原作もタイトルは同じ「地球から来た男」
片山若子さんの水彩画が美しい装丁です。
内容（ドラマに準拠します）
産業スパイとして捕まってしまった主人公はそこで処罰されてしまいます。
テレポーテーションが出来るという装置を使って遠くの違う星に送られるというのです。
次に気が付いたときは主人公は海の浜辺にいました。
そこにいた人に何という星かを聞くと「地球」だというのです。
主人公は「地球」という名前の違う星に来たのだと思い込み、そのままその星を歩き始めます。
ラーメン屋に行きます。注文すると食べる事が出来ます。お金が払えるかどうか分かりません。
持っていたお金を示すとラーメン屋のおかみさんは1000円札を一枚だけ受け取ります。
お金は使えます。
自分の地球そっくりなので自分の家にも戻ってみます。
自分の妻にそっくりな人が出てきます。
でも、主人公は違う星の人だと思っているので妻もそっくりな別人だと思い込んでいるのです。
精神治療も受けます。
他所の星から来たと思い込んでいる主人公は自分は孤独だと言います。
主治医の先生も誰もが孤独だというのですが、話はかみ合いません。
＊重ねて言いますが、主人公は「別の地球」だと思い込んでいます。
最後まで主人公は「別の地球」だと思い込んでストーリーは終わります。
オチは二通りあった？
主人公の主観で主人公の一人称で話は進むので明確なオチがないのがこの話の特徴です。
ですが、このお話は「主人公はテレポーテーションなどしていないのにそう思い込んでいる」という事だというのが一般的な考えで私もそう思います。
地球から来た男は同じ地球で大して離れていない場所にいただけ
今回、面白かったのはラーメン屋に出したお札がきちんと1000円札であった事です。
（夏目漱石の肖像の1000円札であるためにドラマ放送時のお札になっている事が注目点です。このお話は星新一が昭和の時代に書かれたもので、もしこの時代であれば1000円なんて高すぎるし、伊藤博文の肖像でした）
ドラマではいきなり目覚めた浜辺であった人に「地球だ」という事を教えられた時点で賢明な視聴者なら分かったと思いますが、主人公を笑えないのは一方的な思い込みや刷り込みは案外ありえない話でもないのです。
他にドラマの中でも、そもそも言葉が通じるという事も面白い話ではありませんか？
同じ地球上でも国が違えば、言葉が違うのに普通に通じます。
食事も同じものだし、家族も同じです。
本人だけが「違う」と思い込んでいるのです。
ですが、今回、この話を読み返してみて「真相は明らかではない」というオチもあるという事を知りました。
これは星新一の真骨頂ですね。
敢えて、彼は本当に「地球から来た男」であるという説もあるのです。
これは面白い見解だと思いました。
一つ目のオチ：「地球から来た」と思っていたのは主人公の思い込みで本当はそこは「地球」だった
二つ目のオチ：実は本当にそこは「地球にそっくりな別の星」だった
星新一は敢えてオチを明確にしていないのです。
地球から来た男が「地球から来た男」であったのか？
「その男の単なる思い込み」であったのか？
私は単なる思い込みであったと思うのですが、皆さんはいかが思われましたか？
星新一の不思議な不思議な短編ドラマ(2022年）感想一覧
＊放送日時はBSで放送された初回放送日です。『○○○』は収録されている原作巻です。
第1話 ボッコちゃん (2022年4月5日放送) 『ボッコちゃん』
第2話 生活維持省 (2022年4月12日放送)『ボッコちゃん』
第3話 不眠症 (2022年4月19日放送)『ボッコちゃん』
第4話 地球から来た男 (2022年4月26日放送) 『地球から来た男』
第5話・第6話 善良な市民同盟 前・後編 (2022年5月3日・10日放送) 『なりそこない王子』
第7話 逃走の道 (2022年5月17日放送) – 『エヌ氏の遊園地』
第8話 見失った表情 (2022年5月24日放送) 『ようこそ地球さん』
第9話 薄暗い星で (2022年5月31日放送)『悪魔のいる天国』
第10話 白い服の男 (2022年6月7日放送)『白い服の男』
第11話 ものぐさ太郎 (2022年6月14日放送) 『なりそこない王子』
第12話 窓 (2022年6月21日放送) 『宇宙のあいさつ』
第13話 凍った時間 (2022年6月28日放送) 『ちぐはぐな部品』
第14話 夜と酒と (2022年7月5日放送)『凶夢など30』
第15話 ずれ (2022年7月12日放送) 『ようこそ地球さん』
第16話 もてなし (2022年7月19日放送) 『地球から来た男』
第17話 鍵 (2022年7月26日放送) 『妄想銀行』
第18話 買収に応じます (2022年8月2日放送) 『さまざまな迷路』
第19話・第20話 処刑 前・後編 (2022年8月9日・16日放送) 『ようこそ地球さん』
もちろん、全話収録
ドラマの原作巻リスト
ドラマの原作になったタイトルを抜き出してみました。
この機会に読んでみた人は是非参考になさってください。
今回のドラマ化だけで12冊の本が底本になっています。
それぞれのお話は読み切りのショートショートなのでお好きな順序でお読みください。
『ボッコちゃん』
第1話 ボッコちゃん 第2話 生活維持省 第3話 不眠症
『地球から来た男』
第4話 地球から来た男 第16話 もてなし
『なりそこない王子』
第5話・第6話 善良な市民同盟 前・後編 第11話 ものぐさ太郎
『エヌ氏の遊園地』
第7話 逃走の道
『ようこそ地球さん』
第8話 見失った表情 第15話 ずれ 第19話・第20話 処刑 前・後編
『悪魔のいる天国』
第9話 薄暗い星で
『白い服の男』
第10話 白い服の男
『宇宙のあいさつ』
第12話 窓
『ちぐはぐな部品』
第13話 凍った時間
『凶夢など30』
第14話 夜と酒と
『妄想銀行』
第17話 鍵
『さまざまな迷路』
第18話 買収に応じます
著作リスト
星新一の著作はとても多く今もたくさん発行されています。
新潮文庫、角川文庫の一部をピックアップしています。
もちろん、これ以外にもたくさんあります。
入手可能なものを並べてみました。
