「生活維持省」星新一の不思議な不思議な短編ドラマ

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グレース
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生活維持省はディストピアな物語です。
平和って?

幸せって?
何か犠牲がないと成立しないの?

そんな事を考えた物語でした。
原作は人気タイトルの「ボッコちゃん」の中に掲載されています。

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内容(ドラマに準拠します)

黒い服を着た二人の男が車に乗っています。
生活維持省と呼ばれる役人のようです。
戦争も犯罪もない素晴らしい世界です。
それは何か問題を起こす可能性のある人間を殺していくというのが社会の条件のようでした。
本人に気づかれないように光線銃を放ち、その人は死んでしまいます。
そして、黒い服を着た二人の男の内、もう一人がこの日殺される人間でした。
銃声が聞こえ、この物語は終わります。

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オチ

犯罪や問題を起こしそうな人物を前もって殺しておくというのがこの生活維持省の仕事のようでした。
映画でもマイノリティ・リポートという作品がありましたが、これは超能力者が犯罪を起こしそうな人間を前もって予測してその人を捕まえるという話です。
映画の方はそこから逃げ出すというエンタメでしたが、この「生活維持省」の場合は人々もこのシステムに対して疑問を持っていないという事なのです。

戦争も犯罪もない、異常な人口増加もない。
人々は広い家や平和な生活を保障されているわけです。

でも、この作品の中で自分の子供が殺されると知った女性はわずかに抵抗します。
今まで大事に育ててきた娘が目の前で殺されるのに異議を唱えてもいけないのです。
星新一のシリーズでは珍しく娘の名前が出てきます。
「アリサ」と言います。

こういう名前を星新一が付けたのは今となっては分かりませんが、一見平和で理想的に見えるこの物語の中で重みをもたせるために敢えて名前を付けたのかなというのが私の推測です。
大切な娘を殺さないでほしい。
そう思うのは親として当然の事です。
でも、この世界では特異な事として扱われます。

「たまにあなたみたいな人がいる」という事で多くの人はあっさり受け入れているんだなという背景も伺えます。
また、最後に黒い服の生活維持省の男は自分自身もそのターゲットで相棒にあっさり撃たれるという運命をあっさり受け入れます。
原作でも「生存競争と戦争の恐怖のない時代に、これだけ生きることができて楽しかったな」と結ばれて終わります。
主人公も自分が人を殺していくという立場にありながら、自分がそのターゲットになった時に対して疑問を持たずに終わるという恐ろしさがあります。

グレース
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人々が幸せに暮らすユートピアなはずの国家ですが、裏では人を殺しても殺されても文句が言えないという恐ろしいシステムがありました。
平和って何?幸せって何?
ちょっと考えさせられるテーマでした。

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星新一の不思議な不思議な短編ドラマ(2022年)感想一覧

*放送日時はBSで放送された初回放送日です。『○○○』は収録されている原作巻です。
第1話 ボッコちゃん  (2022年4月5日放送) 『ボッコちゃん』 
第2話 生活維持省  (2022年4月12日放送)『ボッコちゃん』
第3話 不眠症  (2022年4月19日放送)『ボッコちゃん』
第4話 地球から来た男  (2022年4月26日放送) 『地球から来た男』
第5話・第6話 善良な市民同盟 前・後編  (2022年5月3日・10日放送) 『なりそこない王子』
第7話 逃走の道  (2022年5月17日放送) – 『エヌ氏の遊園地』
第8話 見失った表情  (2022年5月24日放送) 『ようこそ地球さん』
第9話 薄暗い星で  (2022年5月31日放送)『悪魔のいる天国』
第10話 白い服の男  (2022年6月7日放送)『白い服の男』
第11話 ものぐさ太郎  (2022年6月14日放送) 『なりそこない王子』
第12話 窓  (2022年6月21日放送) 『宇宙のあいさつ』
第13話 凍った時間  (2022年6月28日放送) 『ちぐはぐな部品』
第14話 夜と酒と  (2022年7月5日放送)『凶夢など30』
第15話 ずれ  (2022年7月12日放送) 『ようこそ地球さん』
第16話 もてなし  (2022年7月19日放送) 『地球から来た男』
第17話 鍵  (2022年7月26日放送) 『妄想銀行』
第18話 買収に応じます  (2022年8月2日放送) 『さまざまな迷路』
第19話・第20話 処刑 前・後編  (2022年8月9日・16日放送) 『ようこそ地球さん』

ドラマ初回放送時の感想はこちら

全話配信はこちら
出演者インタビューも収録されたDVD-BOXはこちら
もちろん、全話収録

ドラマの原作巻リスト

グレース
グレース

ドラマの原作になったタイトルを抜き出してみました。
この機会に読んでみた人は是非参考になさってください。
今回のドラマ化だけで12冊の本が底本になっています。
それぞれのお話は読み切りのショートショートなのでお好きな順序でお読みください。

『ボッコちゃん』
第1話 ボッコちゃん 第2話 生活維持省 第3話 不眠症 

『地球から来た男』
第4話 地球から来た男 第16話 もてなし 

『なりそこない王子』
第5話・第6話 善良な市民同盟 前・後編 第11話 ものぐさ太郎 

『エヌ氏の遊園地』
第7話 逃走の道 

『ようこそ地球さん』
第8話 見失った表情 第15話 ずれ 第19話・第20話 処刑 前・後編 

『悪魔のいる天国』
第9話 薄暗い星で 

『白い服の男』
第10話 白い服の男 

『宇宙のあいさつ』
第12話 窓 

『ちぐはぐな部品』
第13話 凍った時間 

『凶夢など30』
第14話 夜と酒と 

『妄想銀行』
第17話 鍵 

『さまざまな迷路』
第18話 買収に応じます

著作リスト

新潮文庫はこちら 42冊
角川文庫はこちら 15冊

グレース
グレース

星新一の著作はとても多く今もたくさん発行されています。

新潮文庫、角川文庫の一部をピックアップしています。

もちろん、これ以外にもたくさんあります。
入手可能なものを並べてみました。

新潮文庫

ボッコちゃん

ようこそ地球さん

気まぐれ指数

ほら男爵 現代の冒険

ボンボンと悪夢

悪魔のいる天国

おのぞみの結末

マイ国家

妖精配給会社

宇宙のあいさつ

午後の恐竜

白い服の男

夢魔の標的

妄想銀行

ブランコのむこうで

おせっかいな神々

にぎやかな部屋

ひとにぎりの未来

だれかさんの悪夢

未来いそっぷ

さまざまな迷路

かぼちゃの馬車

できそこない博物館

エヌ氏の遊園地

盗賊会社

ノックの音が

夜のかくれんぼ

おみそれ社会

たくさんのタブー

なりそこない王子

どこかの事件

安全のカード

ご依頼の件

ありふれた手法

凶夢など30

どんぐり民話館

これからの出来事

つねならぬ話

天国からの道

ふしぎな夢

つぎはぎプラネット

進化した猿たち

角川文庫

きまぐれロボット

ちぐはぐな部品

宇宙の声

地球から来た男

おかしな先祖

ごたごた気流

竹取物語

声の網

城のなかの人

きまぐれ星のメモ

きまぐれ博物誌

きまぐれ体験紀行

きまぐれエトセトラ

あれこれ好奇心

きまぐれ学問所