2024年9月28日放送のNHKスペシャル
ガザ地区の攻撃で杉原千畝の「命のビザ」が非難にさらされていると言います。
どうしてなのか?
このドキュメントの感想と共に考えて行きたいと思います。
祖父はユダヤ人を救った〜ガザ攻撃と“命のビザ”〜
初回放送日:2024年9月28日
ガザの軍事衝突で増え続ける犠牲。今、第二次大戦中に日本人が下した決断の意味が問われている。ナチス・ドイツに追われた多くのユダヤ人に独断でビザを発給し、命を救った外交官・杉原千畝。「なぜ救ったのか?」といった批判が今SNSなどで相次いでいるのだ。千畝が遺した「どんな民族でも僕は助けた」という言葉。孫のまどかさんは、“助かった命”と“助からなかった命”をたどり、人道主義の意味と向き合おうとしている。
「命のビザ」って何?
命のビザって何でしょう?
第二次世界大戦の中でナチスドイツによってユダヤ人たちが迫害されていました。
その迫害から逃れるためにユダヤ人たちはリトアニアの日本領事館に日本を通過するためにビザを求めてやってきます。
この数は数千人とも言われました。
ユダヤ人たちは日本に定住する事や永住する事を希望していたわけではありません。
日本を経由してユダヤ人の迫害のない地域へ移動しようとしていました。
ですが、この通過するだけのビザの発給も日本政府は認めたわけではありません。
つまり、このビザの発給は杉原千畝の独断であったと言われます。
ただし、日本の正式な外交官の発給であるビザを持ったユダヤ人たちを日本も拒否する事は出来ず、ビザを持ったユダヤ人たちは日本を経由して迫害を逃れ、その子孫たちは今も多く生き延びています。
この時の大量のビザ発給で救われたユダヤ人は6000人。その子孫は25万人とも言われています。
- 1939年9月ナチス・ドイツとソ連がポーランドに攻撃
ユダヤ人たちがリトアニアに逃れる - 同年リトアニアも併合されそうになる
- 1940年
7月18日更に他の外国に逃れるためにリトアニアの日本領事館へユダヤ人たちが押し寄せる
(日本を通過するために日本のビザが必要だった) - 7月26日リトアニアの日本領事館の杉原千畝はこのままではユダヤ人が殺されると判断
ビザ大量発給を開始
(杉原千畝の独断だったため、領事館に住まう家族にも手伝わせていない) - 9月初め杉原千畝がビザの大量発給をしている事を日本政府は問題視
彼に帰国命令を出す
(列車が出発するギリギリまでビザを手書きで書き続けた) - 帰国後杉原千畝自身は日本政府の許可を得ずにビザを発給した事で実質的に辞職を余儀なくされている
- ユダヤ人たちビザを取得したユダヤ人たちは日本を通過
諸外国に渡航が可能になる
当時のビザは6000人分だったと言われている。
ガザ地区との命のビザ
ガザ地区では多くの犠牲者が出ています。
この攻撃をしているのがユダヤ人だから「ユダヤ人が悪い」「そのユダヤ人を救った『命のビザ』の杉原千畝も悪い」という本末転倒な話になっているというのです。
そして、具体的に杉原千畝への批判もあるという事が番組で紹介されます。
もちろん、ガザ地区で起こっている事は人道的に許される事ではありません。
こうなった以上、一日でも早くガザ地区に平和を取り戻すという事が重要なのです。
戦争を辞める事だけが解決策です。
こういう戦争が起こると「戦争責任」や「そもそも論」に論争が起きがちですが、そんな事をしている間に一人でも犠牲者を出さない事が大事です。
これ以上、戦争や争いをしない事が最も重要な事になるのです。
まさか、命のビザが間違いだったという論議が日本で展開されているとは思いもしませんでした。
すべてのユダヤ人がガザ地区を攻撃しているわけではありません。
生存者の子孫のすべてが戦争を支持しているわけでもありません。
杉原千畝さんについての映像化作品
杉原千畝さんに関しては多くの著作や映像作品がありますが、それぞれをご覧になる事を強くお勧めします。
人道的な判断をしながら、それが日本政府にとって好ましからざることだったために、帰国後は辞職を余儀なくされました。
生前は名誉が回復される事もありませんでした。
命が助かった多くのユダヤ人たちが恩人である杉原千畝を探します。
日本政府、特に外務省関係は「そんな人はいなかった」と言い続けた事も追記しておきます。
多くのユダヤ人を救った杉原千畝ですが、それでも「助けらなかった人たち」が多くいた事に思いを寄せていたのです。
映像化作品では当時の様子がとても克明に再現されていると思います。
ビザ発給までの思いやもっと一日でも早く決断していればもっと救う事が出来たのではないかと自問するシーンも。
また、発給したビザを有効化するために日本政府と対峙する事も辞さなかった様子も!
ユダヤ人たちが迫害される様を見ている杉原千畝は相当な覚悟でビザの発給をしたという事が伝わってきます。
日本に帰国後の軍部とのやり取りも迫力があります。
列車に乗り込んでからでもビザを書き続ける様子が再現化されます。
関連書籍一覧
各書籍では、大量のビザ発給を手書きでしなければならなかったために手が腫れ上がったという話や、日本政府に反している事から家族に害が及ばないように自分一人で徹底的にやった事が描かれています。
マンガで分かりやすいモノもありますので、この機会にどうぞご一読ください。
ディレクターはこの人!
このドキュメントをディレクションしたのは清水潔さんです。
日本で最高のジャーナリストの一人です。
「殺人犯はそこにいる」
「桶川ストーカー事件」など有名な著作もたくさんあります。
特に「殺人犯はそこにいる」は「文庫X」として書店員が最もおススメする本として話題をさらいました。
書店員さんからのお勧めで「とにかく読んでほしい」という意向で
タイトルを隠して推薦文だけを貼りつけるという方式で多くの書店で発売されました。
私は発売当初に読みましたが、この犯人は今をもってして捕まっていません。
清水潔さんによる事実の追求が事件の真相に辿り着きました。
この事実が公開されるまではむしろ被害者の女性に批判がありました。
現場のジャーナリストでしか知りえない話ばかりです。