内容(ドラマに準拠します)
幾多ノ世界大戦ノ末ニ平和ヲ実現シタ近未来
戦争ハナカッタ事ニサレ
人々ハ戦争ニツイテ調ベル事
戦争ノ「セ」ノ一言サエ
口ニ出スコトヲ禁ジラレテイタ
白い服の男たちは平和を永続的なモノにするために組織された「特殊警察」です。
そこへ新人がやってきたところからこのお話は始まります。
文字通り白い服を着て戦争の「セ」という言葉を発したり、戦争の事を調べようとする行為までも処罰しています。
処罰とは何と公開処刑です。
普通の公園のようなところで処刑されます。
若い男性が容疑者として捕らわれます。
戦争の新聞を持っていたのです。
「戦争を知る事すらいけない」と深く信じている白い服の男たちはそんな彼も罰します。
大事な平和を守るために。
そして、若い男を追い詰めるために彼の母親をさらに尋問するというのです。
若い男を殴り続ける白い男…。
若い男と彼の母親はどうなったかは描かれません。
図書館の検閲もものすごいものです。
歴史書や哲学書に至るまで「戦争」に関するがどんどん省かれ、破られ、焼かれていきます。
「セ」を知る事すらいけない事なのです。
むしろ、歴史を修正する事に意義がある世界です。
ここで半世紀前の大戦という言われ方をします。
大戦とは第二次世界大戦の事だと思われるので1945年の50年後の1995年ごろという設定だと思われます。
(ただし、この話が刊行されたのは1968年です)
次の容疑者を捕らえに行くために新人と白い服の男は歩き出します。
森の中で小さな子供たちが「セ」ごっこをしているところへ向かうのです。
白い服の男に新人は逆らわずに後に続いて歩いていきます。
そこで銃声が3発轟きました。
ここで物語は終わります。
オチ
これはどうでしょう?
最後の銃声は誰が撃ったのか?
誰が撃たれたのかは分かりません。
これはもしかして、新人が白い男である上司を撃ったのではないかという余韻もあるように思います。
銃声は3発なので「セ」ごっこをしている子供たちだったかもしれません。
でも、子供の事なら監視から様子を見るという描写が最初にあるのでやはり、撃たれたのは白い男であり、もしかしたら新人は自分を撃ったのかもしれません。
「戦争」をなかった事にする事について平和は訪れるのでしょうか?
なかった事にするのではなくて、あんな悲劇を繰り返さないという事が大事だと思います。
星新一の不思議な不思議な短編ドラマ(2022年)感想一覧
*放送日時はBSで放送された初回放送日です。『○○○』は収録されている原作巻です。
第1話 ボッコちゃん (2022年4月5日放送) 『ボッコちゃん』
第2話 生活維持省 (2022年4月12日放送)『ボッコちゃん』
第3話 不眠症 (2022年4月19日放送)『ボッコちゃん』
第4話 地球から来た男 (2022年4月26日放送) 『地球から来た男』
第5話・第6話 善良な市民同盟 前・後編 (2022年5月3日・10日放送) 『なりそこない王子』
第7話 逃走の道 (2022年5月17日放送) – 『エヌ氏の遊園地』
第8話 見失った表情 (2022年5月24日放送) 『ようこそ地球さん』
第9話 薄暗い星で (2022年5月31日放送)『悪魔のいる天国』
第10話 白い服の男 (2022年6月7日放送)『白い服の男』
第11話 ものぐさ太郎 (2022年6月14日放送) 『なりそこない王子』
第12話 窓 (2022年6月21日放送) 『宇宙のあいさつ』
第13話 凍った時間 (2022年6月28日放送) 『ちぐはぐな部品』
第14話 夜と酒と (2022年7月5日放送)『凶夢など30』
第15話 ずれ (2022年7月12日放送) 『ようこそ地球さん』
第16話 もてなし (2022年7月19日放送) 『地球から来た男』
第17話 鍵 (2022年7月26日放送) 『妄想銀行』
第18話 買収に応じます (2022年8月2日放送) 『さまざまな迷路』
第19話・第20話 処刑 前・後編 (2022年8月9日・16日放送) 『ようこそ地球さん』
もちろん、全話収録
ドラマの原作巻リスト
ドラマの原作になったタイトルを抜き出してみました。
この機会に読んでみた人は是非参考になさってください。
今回のドラマ化だけで12冊の本が底本になっています。
それぞれのお話は読み切りのショートショートなのでお好きな順序でお読みください。
『ボッコちゃん』
第1話 ボッコちゃん 第2話 生活維持省 第3話 不眠症
『地球から来た男』
第4話 地球から来た男 第16話 もてなし
『なりそこない王子』
第5話・第6話 善良な市民同盟 前・後編 第11話 ものぐさ太郎
『エヌ氏の遊園地』
第7話 逃走の道
『ようこそ地球さん』
第8話 見失った表情 第15話 ずれ 第19話・第20話 処刑 前・後編
『悪魔のいる天国』
第9話 薄暗い星で
『白い服の男』
第10話 白い服の男
『宇宙のあいさつ』
第12話 窓
『ちぐはぐな部品』
第13話 凍った時間
『凶夢など30』
第14話 夜と酒と
『妄想銀行』
第17話 鍵
『さまざまな迷路』
第18話 買収に応じます
著作リスト
星新一の著作はとても多く今もたくさん発行されています。
新潮文庫、角川文庫の一部をピックアップしています。
もちろん、これ以外にもたくさんあります。
入手可能なものを並べてみました。