのです。
何もかも失ったと察した主人公は家に帰ります。
ただ、そこには自分の子供を妊娠した彼女が待っていました。
「私、やっぱりあなたと一緒にいたい」
彼女が戻ってきて抱き合って終わります。
主人公は騙されていた老人にでさえ感謝をします。
「善良な市民同盟」に出会ってなければ、彼女に会う事もなかったというのです。
ここで物語は終わります。
オチ
ハッピーエンドと言って良いのでしょうか？
悪人に騙されて多額のお金を取られたのは主人公だけではなく多くのサラリーマンたちもです。
その他の人達の行方も気になるところですが、一応この主人公の事を考えてみましょう。
彼自身もかなりの悪人です。
それをたまたま自分が選ばれた人間だと思い込み、それを示唆してくれた老人に言われるがままの大金を支払って行く事になります。
何処にでもあるような詐欺師の話ですね。
詐欺師、詐欺られる…みたいな。
ただ、彼自身は「自分が選ばれた善人」であるという事を思いこむだけで彼自身が善人に近づいてきます。
だからこそ、可愛い彼女も出来たわけです。
彼女も「選ばれた善人」になった欲しいために老人にワクチンを懇願します。
ですが、老人は裏切った事や他言した事を許しません。
ここで自分の命も危ないと思った主人公は自分だけでも助かりたいという本音を漏らしてしまった為に彼女も絶望してしまいます。
「審判の日」をすぎて自分がやっと騙されていたと気が付いた主人公は愚かすぎます。
最後に彼女が戻ってきて未来へ繋がるような描写になりますが、土壇場で自分を裏切った男を彼女は本当に許せるのでしょうか？
たまたま許しただけ？
子供が生まれるから我慢しただけ？
物語は一見ハッピーエンドになったように描かれましたが、この2人はうまくいかないように思います。
いざという時になったら「自分だけ助かりたい」という男なのですから。
皆さんの解釈はどうですか？
星新一の不思議な不思議な短編ドラマ(2022年）感想一覧
＊放送日時はBSで放送された初回放送日です。『○○○』は収録されている原作巻です。
第1話 ボッコちゃん (2022年4月5日放送) 『ボッコちゃん』
第2話 生活維持省 (2022年4月12日放送)『ボッコちゃん』
第3話 不眠症 (2022年4月19日放送)『ボッコちゃん』
第4話 地球から来た男 (2022年4月26日放送) 『地球から来た男』
第5話・第6話 善良な市民同盟 前・後編 (2022年5月3日・10日放送) 『なりそこない王子』
第7話 逃走の道 (2022年5月17日放送) – 『エヌ氏の遊園地』
第8話 見失った表情 (2022年5月24日放送) 『ようこそ地球さん』
第9話 薄暗い星で (2022年5月31日放送)『悪魔のいる天国』
第10話 白い服の男 (2022年6月7日放送)『白い服の男』
第11話 ものぐさ太郎 (2022年6月14日放送) 『なりそこない王子』
第12話 窓 (2022年6月21日放送) 『宇宙のあいさつ』
第13話 凍った時間 (2022年6月28日放送) 『ちぐはぐな部品』
第14話 夜と酒と (2022年7月5日放送)『凶夢など30』
第15話 ずれ (2022年7月12日放送) 『ようこそ地球さん』
第16話 もてなし (2022年7月19日放送) 『地球から来た男』
第17話 鍵 (2022年7月26日放送) 『妄想銀行』
第18話 買収に応じます (2022年8月2日放送) 『さまざまな迷路』
第19話・第20話 処刑 前・後編 (2022年8月9日・16日放送) 『ようこそ地球さん』
もちろん、全話収録
ドラマの原作巻リスト
ドラマの原作になったタイトルを抜き出してみました。
この機会に読んでみた人は是非参考になさってください。
今回のドラマ化だけで12冊の本が底本になっています。
それぞれのお話は読み切りのショートショートなのでお好きな順序でお読みください。
『ボッコちゃん』
第1話 ボッコちゃん 第2話 生活維持省 第3話 不眠症
『地球から来た男』
第4話 地球から来た男 第16話 もてなし
『なりそこない王子』
第5話・第6話 善良な市民同盟 前・後編 第11話 ものぐさ太郎
『エヌ氏の遊園地』
第7話 逃走の道
『ようこそ地球さん』
第8話 見失った表情 第15話 ずれ 第19話・第20話 処刑 前・後編
『悪魔のいる天国』
第9話 薄暗い星で
『白い服の男』
第10話 白い服の男
『宇宙のあいさつ』
第12話 窓
『ちぐはぐな部品』
第13話 凍った時間
『凶夢など30』
第14話 夜と酒と
『妄想銀行』
第17話 鍵
『さまざまな迷路』
第18話 買収に応じます
著作リスト
星新一の著作はとても多く今もたくさん発行されています。
新潮文庫、角川文庫の一部をピックアップしています。
もちろん、これ以外にもたくさんあります。
入手可能なものを並べてみました。
