ボヘミアの醜聞「シャーロック・ホームズ」

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ボヘミアの醜聞

アイリーン・アドラー登場!

アイリーンと言うファーストネームの読み方は時折「エレナ」とか「エレーナ」で翻訳される事もあるのですが、一番メジャーな読み方の「アイリーン」で統一していきます

アイリーンとは?

ホームズが敬愛する女性?
尊敬する女性?
そういう風に描かれるアイリーン・アドラーの登場です。

ホームズシリーズでモリアーティに続いて人気のあるキャラであるアイリーン・アドラーですが、実はこの話に出て来るだけで他のエピソードには一切出てきません。
おまけにホームズシリーズの最初の方のエピソードです。
ホームズよりも先手を打ち続けるアイリーン。
最後は自分の幸せを選んで旅立っていきます。

あらすじ

さて、「ボヘミアの醜聞」とはどういう話でしょう?
「醜聞」という通り、スキャンダルです。
ある王族とアイリーンは付き合っていた過去がありました。
その時に撮った写真を取り返してほしいというのがホームズからある王族からの依頼でした。
その写真で自分の過去の醜聞が出る事を恐れたためでした

ある王族

ある王族とはボヘミアの事ですが、この時点で架空の国です。
ヨーロッパには小国ながら王国が今もたくさんあります。
ですが、王族は王族なのです。
ヨーロッパにはこういう王族になじみがあると言う事なんですね。
日本ではなかなかお目にかかりませんが…。

このボヘミアの王族も気位だけは高く、あわよくば匿名でホームズに依頼しようとするなどなかなか卑怯な感じで登場します。
また、依頼も自分の過去をなかった事にしようとするのですから、ホームズも依頼を受けつつも若干呆れているさまが受け取られる描写がたくさんあります。

一方でアイリーンは聡明な女性でした。
ホームズの打つ手をどんどん突破していきます。
アイリーンを出し抜いたと思ってベーカー街に帰ったホームズでしたが、何とそこへ知らない人が「おやすみなさい、シャーロック・ホームズさん」と言って去っていきます。
これが変装したアイリーンでした。
そして、アイリーンはホームズの手を潜り抜け、自分の幸せを手にしてイギリスを去っていたのです。

あの女性

アイリーンの事を「あの人」とか「あの女」とか翻訳されています。
これを原作の言葉で読んでみると”the woman”と書かれているのです。
これをどう翻訳するかでホームズがどれだけアイリーンをリスペクトしているかと分かるかと思うのですが、私自身は「あの女性」と翻訳するのが好きです。

日本語に翻訳する時にも日本の世相や時代、また伝わりやすさなど、考えなければならない事が多いと思います。
とにかく、ホームズはアイリーンを同等のライバル、もしくは敬意を払っていたのではないかと思うので「あの女性」という翻訳が良いなあと思っています。

英語の”the woman”という表記はとても良いです。

アイリーンは後の創作の世界でも大活躍

グレース
グレース

アイリーンは後世の創作者の中でも大人気です。
ホームズシリーズに相手の女性役として出て来るのがこのアイリーンである事が多いです。

BBCのシャーロックの妖艶なアイリーン

BBCのシャーロックでも王族お抱えの娼婦として出てきます。
また、このアイリーンはとことん毒婦ですが、シャーロックを翻弄していきます。
これもVODで観る事やBlu-rayで一気に見る事が出来ます。

灰原哀もアイリーン・アドラー?

ちなみに名探偵コナンの「灰原哀」もアイリーン・アドラーをモデリングしています。
2024年に公開された「劇場版・名探偵コナン・黒鉄の魚影」は興行100億円を突破しました。
作品中で現実的にヒロインとなった灰原哀は「100億の女」と言われるほどになりました。

推しの名訳

シャーロック・ホームズ・シリーズは多くの著述や翻訳がたくさんあります。
どの翻訳を読めばいいか分からない方の為に私の「推し」の翻訳を推薦しておきます。
延原謙さんです。
ホームズの翻訳を今に至る完全な形で全訳した最初の方だと思われます。
実はそれまでも、何度か翻訳が試みられているのですが、ホームズやワトソンの名前があり得ない和名であったり、完全に翻訳されているものはありませんでした。
(ありえない和名。有名な所ではホームズが小室泰六。ワトソンが和田進一)
また、延原謙訳の長所はその時代背景の言葉としてホームズがいう若干高圧的な言い回しが再現されている所です。
(ホームズは超インテリ階級なので「~したまえ!」など上から目線の表現が散見しますが、イギリス的にはこう言った表現が正確に反映されることこそが作品の時代背景を明確に表していると思います)

時代を反映した翻訳と言えます

延原謙 新潮社文庫 全10冊

延原謙さんの翻訳の新潮社文庫は全10冊になります。
他のシリーズが全9冊なのに1冊多い全10冊なのは、最初の9冊の発売時点で漏れていた作品を最後の「シャーロックホームズの叡智」で全部入れ込んだからです。
そこで新潮社文庫は全10冊となりますが、全60作品を読むことが可能です。
また時代背景と翻訳がリンクしている事もあり、ホームズの時代に即した言い回しが楽しめます。
何度も版を重ね、改訂がされているので今も読むことが可能です。
新潮社文庫からはたまにスペシャルカバーで装丁の違う本も発売される事もあるので、それを購入するのも楽しみです。

長編4冊

短編集6冊

  1. ボヘミアの醜聞
  2. 赤髪組合
  3. 花婿失踪事件
  4. ボスコム谷の惨劇
  5. オレンジの種五つ
  6. 唇の捩れた男
  7. 青いガーネット
  8. まだらの紐
  9. 花嫁失踪事件
  10. 椈屋敷
  1. 白銀号事件
  2. 黄いろい顔
  3. 株式仲買店員
  4. グロリア・スコット号
  5. マスグレーヴ家の儀式
  6. 背の曲った男
  7. 入院患者
  8. ギリシャ語通訳
  9. 海軍条約文書事件
  10. 最後の事件
  1. 空家の冒険
  2. 踊る人形
  3. 美しき自転車乗り
  4. プライオリ学校
  5. 黒ピーター
  6. 犯人は二人
  7. 六つのナポレオン
  8. 金縁の鼻眼鏡
  9. アベ農園
  10. 第二の汚点
  1. 高名な依頼人
  2. 白面の兵士
  3. マザリンの宝石
  4. 三破風館
  5. サセックスの吸血鬼
  6. 三人ガリデブ
  7. ソア橋
  8. 這う男
  9. ライオンのたてがみ
  10. 覆面の下宿人
  1. ウィステリア荘
  2. ボール箱
  3. 赤い輪
  4. ブルース・パティントン設計書
  5. 瀕死の探偵
  6. フランシス・カーファクス姫の失踪
  7. 悪魔の足
  8. 最後の挨拶
  1. 技師の親指
  2. 緑柱石の宝冠
  3. ライゲートの大地主
  4. ノーウッドの建築士
  5. 三人の学生
  6. スリー・クォーターの失踪
  7. ショスコム荘
  8. 隠居絵具屋

深町眞理子 創元社文庫 全9冊

創元社文庫版は新訳として話題になった深町眞理子さんの訳です。
新訳らしい今風の筆致になっています。
装丁の絵はホームズが最初に紙面に載ったストランド誌の有名なイラストです。
こちらも全60作品読むことが可能です。
延原版と微妙にタイトルが違うのも面白いです。

ストランド版の出版順に翻訳されています。

長編4冊

短編集5冊

  1. 「ボヘミアの醜聞」
  2. 「赤毛組合」
  3. 「花婿の正体」
  4. 「ボスコム谷の惨劇」
  5. 「五つのオレンジの種」
  6. 「くちびるのねじれた男」
  7. 「青い柘榴石」
  8. 「まだらの紐」
  9. 「技師の親指」
  10. 「独身の貴族」
  11. 「緑柱石の宝冠」
  12. 「ぶなの木屋敷の怪」*「ぶな」は木へんに無
  1. 「〈シルヴァー・ブレーズ〉号の失踪」
  2. 「黄色い顔」
  3. 「株式仲買店員」
  4. 「〈グロリア・スコット〉号の悲劇」
  5. 「マズグレーヴ家の儀式書」
  6. 「ライゲートの大地主」
  7. 「背の曲がった男」
  8. 「寄留患者」
  9. 「ギリシア語通訳」
  10. 「海軍条約事件」
  11. 「最後の事件」
  1. 「空屋(くうおく)の冒険」
  2. 「ノーウッドの建築業者」
  3. 「踊る人形」
  4. 「ひとりきりの自転車乗り」
  5. 「プライアリー・スクール」
  6. 「ブラック・ピーター」
  7. 「恐喝王ミルヴァートン」
  8. 「六つのナポレオン像」
  9. 「三人の学生」
  10. 「金縁の鼻眼鏡」
  11. 「スリークォーターの失踪」
  12. 「アビー荘園」
  13. 「第二の血痕」
  1. 「〈ウィステリア荘〉」
  2. 「ボール箱」
  3. 「赤い輪」
  4. 「ブルース=パーティントン設計書」
  5. 「瀕死の探偵」
  6. 「レイディー・フランシス・カーファクスの失踪」
  7. 「悪魔の足」
  8. 「シャーロック・ホームズ最後の挨拶 ──ホームズ物語の終章」
  1. 「高名の依頼人」
  2. 「白面の兵士」
  3. 「マザリンの宝石」
  4. 「〈三破風館〉」
  5. 「サセックスの吸血鬼」
  6. 「ガリデブが三人」
  7. 「ソア橋の怪事件」
  8. 「這う男」
  9. 「ライオンのたてがみ」
  10. 「覆面の下宿人」
  11. 「〈ショスコム・オールド・プレース〉」
  12. 「隠退した絵の具屋」

映像作品のホームズ

グラナダ版 シャーロック・ホームズの冒険(1984年~1994年)

シャーロック・ホームズの冒険 完全版 DVDセット1~6 全24枚セット

全41話。
最もホームズのイメージに近いと言われたジェレミー・ブレットによるものです。

第1シリーズ/The Adventures of Sherlock Holmes
第1話 ボヘミアの醜聞/A Scandal In Bohemia
第2話 踊る人形/The Dancing Men
第3話 海軍条約事件/The Naval Treaty
第4話 美しき自転車乗り/The Solitary Cyclist
第5話 まがった男/The Crooked Man
第6話 まだらの紐/The Speckled Band
第7話 青い紅玉/The Blue Carbuncle
第2シリーズ/The Adventures of Sherlock Holmes
第8話 ぶなの木屋敷の怪/The Copper Beeches
第9話 ギリシャ語通訳/The Greek Interpreter
第10話 ノーウッドの建築業者/The Norwood Builder
第11話 入院患者/The Resident Patient
第12話 赤髪連盟/The Red-Headed League
第13話 最後の事件/The Final Problem
第3シリーズ/The Return of Sherlock Holmes
第14話 空き家の怪事件/The Empty House
第15話 プライオリ・スクール/The Priory School
第16話 第二の血痕/The Second Stain
第17話 マスグレーブ家の儀式書/The Musgrave Ritual
第18話 修道院屋敷/The Abbey Grange
第19話 もう一つの顔/The Man with the Twisted Lip
第20話 六つのナポレオン/The Six Napoleons
第4シリーズ/The Return of Sherlock Holmes
第21話 四人の署名/The Sign of Four(2時間スペシャル)
第22(23)話 悪魔の足/The Devil’s Foot
第23(22)話 銀星号事件/Silver Blaze
第24話 ウィステリア荘/Wisteria Lodge
第25話 ブルース・パーティントン設計書/The Bruce-Partington Plans
第26話 バスカビル家の犬/The Hound of the Baskervilles(2時間スペシャル)
第5シリーズ/The Casebook of Sherlock Holmes
第27話 レディ・フランシスの失踪/The Disappearance of Lady Frances Carfax
第28(29)話 ソア橋のなぞ/The Problem of Thor Bridge
第29(30)話 ショスコム荘/Shoscombe Old Place
第30(28)話 ボスコム渓谷の惨劇/The Boscombe Valley Mystery
第31話 高名の依頼人/The Illustrious Client
第32話 這う人/The Creeping Man
2時間スペシャルシリーズ
第33(34)話 犯人は二人/The Master Blackmailer
第34(33)話 サセックスの吸血鬼/The Last Vampyre
第35話 未婚の貴族/The Eligible Bachelor
原作「独身の貴族(別題:『花嫁失踪事件』)」を元にした一作。
第6シリーズ/The Memoirs of Sherlock Holmes
第36話 三破風館/The Three Gables
第37話 瀕死の探偵/The Dying Detective
第38(40)話 金縁の鼻眼鏡/The Golden Pince-Nez
第39(38)話 赤い輪/The Red Circle
第40(41)話 マザランの宝石/The Mazarin Stone (with The Three Garridebs)
第41(39)話 ボール箱/The Cardboard Box
シャーロック・ホームズの冒険 完全版 DVDセット1~6 全24枚セット
王道グラナダ版シャーロック・ホームズ

BBC版 シャーロック(2010年~2017年)

全4シーズン+特別編(全13話)
ホームズのネタを現代版に書き直した作品。
制作者側がとことんこだわり抜いている所が随所に観られ、13話の中から元ネタを探すのが面白かったシリーズです。
ベネディクト・カンバーバッチ版のホームズは斬新な感じがしましたが、原作の設定を踏襲していたのです。
高身長でサイコパスである事が、おおむね好評でした。

配信はこちら
各話詳細・タイトルの下は元ネタ
  シャーロック(英国配信日)
1 ピンク色の研究(2010/07/25)
  ・緋色の研究
2 死を呼ぶ暗号(2010/08/01)
  ・恐怖の谷
  ・踊る人形
3 大いなるゲーム(2010/08/08)
  ・ブルースパーティントン設計書
4 ベルグレービアの醜聞(2012/01/01)
  ・ボヘミアの醜聞
5 バスカヴィルの犬(2018/01/08)
  ・バスカヴィル家の犬
  ・悪魔の足
6 ライヘンバッハ・ヒーロー(2012/01/15)
  ・最後の事件
  ・犯人は二人
7 空の霊柩車(2014/01/01)
  ・空き家の冒険
8 三の兆候(2014/01/12)
  ・四つの署名
9 最後の誓い(2014/01/12)
  ・最後の挨拶
  ・犯人は二人
  ・唇のねじれた男
10 忌まわしき花嫁(2016/01/01)
  ・マスグレーヴ家の儀式
11 六つのサッチャー(2017/01/01)
  ・六つのナポレオン
12 臥せる探偵(201/01/18)
  ・瀕死の探偵
13 最後の問題(2017/01/15)
  ・マスグレーヴ家の儀式
  ・グロリア・スコット号
  ・3人ガリデブ
現代版シャーロック・ホームズ
元ネタ探しがとても楽しかったシリーズです

名探偵ホームズ(1984年)

全26話。
日本のアニメでホームズが「犬」であるという奇抜な設定だったのですが、脚本が常に面白くて高視聴率だったシリーズです。
原作のホームズとはかなりかけ離れていた感じがするのですが、必ず元ネタがありました。
今も根強いファンが多いはその辺に理由がありそうです。
実はジブリの宮崎駿監督が手掛けた作品が6作品あります。
宮崎駿監督作品はテレビ放送もされましたが、劇場公開もされました。

宮崎駿 関連作品
第3話 小さなマーサの大事件!?
第4話 ミセス・ハドソン人質事件
第5話 青い紅玉(ルビー)
第9話 海底の財宝
第10話 ドーバー海峡の大空中戦!
第11話 ねらわれた巨大貯金箱

名探偵ホームズ
ジブリの宮崎駿監督による作品
ホームズ原作とは大きな改変がありますが、面白かったです。

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