100分de名著「ニコマコス倫理学」アリストテレス

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アリストテレス『ニコマコス倫理学』 2023年10月 (100分 de 名著) 山本芳久

第1回 「倫理学とは何か」

アリストテレス“ニコマコス倫理学” (1)「倫理学とは何か」 - 100分de名著
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アリストテレス“ニコマコス倫理学” (1)「倫理学とは何か」

初回放送日: 2022年5月2日

新生活がスタートしてまもない5月。職場や学校に適応できず悩む人が多いこの時期に「ニコマコス倫理学」を通して「生き方」「幸福のあり方」を哲学的に考察する。 「ニコマコス倫理学」は、哲学史上初めて「倫理学」を体系化した書物。「倫理学」と訳されているギリシア語は、語源的には「人柄に関わる事柄」という意味だ。どのような人柄を形成すれば幸福な人生、充実した人生を送ることができるのかを考察するのが彼の倫理学なのである。第一回は、「倫理学」とはどのような学問なのか、「倫理学」を学ぶことにはどのような意味があるのかを、アリストテレスの論に基づいて考察する。

https://www.nhk.jp/p/meicho/ts/XZGWLG117Y/episode/te/3PNWW1778P/
グレース
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片難しい説教じみた倫理が繰り広げられるかと思えば、何と「実践的」な第1回でした。

ニコマコス倫理学分厚い本ですが、1冊にまとめられているのがこの本です。
東大生の教本としても使っているというこの本です。
倫理学の中では比較的易しいそうです。
私も意外や意外、実践的な倫理学で驚きました。
皆さんもご一緒に読んでみませんか?

2400年前の倫理学

万学の祖、アリストテレスにより書き記された倫理学。
「幸せ」とは?が大きなテーマ。

指南役の先生が考えるこの本

論述自体が比較的、平易
幸福とは何か?←誰もが若い時から一度は関心を持つ事を論じている

2000年以上読み継がれている本だから、この先もきっと読み継がれる本

代表的な2つの倫理学

義務論的倫理学:カントに代表される「~すべき」(義務)「~してはならない」(禁止)に基づいた倫理学
幸福論的倫理学:アリストテレスの倫理学。どうすれば人間は幸福になる事が出来るのかという観点から人間の事を体系的に考えていく→今回はこちら

グレース
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幸福になるかどうか、またその方法がこのアリストテレスの「ニコマコス倫理学」です。

最終的な目標が「幸福」?

目的の連鎖
良い大学に行って、専門知識を得て良い社会人になって幸福になる事は「最高善」となりえます。
「幸福」になる事が目的なので「幸福になって何をするのですか?」という問いはそもそも愚問であると言う事なのです。
「幸福」は目的だから

お金を稼ぐ、社長になると言う事もそれが「幸せ」になると言う事であれば大きな意味がある。

但し、「お金を稼いでどうするんですか?」や「社長になってどうするんですか?」という問いは可能。
「お金を稼ぐ」や「社長になる」は手段だから

「幸福」は目的。「地位や財力」は手段

アリストテレスの学問分類
理論的学 目的:知識
  『自然学』『形而上学』数学
実践的学 目的:行為
  『倫理学』『政治学』
制作的学 目的:制作物
  『詩学』『弁論術』

大抵の場合とレアケース

レアケース

富あるものが泥棒に狙われ殺される
勇気ある者が戦争に負け戦でも前進し、相手の矢に討たれる

勇気や富がある故に命を失ったケースもある。
だが、多くの場合は勇気や富はあった方がいい。

微妙な揺らぎが大事!

若者の年齢とは?

ある一定の経験がある年齢で無いと理解されないというアリストテレス。
この「年齢が何歳か?」という質問が毎年、学生からあるという先生。
これは「精神的な年齢」で「具体的な年齢」はないというのです。
数学的な線引きがあるわけではありません。

若いうちに読むべき理由

人間形成において人柄は、ある方向に形成し始めるとどんどん加速度的にそっちに行ってしまう。
まだ若い柔軟的な思考のうちにこの本を読んで何かを学んで少しでも幸福になりやすいようになることに意義がある。

楔を打ち込まれる

若い頃に楔を打ち込まれて一回一回の行為が重要です。
この言葉を知っているだけ、心に刻み込まれるだけでも全然違ってくるのです。
第1回はここで終わります。

グレース
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難しい哲学的な話で終わるかと思えば、実践的な倫理学でした。
マインド面できれいごとを言うのではなくて、社長になるのもお金持ちになるのも「幸福になりうる手段」であるというのが印象的でした。
つい、地位や財力を持って破滅した人のケースが取り上げられると注目を得てしまいますが、それがレアケースである事をアリストテレスが2000年以上前から断言していたのも面白いなと思いました。

つい、レアケースを見てそれが感覚が引っ張られてしまいますが、多くの幸せの過程には手段として地位や財力も必要です。

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第2回 「幸福とは何か」

アリストテレス“ニコマコス倫理学” (2)「幸福とは何か」 - 100分de名著
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アリストテレス“ニコマコス倫理学” (2)「幸福とは何か」
初回放送日: 2022年5月9日

アリストテレスの倫理学は「幸福」という古今東西の誰もが深く願うテーマを軸に展開している。だからこそ二千数百年の時を超えて現代においても深く影響を与え続けている。

「幸福になりたい」という願望は誰もが抱くものだが実際に「幸福」になるのは容易なことではない。真に幸福になるための地道で手堅い道筋を示しているのが『ニコマコス倫理学』なのだ。第二回は、「義務」や「禁止」といった概念を軸にした堅苦しい倫理学ではなく、幸福な人生の実現へと読者を導いてくれる実践的な指南の書としてこの本を読み解き「社会的生活」と「観想的生活」という幸福の二類型について明らかにしていく。

https://www.nhk.jp/p/meicho/ts/XZGWLG117Y/episode/te/2J1KJ612XY/

「幸福」とは何か?

グレース
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では、「幸福」とは何でしょう?
難題に取り組んでいきます。

* 幸福とは「善」を目指す?
* じゃあ、「善」って何でしょう?

3つの善

道徳的善…「困っている人を助ける」など道徳的によいもの
有用的善…「お金」など役に立つもの
快楽的善…「楽しい」など快楽を与えてくれるもの

日本語で考えても「よい」という言葉を使う時には道徳的な事である事は少ない。
むしろ、「お金」や「楽しい」ことである事の方が多い。
価値あるもの、肯定的に評価できるもの→「よい」

この時に「善」というものが「善い」でも「良い」でもなく平仮名で「よい」とされる事にまた奥深さを感じます。

人としての幸福とは?

お金持ちは「名誉」大衆は「快楽」や「富」が幸福。
同じ人でも病気になれば「健康」が幸福だと思い、
貧困に陥れば「富」が幸福だと思うのです。

人と動物の「差」?

動物は今、生きていくための食欲さえ満たされれば「幸福」
人間は今だけでなく先の事も考え、理性」を含めるところが決定的なさ「差」である。

3つの「幸福な生活」

3つの幸福

快楽的生活
社会的生活
観想的生活

快楽的生活…「快楽」即ち「幸福」
安定的に幸福に導くものではない。

社会的生活…社会の中でしかるべき役割を当たすことで自己実現していく。
(これが一番現実的な幸福)

観想的生活…この世界のありさまをありのままに観る。心理を認識する事が人間を幸福にする。
哲学者の生活ともいえる。

グレース
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哲学者と言えば、急に難しい話になるが一般人でも美術館に行って美術に触れるとか旅行に行って新しい景色に触れるとかででも観想的生活のイメージがつかみやすくなる。

「徳」が必要?

幸せになるためには「徳」が必要です。
それでは「徳」とは何でしょう?

グレース
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日本の徳とはちょっと違います

徳とは?

アレテー(ギリシャ語)
「徳」と訳される事もあるが「卓越性」「力量」と訳される事もある
(今回の「徳」とはむしろ、後者の「卓越性」「力量」であると考えられる)

グレース
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その能力を最大限に使えると言う事がこの場合の「徳」であると考えると分かりやすいかと思います。

2つの徳

思考の徳(知的徳)…教示で身につく
性格の徳(倫理的徳)…習慣で身につく

グレース
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第2回の締めくくりに「節制」をして「幸福」をつかんだ食いしん坊のA子さんが紹介されます。
「食いしん坊」を「節制」する事で「試験合格」「昇進」「報酬アップ」とかなりの「幸福」をゲットしています。

「節制」する事で試験と昇進と報酬を得たパターンが放送中に紹介されます。
(クリックで拡大されます。分かりやすい例だったのでどうぞ)

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第3回 「“徳”と“悪徳”」

アリストテレス“ニコマコス倫理学” (3)「“徳”と“悪徳”」 - 100分de名著
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アリストテレス“ニコマコス倫理学” (3)「“徳”と“悪徳”」
初回放送日: 2022年5月16日

アリストテレスの説く「幸福」は、単なる「幸運」とは大きく異なる。高額の宝くじに当選した人の中にも、堅実な人生の軌道から逸れ「不幸」な人生を送ってしまう人もいる。

「幸福」になるためには何が必要なのか?外的な幸運を真に生かすための内的な力が必要だという。その力のことをアリストテレスは「徳(アレテー)」と呼び、それが一定の行動を何度も繰り返し習慣化することで「性格」として身についていくという。第三回は、勇気、節制、正義、賢慮といった現代でもそのまま活用することができるさまざまな「徳」と、それに対立する「悪徳」を分類しつつ、「徳」を身につける方途を探っていく。

https://www.nhk.jp/p/meicho/ts/XZGWLG117Y/episode/te/7Y3X977ML6/

差し入れされたケーキ。
甘いものを禁止されている時に我慢出来たら「徳」が高まる?

「徳」の定義

日本で言う「徳」とは違い、「卓越性」「力量」です。
いつも使う「徳」ではないので少し注意が必要です。

「徳」の最初のお手本

両親だと先生は断言します。
人生の最初に出会うのは「両親」ここで「徳」も「悪徳」も影響を受ける。

グレース
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物心がついてから自分で判断するのではなくて、そもそもの素地は生まれた環境で決まってしまうという恐ろしさです。

悪徳は修正が難しい

一旦、習慣や考え方が身に付いた後で軌道修正はとても難しいとアリストテレスも言います。
生まれた環境下で決まってしまう部分が大きいとなるとこれは辛いですね。
個人個人の学習だと言う事になるのです。

「徳」を身に付けるのは難しい。

例えば、ダイエットも継続が難しい。
ウォーキングをして成果が出たら嬉しくなる。
でも、それで満足をしてしまったら怠惰になり、運動をしなくなる。
折角、一時的には成功したのに元に戻ってしまうともう一度ウォーキングをしようという行動を起こすのはとてもしんどいものなのです。

グレース
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またウォーキングをして習慣が出来たらダイエットは成功しています。
ダイエットが簡単でない事が「徳」を身に付けるのは簡単ではないと言う事です。

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第4回 「“友愛”とは何か」

アリストテレス“ニコマコス倫理学” (4)「“友愛”とは何か」 - 100分de名著
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アリストテレス“ニコマコス倫理学” (4)「“友愛”とは何か」

初回放送日: 2022年5月23日

人間は「社会的動物」であり、人間と人間との深いつながりなしには、幸福な人生は考えにくい。そのような人間同士の相互的な絆のことを、アリストテレスは「友愛」と呼ぶ。 アリストテレスは、友愛を「人柄のよさに基づいた友愛」「快楽に基づいた友愛」「有用性に基づいた友愛」と三分類。「友愛は愛されることよりも愛することに本質がある」と分析する。自己愛と友愛の関係など彼の友愛論は「愛」について考察するための豊かな素材に満ちている。第四回は、最も有名な友情論と言っても過言でないアリストテレスの友愛論を紹介して、人間にとって「友情」とは何か、真の「愛」とは何かに迫っていく。

https://www.nhk.jp/p/meicho/ts/XZGWLG117Y/episode/te/183XQ3RWWX/

友愛とは?

「友愛」とは人と人とをむすびつける愛。

ギリシャ語
「友愛」=フィリア

グレース
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アリストテレスは「人と共に生きて初めて人間である」と説いています。
友愛とは何でしょう?

アリストテレスが考えるそれぞれの「友愛」

金持ちや権力者
友人と共に称賛されるべき善行に励むため

貧しい人々
友人は彼らの唯一の避難場所となる

若者たち
互いに過ちを犯さないため

老人たち
世話や生活の手助けをしてくれる人

お互いを支え合う関係を「友愛」

グレース
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但し、「友愛」とは「友達」とはちょっと違うようです。

「友愛」があれば正義は必要ない

隣人や夫婦がうまくいっている間は何も問題はない。
しかし、喧嘩してしまったり、別れてしまうと言う事になると「境界線」や「親権」など法律の介入が必要になってしまう。

グレース
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お互いがうまくいっているというのが「友愛」というわけです。

「友愛」の成立条件

1. 好意=相手に善を願う
2. 相互性
3. 気づかれていること

嫉妬を端的に表現した言葉

他者の善を悲しむ

人の成功を妬むでも羨むでもなく、その成功を素直に喜べないというのが「嫉妬」であるというのです。
この「他者の善を悲しむ」という表現は「嫉妬」を端的に表現しているのです。

グレース
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これはよく分かります。

有用性で付き合えるのが友愛?

「友愛」を築きあえるのは52リットルの塩を共に食べたくらいの経験が必要だと言います。
それは一度に52リットルの塩が必要なくらいの長い時間が必要と言う事です。

グレース
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「友愛」とは「友達」や「友人」と言う事でなく、お互いに生きていくために必要な存在と言う事に感じました。
この「友愛」というのは特に優秀な人である必要もなく、その場を和ませるとか、ちょっとした事で助け合えるという小さなことも含めてでした。
何も「友達!」「親友!」という間柄ではなくても良いというわけです。

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全部終わっての感想

実践的な学問

ニコマコス倫理学と聞いて、「難しそうだ」とか「嫌だ!」とか思っていた自分をぶん殴りたいくらいの気分になりました。
タイトルからして難しいものでしたが、意外や意外、今の私たちに刺さる素晴らしい学問でした。
もちろん、今回のかみ砕いた説明が余計に良かったのかもしれません。
ダイエットや近所付き合い、夫婦や友達にすべて適用出来るというのもおもしろかったです。

友愛とは?

「友愛」というのは私たちが思う「友達」や「友人」というわけではなくて助け合える人同士と言う事でした。
例え、友達がいなくても人は「何かしらの人との関係」がなければ生きていけないのです。
全くの自給自足でもない限り、一人で生きていくというのは考えにくいのです。

それは例えば「お店に行って何かを買う」と言う事であっても、「お店」があって「そこで働いている人がいて」などなど考えていたら、この時点で一人では生きていけないと言う事なのです。
この社会的な関係が「友愛」であると私は認識しました。

人が普通に生活するにあたっても「友愛」は必要です。
それは自分が病気になった時も病院があって、医療従事者の皆さんがいて、お世話をしていただいて成り立ちます。
これも「友愛」だと思うのです。
その病院関係者とすべて「友達」ではないからです。

社会のルールを守る事で「友愛」が成立する

「友愛」という「社会の上での助け合い」が成立するためには「社会のルール」を守る事が前提だとも感じました。

この番組の中でも「うまくいっている時は問題ない」のです。
但し、けんか別れをしてしまったり相手に敬意を持てなくなってしまったりすると「友愛」などなくなってしまいます。
そうなってしまうと今までうまくいっていた関係は崩れ落ち「法律」や「規則」などが介入されないと問題は解決されないのです。

こういった事が大きく問題化した時に「戦争」などが起こってしまうのでは?と思いました。
「戦争」というと大きな問題になってしまうように思いますが、意外と根底にあるのはこの「友愛」ではないかと思ったのです。
それは、何もすべての人と仲良くしようとか友達になろうと言う事ではなくて秩序を持って接する事が大事なのかと思いました。

グレース
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社会のルールを守りさえすれば「友愛」の中で生きていける!

重いなあと思った言葉

嫉妬を端的に表現した言葉で「他者の善を悲しむ」という言葉が非常に重たかったです。
嫉妬というのは妬み嫉みから出て来るものです。
その根幹は「他人の成功を喜べない」ことから始まります。
人が成功していてもそれを素直に称賛できない事から「嫉妬」は始まるというのです。
それが目立った成功でなくても、ちょとダイエットに成功したとかテストの点数が今回だけ良かったとかそんな小さなことでも「良かったね!」と言えない事がもう「嫉妬」は始まっているのです。
その嫉妬が憎しみになり争いに繋がってしまうのです。

助けてくれる人は必ずいる

自分が困っている時に「助けて」と言えば、ほとんどの場合が助けてもらえます。
でも、そのためには自分自身も社会のルールを守る事が必要です。
また、社会のルールから外れた事をすれば誰も助けてくれないという裏返しなのかなというのが私の最終的な結論でもありました。
助け合い精神が「友愛」なのかなと思いました。
友達の数が少ないからと嘆く事もないのです。

グレース
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辛い時や苦しい時は「助けて」と言って良いのです。
助けてくれるのは見も知らぬ人かもしれません。
社会のルールを守り、社会の一員である事が大前提です。
自分自身に振り返ると学びばかりのニコマコス倫理学でした。

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