新プロジェクトXでオウム真理教の地下鉄サリン事件でサリンの生成を解き明かした科捜研のチームと当時の攻防戦について放送されました。
私自身が当時、思った事と共に感想を書いていきます。
「オウムVS.科捜研 〜地下鉄サリン事件 世紀の逮捕劇〜」
初回放送日:2024年10月26日
地下鉄サリン事件とは?
サリンという人口の毒物を使った無差別殺人事件がありました。
以下、詳細です。
地下鉄サリン事件
1995年3月20日・発生
東京の地下鉄(丸ノ内線、日比谷線、千代田線)
13名が死亡、6,300人以上が負傷
サリンの入った袋を地下鉄の中で傘の先などで破裂させてまき散らす。
恐ろしいのは被害者の数です。
実はこの事件が起こったのは普通の日の普通の出勤の日の朝の出来事だったのです。
今の私たちの日常と同じです。
いつもの出勤のための地下鉄に乗ったら無差別テロに遭ったのです。
おまけに、誰かが凶器を持って騒いだわけではありません。
「何か変なにおいがするなあ」と思ったら、吸い込んだだけで死んでしまう猛毒がまかれていたのです。
そんな事が起こるだなんて、この時点で想像できた人はほとんどいなかったに違いありません。
サリンってどんな毒?
サリンは神経ガスの一種で、無色・無臭の液体または気体として存在し、非常に強力な毒性を持つ化学兵器です。
生成も簡単ではなく、専門的な知識が必要でした。
更に再現する事も簡単ではないはずでした。
つまり、これだけの人工的な猛毒を作る知識も組織的な力もこの団体にはあったという事です。
科捜研の活躍
この事件で「サリン」という物質の特定をしたのは科捜研でした。
今は、科捜研の活躍は多くの人が知るところですが、当時は日陰の存在であったと言います。
ただ、このサリンを特定できるスペシャリスト集団がいなかったら、オウムの摘発も事件解決もなかったかと思うとぞっとします。
サリンが何かという事を知るのは一般的ではありませんでした。
多くの人が「サリンって何?」と思っていた時代です。
皮肉にもこの事件で「サリン」と言う物質は世界中に知られる事になったのです。
サリン生成した技術者はむしろ優秀な人間であった?
猛毒の神経ガスであるサリンを生成するのは並大抵のこの事ではありません。
前述のように高い知識が必要でしたが、中心となったTは非常に優秀な人物です。
ざっと考えるだけで下記のような人物です。
1. 化学分野の専門知識
- Tは国立大学理学部で学んだ。
- 卒業後、農薬の化学に携わる企業に勤務した。
- 有機化学、特に毒物の合成に関する知識を深めた。
- 毒性の強い化学物質の構造や生成法について豊富な理論的知識があった。
- それを実際に実験に応用する能力があった。
2. サリン生成における実践的技術
- Tは教団の要請を受けてサリンやVXガスの生成方法を確立した。
- これらは高度な実験装置と科学的知識を要した。
- Tの実践的な技術が不可欠だった。
- サリンは扱いが難しく、生成過程で高い毒性があった。
- Tは細心の注意と緻密な実験計画を実行した。
3. 研究と開発の実行力
- Tは教団からの要求に応じて、大量のサリン生成が可能な装置や施設を整備した。
- 実験と製造のプロセスを確立した。
- 限られたリソース内で設備や材料を工夫して使用した。
- 化学反応の理論を応用して成果を上げた。
- 研究と開発に優れた実行力を発揮した。
4. 毒物生成における応用力
- Tは毒性物質の生成に幅広い知識を持っていた。
- 知識を実際に応用する能力があった。
- サリンやVXガスだけでなく、他の毒物や薬品の合成についても理解していた。
- 毒物生成の効率化にも貢献していた。
ここまで優秀な人物が犯罪集団にはまってしまったのです。
科捜研 VS サリン生成
サリンを特定した科捜研ですが、だからこそサリンの恐ろしさも良く分かっていました。
「こんなものを生成する人間が日本にいるのか?」というそれくらいの恐ろしいモノでもありました。
ですが、一番の困難はT本人の供述を取る事だったと言います。
このTに対しても科捜研側は何時間も時間をかけてサリンに対する話をしました。
少しばかりはTも応じるものの記録係が入ってくると何も話さなくなってしまいました。
科捜研側のサリンに対する知識の豊富さにTは圧倒されたのだと思われます。
この2週間後、とうとうTは供述を始めたのです。
理由は「何でも分かっている人がいるから黙っていてもしょうがない」ということでした。
それくらい、科捜研側の知識は圧倒的なモノだったのです。
犯罪者か?研究者か?
ここで犯罪を犯してしまった側と研究者として科捜研で事実をたたき出した側の差を考えたいと思います。
高度な専門的な知識を持っていた者同士。
研究者として技術者として最高レベルであったと思われます。
ただ、「出会った人」「出会った境遇」の差で彼らの道は全く逆になってしまいます。
この犯罪教団に多くの優秀な若い学生が傾倒していった悲しいプロセスを考えていきたいと思います。
1990年代バブルがはじけて若者の精神的な心の隙間に付け込んでいった。
科学、哲学、心理学を駆使し信じ込ませるように持って行った。
信者が更に信者を獲得。
こう書いていくと、今の人達なら「こんな事で?」と思うかもしれません。
ですが、相手は巧妙な詐欺師です。
そして、信じた人たちは疑っていませんから、新しい人たちを引き入れる事に対して罪悪感がまるでないのです。
むしろ、良い事をしている。
その人のためにしているという善意の上で獲得していくのです。
これが洗脳です。彼らは自分たちが正しく、選ばれた特別な人間であると本気で信じていたのです。
洗脳が未だに溶けていない人たちもいる事も追記しておきます。
最後に
この事件をリアルタイムで見てきた世代として苦い思いもたくさんあります。
当時の教団の信者はセンセーショナルにメディアに取り上げられることも多かったのです。
一般からのファンやそれに伴う入信者もありました。
こういった事が、この事件を積極的に伝えられない現実でもあるのかと思いました。
現代もカルト集団やそれに類するものに傾倒してしまう若い人たちを一人でもいなくなるように思い、この感想をあげました。
自分だけは大丈夫と思わないで!