唇のねじれた男
シャーロック・ホームズシリーズの怪事件の一つと言って良い「唇のねじれた男」があります。
有名なシリーズなのでネタバレしても怒る人はいないと思いますが、ネタバレしないと感想や考察も書きようがないので、ネタバレの前提で読み進め下さい。
何ともややこしい話ですが、結論として「自分を殺した容疑で自分が捕まっていた」と言う事です。
面白いと思った点
すべてを知る人物が?
ホームズも警察も「この夫は死んだ」として話は進みます。
ただ、このすべての事情を知っている人間が一人いるんです。
この夫に「部屋を貸した管理人」です。
そりゃ、お金を払っているから守秘義務って言うのは最初からあります。
警察もホームズも来て、おまけに妻までやってきます。
自分が部屋を貸したその人「自分を殺した罪」で捕まってしまうかもしれないのです。
この管理人の口の堅さに言及するシーンはありませんし、原作になっても映像化してもここに触れられる事は無いように思います。
何で喋らないの?
言わないの?
言えない?
映像化した話の中でアヘン屈で部屋を貸した管理人は外国人なので「言葉が分からない」というような表現があったりもします。
でも、イギリスで部屋を貸して家賃を稼いでいるのですから、ここまでの状況を見て分からない事もないのではと私は思っています。
勿論、これらの推理も何処まであっているかは分かりません。
当時のアヘン屈
ホームズの時代のロンドンにはこういうアヘン屈が存在したのでしょうね。
この描写はグラナダTVで「シャーロック・ホームズの冒険」の「もう一つの顔」というタイトルで放送されています。
「唇のねじれた男」というタイトルから邦題は「もう一つの顔」となったのは差別的な表現を避けるためと言う事だと思われますが、ここまでのテーマでお茶を濁しても仕方がないと思うので「唇のねじれた男」で話を進めます。
このグラナダTV版の「唇のねじれた男」では冒頭でアヘン屈の不潔さやごみごみした感じが表現されます。
ここに行方不明の夫を探しに来たといっても、その妻である女性、さらに言えば裕福な家庭の女性が踏み込むとはなかなか考えられない事です。
もちろん、いなくなった夫をその妻がとても愛していて必死で手掛かりを探しに来たという見方も出来るのですが…。
とにかく私がグラナダ版を初めて見た時の感想は「女性一人で来たの?あり得ない」でした。
アヘンとは今で言う麻薬のようなものです。
イギリスで大流行をして多くの人が病んでしまって国の大問題となっていました。
ですが、このアヘンも最初から禁止されていたわけではなくて問題になってから禁止になったのです。
既に中毒になってしまった人達には闇取引で売れたと言う事です。
これが犯罪の土壌になったであろう事は想像に難くなく、ホームズの作品に落とし込まれたのは時代背景もあったのです。
登場人物のスペック
ネビル・セントクレア | アヘン屈で死亡? | 同一人物 |
ヒュー・ブーン | 浮浪者 | |
セントクレア夫人 | セントクレア氏の妻 | |
部屋を貸した管理人 | 特に名前は出てこない | 何処の国の人かや素性は明かされず |
推しの名訳
シャーロック・ホームズ・シリーズは多くの著述や翻訳がたくさんあります。
どの翻訳を読めばいいか分からない方の為に私の「推し」の翻訳を推薦しておきます。
延原謙さんです。
ホームズの翻訳を今に至る完全な形で全訳した最初の方だと思われます。
実はそれまでも、何度か翻訳が試みられているのですが、ホームズやワトソンの名前があり得ない和名であったり、完全に翻訳されているものはありませんでした。
(ありえない和名。有名な所ではホームズが小室泰六。ワトソンが和田進一)
また、延原謙訳の長所はその時代背景の言葉としてホームズがいう若干高圧的な言い回しが再現されている所です。
(ホームズは超インテリ階級なので「~したまえ!」など上から目線の表現が散見しますが、イギリス的にはこう言った表現が正確に反映されることこそが作品の時代背景を明確に表していると思います)
時代を反映した翻訳と言えます
延原謙 新潮社文庫 全10冊
延原謙さんの翻訳の新潮社文庫は全10冊になります。
他のシリーズが全9冊なのに1冊多い全10冊なのは、最初の9冊の発売時点で漏れていた作品を最後の「シャーロックホームズの叡智」で全部入れ込んだからです。
そこで新潮社文庫は全10冊となりますが、全60作品を読むことが可能です。
また時代背景と翻訳がリンクしている事もあり、ホームズの時代に即した言い回しが楽しめます。
何度も版を重ね、改訂がされているので今も読むことが可能です。
新潮社文庫からはたまにスペシャルカバーで装丁の違う本も発売される事もあるので、それを購入するのも楽しみです。
長編4冊
短編集6冊
- ボヘミアの醜聞
- 赤髪組合
- 花婿失踪事件
- ボスコム谷の惨劇
- オレンジの種五つ
- 唇の捩れた男
- 青いガーネット
- まだらの紐
- 花嫁失踪事件
- 椈屋敷
- 白銀号事件
- 黄いろい顔
- 株式仲買店員
- グロリア・スコット号
- マスグレーヴ家の儀式
- 背の曲った男
- 入院患者
- ギリシャ語通訳
- 海軍条約文書事件
- 最後の事件
- 空家の冒険
- 踊る人形
- 美しき自転車乗り
- プライオリ学校
- 黒ピーター
- 犯人は二人
- 六つのナポレオン
- 金縁の鼻眼鏡
- アベ農園
- 第二の汚点
- 高名な依頼人
- 白面の兵士
- マザリンの宝石
- 三破風館
- サセックスの吸血鬼
- 三人ガリデブ
- ソア橋
- 這う男
- ライオンのたてがみ
- 覆面の下宿人
- ウィステリア荘
- ボール箱
- 赤い輪
- ブルース・パティントン設計書
- 瀕死の探偵
- フランシス・カーファクス姫の失踪
- 悪魔の足
- 最後の挨拶
- 技師の親指
- 緑柱石の宝冠
- ライゲートの大地主
- ノーウッドの建築士
- 三人の学生
- スリー・クォーターの失踪
- ショスコム荘
- 隠居絵具屋
深町眞理子 創元社文庫 全9冊
創元社文庫版は新訳として話題になった深町眞理子さんの訳です。
新訳らしい今風の筆致になっています。
装丁の絵はホームズが最初に紙面に載ったストランド誌の有名なイラストです。
こちらも全60作品読むことが可能です。
延原版と微妙にタイトルが違うのも面白いです。
ストランド版の出版順に翻訳されています。
長編4冊
短編集5冊
- 「ボヘミアの醜聞」
- 「赤毛組合」
- 「花婿の正体」
- 「ボスコム谷の惨劇」
- 「五つのオレンジの種」
- 「くちびるのねじれた男」
- 「青い柘榴石」
- 「まだらの紐」
- 「技師の親指」
- 「独身の貴族」
- 「緑柱石の宝冠」
- 「ぶなの木屋敷の怪」*「ぶな」は木へんに無
- 「〈シルヴァー・ブレーズ〉号の失踪」
- 「黄色い顔」
- 「株式仲買店員」
- 「〈グロリア・スコット〉号の悲劇」
- 「マズグレーヴ家の儀式書」
- 「ライゲートの大地主」
- 「背の曲がった男」
- 「寄留患者」
- 「ギリシア語通訳」
- 「海軍条約事件」
- 「最後の事件」
- 「空屋(くうおく)の冒険」
- 「ノーウッドの建築業者」
- 「踊る人形」
- 「ひとりきりの自転車乗り」
- 「プライアリー・スクール」
- 「ブラック・ピーター」
- 「恐喝王ミルヴァートン」
- 「六つのナポレオン像」
- 「三人の学生」
- 「金縁の鼻眼鏡」
- 「スリークォーターの失踪」
- 「アビー荘園」
- 「第二の血痕」
- 「〈ウィステリア荘〉」
- 「ボール箱」
- 「赤い輪」
- 「ブルース=パーティントン設計書」
- 「瀕死の探偵」
- 「レイディー・フランシス・カーファクスの失踪」
- 「悪魔の足」
- 「シャーロック・ホームズ最後の挨拶 ──ホームズ物語の終章」
- 「高名の依頼人」
- 「白面の兵士」
- 「マザリンの宝石」
- 「〈三破風館〉」
- 「サセックスの吸血鬼」
- 「ガリデブが三人」
- 「ソア橋の怪事件」
- 「這う男」
- 「ライオンのたてがみ」
- 「覆面の下宿人」
- 「〈ショスコム・オールド・プレース〉」
- 「隠退した絵の具屋」
映像作品のホームズ
グラナダ版 シャーロック・ホームズの冒険(1984年~1994年)
全41話。
最もホームズのイメージに近いと言われたジェレミー・ブレットによるものです。
第1シリーズ/The Adventures of Sherlock Holmes |
第1話 ボヘミアの醜聞/A Scandal In Bohemia |
第2話 踊る人形/The Dancing Men |
第3話 海軍条約事件/The Naval Treaty |
第4話 美しき自転車乗り/The Solitary Cyclist |
第5話 まがった男/The Crooked Man |
第6話 まだらの紐/The Speckled Band |
第7話 青い紅玉/The Blue Carbuncle |
第2シリーズ/The Adventures of Sherlock Holmes |
第8話 ぶなの木屋敷の怪/The Copper Beeches |
第9話 ギリシャ語通訳/The Greek Interpreter |
第10話 ノーウッドの建築業者/The Norwood Builder |
第11話 入院患者/The Resident Patient |
第12話 赤髪連盟/The Red-Headed League |
第13話 最後の事件/The Final Problem |
第3シリーズ/The Return of Sherlock Holmes |
第14話 空き家の怪事件/The Empty House |
第15話 プライオリ・スクール/The Priory School |
第16話 第二の血痕/The Second Stain |
第17話 マスグレーブ家の儀式書/The Musgrave Ritual |
第18話 修道院屋敷/The Abbey Grange |
第19話 もう一つの顔/The Man with the Twisted Lip |
第20話 六つのナポレオン/The Six Napoleons |
第4シリーズ/The Return of Sherlock Holmes |
第21話 四人の署名/The Sign of Four(2時間スペシャル) |
第22(23)話 悪魔の足/The Devil’s Foot |
第23(22)話 銀星号事件/Silver Blaze |
第24話 ウィステリア荘/Wisteria Lodge |
第25話 ブルース・パーティントン設計書/The Bruce-Partington Plans |
第26話 バスカビル家の犬/The Hound of the Baskervilles(2時間スペシャル) |
第5シリーズ/The Casebook of Sherlock Holmes |
第27話 レディ・フランシスの失踪/The Disappearance of Lady Frances Carfax |
第28(29)話 ソア橋のなぞ/The Problem of Thor Bridge |
第29(30)話 ショスコム荘/Shoscombe Old Place |
第30(28)話 ボスコム渓谷の惨劇/The Boscombe Valley Mystery |
第31話 高名の依頼人/The Illustrious Client |
第32話 這う人/The Creeping Man |
2時間スペシャルシリーズ |
第33(34)話 犯人は二人/The Master Blackmailer |
第34(33)話 サセックスの吸血鬼/The Last Vampyre |
第35話 未婚の貴族/The Eligible Bachelor |
原作「独身の貴族(別題:『花嫁失踪事件』)」を元にした一作。 |
第6シリーズ/The Memoirs of Sherlock Holmes |
第36話 三破風館/The Three Gables |
第37話 瀕死の探偵/The Dying Detective |
第38(40)話 金縁の鼻眼鏡/The Golden Pince-Nez |
第39(38)話 赤い輪/The Red Circle |
第40(41)話 マザランの宝石/The Mazarin Stone (with The Three Garridebs) |
第41(39)話 ボール箱/The Cardboard Box |
BBC版 シャーロック(2010年~2017年)
全4シーズン+特別編(全13話)
ホームズのネタを現代版に書き直した作品。
制作者側がとことんこだわり抜いている所が随所に観られ、13話の中から元ネタを探すのが面白かったシリーズです。
ベネディクト・カンバーバッチ版のホームズは斬新な感じがしましたが、原作の設定を踏襲していたのです。
高身長でサイコパスである事が、おおむね好評でした。
シャーロック(英国配信日) | |
1 | ピンク色の研究(2010/07/25) |
・緋色の研究 | |
2 | 死を呼ぶ暗号(2010/08/01) |
・恐怖の谷 | |
・踊る人形 | |
3 | 大いなるゲーム(2010/08/08) |
・ブルースパーティントン設計書 | |
4 | ベルグレービアの醜聞(2012/01/01) |
・ボヘミアの醜聞 | |
5 | バスカヴィルの犬(2018/01/08) |
・バスカヴィル家の犬 | |
・悪魔の足 | |
6 | ライヘンバッハ・ヒーロー(2012/01/15) |
・最後の事件 | |
・犯人は二人 | |
7 | 空の霊柩車(2014/01/01) |
・空き家の冒険 | |
8 | 三の兆候(2014/01/12) |
・四つの署名 | |
9 | 最後の誓い(2014/01/12) |
・最後の挨拶 | |
・犯人は二人 | |
・唇のねじれた男 | |
10 | 忌まわしき花嫁(2016/01/01) |
・マスグレーヴ家の儀式 | |
11 | 六つのサッチャー(2017/01/01) |
・六つのナポレオン | |
12 | 臥せる探偵(201/01/18) |
・瀕死の探偵 | |
13 | 最後の問題(2017/01/15) |
・マスグレーヴ家の儀式 | |
・グロリア・スコット号 | |
・3人ガリデブ |
元ネタ探しがとても楽しかったシリーズです
名探偵ホームズ(1984年)
全26話。
日本のアニメでホームズが「犬」であるという奇抜な設定だったのですが、脚本が常に面白くて高視聴率だったシリーズです。
原作のホームズとはかなりかけ離れていた感じがするのですが、必ず元ネタがありました。
今も根強いファンが多いはその辺に理由がありそうです。
実はジブリの宮崎駿監督が手掛けた作品が6作品あります。
宮崎駿監督作品はテレビ放送もされましたが、劇場公開もされました。
宮崎駿 関連作品
第3話 小さなマーサの大事件!?
第4話 ミセス・ハドソン人質事件
第5話 青い紅玉(ルビー)
第9話 海底の財宝
第10話 ドーバー海峡の大空中戦!
第11話 ねらわれた巨大貯金箱
ジブリの宮崎駿監督による作品
ホームズ原作とは大きな改変がありますが、面白かったです。